25.授業開始2
次の日の午前中は魔法理論と外国語。このあたりはただ聞いているだけである。午後は剣術の実技、これも領地で騎士団に交じって訓練を続けてきただけに難なく付いて行ける。
むしろ他の生徒の剣の動きが遅いように感じた。たぶんこれはダンジョンでレベル上げをした結果だと思う。レベルを上げることにより動きも早くなってくる。これは一般的に言われていることだ。
薬学については、領地にポーション工場があることから、真剣に取り組んでいる。将来的はこのポーション工場をもっと大きくしたいと思っている。なにか参考になることがあればと思っている。
ノルトマンの場合、魔力量はほぼ無尽蔵である。だから薬学の時間にポーションを作ることには問題がない。いくらでも作れる。
問題はノルトマンに向けられる女子の視線である。薬学の場合、受講者は女子が多い。ノルトマンのスキルが「ダンゴムシ語理解」といっても別に害になるスキルではない。スキルが生活魔法である者も多い。それらの者と変わらないのである。
ノルトマンは一人っ子で将来領地を継ぐ事は確定である。それに、シュトラリュー辺境伯領は裕福である。嫁入り先として随分有望である。だからノルトマンに気に入られようとモーションをかけてくる女子もいる。
このようにして学院の授業が始まった。ノルトマンの場合、授業にはすんなりついていけるが、問題はほかの人の視線である。誰かに見られていると思うと、どぎまぎしてしまう。
それからベルタについても問題なく付いて行けるようである。こちらについては元奴隷ということで、嫌みを言われることもあるようだが、Cクラスともなると上級貴族といっても嫡子は少なく庶子になるとあまり強く出られないようだ。
ベルタがシュトラリュー辺境伯家の庇護下にあるというのも大きいようである。また、一緒にいた奴隷がフライスデン公爵令嬢というのも大きいようだ。彼女が最初のガイダンスの日に「敵対する者は家ごとつぶす」と言ったことはCクラスの生徒にも伝わっているそうだ。
昼食は食堂でベルタやエルザと取ることが多くなった。本当は「裏庭で誰にも見られずに、ひっそりと伯爵家の調理人が作った弁当を食べたい」と言ったのだが、エルザによって却下されてしまった。「上級貴族なのだから堂々と食堂で食事を取ればいい」と言われてしまった。
俺はAクラスでは友達は少ない。ないこともないがノルトマンはスキルを気にして自分から関わろうとはしない。またエルザは最初の挨拶が効いてクラスでは浮いた存在である。そこで昼食に友達を連れてくることはない。しかし、ベルタはそれなりにうまくやっているようで、たまに昼食に友達を連れてくることがある。連れてくる子は平民なのだが、ノルトマンはどぎまぎしてエルザの後ろに隠れてしまう。どちらが貴族か分からなくなってしまう。
授業は何とかなりそうだが、問題はクラブである。最初のガイダンスの時も担任が「積極的に参加するように」と言っていたので、何かに参加するつもりであるが、知らない人の輪に混ざるのは大の苦手である。
ダンゴムシ研究会でもあれば入ってみようと思ったがさすがにそんなクラブはなかった。学院の掲示板を見ていたら、冒険者クラブがあった。冒険者になって活動するというものである。これならノルトマンも冒険者をやっていたので参加できる。でも1人で行くのは不安だったので、ベルタとエルザを誘った。
3人で冒険者クラブの教室の扉を開けた。中にいたのは男女2人だった。
人の姿を見てノルトマンがすぐ後ろに引っ込んだので、エルザが
「私たちも冒険者クラブに入りたいのですが」
と言うと
「ようこそ冒険者クラブへ、入会を歓迎します。この用紙に名前とクラスを書いてください」
出された用紙に名前とクラスを記入していった。
すると、
「ええ、辺境伯家と公爵家」
と言って驚かれた。
「ダメなのですか」
「いや、そのような事はありません。ただ、うちのクラブは下級貴族や平民が多いので。うまくやって行けるかどうかと思って」
「それは心配ありません。私は公爵家といっても嫌われ者ですから、下級貴族や平民に何かすることはありません。それとこちらのノルトマンは極度の人見知りですから、下級貴族や平民でも自分から関わろうとはしませんから」
「そうですか、それなら入会を歓迎します。活動は休日です。平日は順番に手分けして受付をしています。今度の休日の朝に冒険者ギルドに集合です。そこで依頼を受けて得られた報酬は人数割りです。うちのクラブに下級貴族や平民が多いのは得られた報酬を生活費の足しにするためです」
こうして冒険者クラブの入会が決まった。




