24.授業開始1
入学式の日は式の後のガイダンスで終了となった。授業のカリュキラムは1週間以内に提出とのことであった。
なお、クラスのガイダンスの内容は俺の異空間に音声と映像で記憶済みである。そこで伯爵邸に帰ってからこの記録をもとに今日のことを振り返ってみた。
俺のスキルをしゃべったのは、カールと言う伯爵令息だ。しかし、これを自分から言う気はない。
また、クラスの自己紹介も映像と音声で記憶しているのでクラス全員の名前と顔も分かる。クラスには下級貴族の令息令嬢が32人いる。また平民の令息令嬢が6人いる。上級貴族は入学式で挨拶した公爵令息、名前はアルバート様1人、侯爵令息はいない。伯爵令息は俺を含め5人、公爵令嬢がエルザ1人、侯爵令嬢はいない。伯爵令嬢が5人いる。
辺境伯の子供は俺だけなので俺は貴族の階級でいえば男子ではクラスで2番目となる。女子を含めても3番目となる。そんな俺を中傷したのだからあのカールという伯爵令息はかなり向こう見ずのようだ。
授業のカリュキラムは、伯爵邸に帰って、ベルタとも相談した。出来るだけ同じ科目を習得すると試験の時に便利である。これについてはベルタも異存ないようであった。
決まった科目は次のようである。
必須科目:国語、数学、魔法理論、外国語、法律、貴族の常識、魔法実技、剣術実技
選択科目:薬学、魔法陣、領地経営、商業取引、第二外国語、乗馬
外国語はこの大陸で広く使われている帝国語を学ぶ。しかし、辺境伯家はアリルヌリア王国と接しているのでアリルヌリア語を学ぶことにした。
この履修科目を次の日提出した。
今日から授業である。まだ履修科目の提出がまだの人もいるのでしばらく午前中は必須科目、午後は実技となる。
午前中の授業は国語と数学、授業の内容は可もなく不可もなくと言ったところである。問題はクラスの視線である。席は昨日と同じ最後尾に座った。そこで目立たないようにじっと座っている。手を上げて問題に答えるようなことは絶対にしない。しかし、この授業の様子は俺の異空間に記憶しているので後でテストで出ても同じ問題なら100点である。
午後は魔法実技。これについては込める魔力によって威力が変わるようなので入試の時のような大きな魔力さえ込めなければ問題ないと思われる。これも目立たないようにしようと思って、隅っこの方に居た。
授業開始早々、魔術実技の先生が
「ノルトマン君は、入学試験の時に魔術実技で最高点を叩きだしたので、ここでその魔術の腕を披露してもらおう」
「よけいなことを言わなくていいのに」と思ったが、しぶしぶ最後尾から前に出ると、人間語で「的を貫け、氷の矢」と唱えた。すると氷の矢が出て的を貫いた。氷の矢の勢いが早かったのか、的は完全に砕け散った。
すると、これを見ていたクラスの生徒が
「おお」
と歓声を上げた。昨日俺を中傷したカールが青くなっている。何となく気が晴れたような気がした。
ここで魔法実技の先生が不思議なことを言った。
「ノルトマン君は、詠唱はしないのですか?」
「言っている意味が解りません。詠唱はしました。『的を貫け、氷の矢』と言いました」
「それだけ?」
「それだけです」
俺が?マークで首をかしげていると
「普通魔術を行使する場合は一連の詠唱文を詠唱して魔法を行使するものなのです。しかし、ノルトマン君はその詠唱文を省略しました。それなのにこの威力です。たいしたものだと思います。この詠唱文省略は誰から習ったのですか」
「私は辺境伯家の従士の先生から魔法を習いました。先生も詠唱は片言でした。そしてすぐにダンジョンに連れていかれて、そこで魔法の訓練をしました。ダンジョンでは魔物が絶えず襲ってくるので、とにかく早く魔法を行使しないと魔物にやられてしまいます。そこで、護衛に守られながら、早く強い魔法を放つ訓練をしました」
「そうなのか、すぐに実践か、さすが辺境伯家といったところか。荒っぽいと言うか、しかし、それでこれだけの魔法が行使できるようになったのだから、そのやり方もありだな」
そのあと先生は一般的な魔術の行使のやり方を教えてくれた。長々と詠唱して、やっと魔法を放った。魔法の威力はノルトマンの魔法より大きかったが、この詠唱している間に魔物に襲われたら防ぎようがない。
「わかっただろう。詠唱している間に襲われるとやられてしまう。誰か守る人がいればいいが、そうでない場合はこんなに長々と詠唱などしていられない」
「これからは、ここの授業では詠唱省略を基本とする。いいな。みんなそのつもりで頑張ってくれ」
こうして、その日の魔術実技の授業は終わった。すごく目立ってしまって、ノルトマンは後は縮こまっていた。




