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ダンゴムシの記憶を持つ男の物語  作者: @000ーooo


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22/26

22.入学式

 今日は入学式である。朝、ノルトマンはベルタと一緒に伯爵家の馬車に乗った。クララが寂しそうな顔をして見送っている。


 何となく可哀そうになるが、貴族でもすべて受かるわけではないのである。平民でしかも元貧乏農家で口減らしに売られた奴隷が学院の試験に落ちるのはむしろ当たり前である。


 伯爵邸のメイドや執事でも学院を卒業した者は少ない。そんな中、試験に通ったベルタがむしろ異質なのである。ベルタの場合学院を卒業したら伯爵邸で雇用するので伯爵領外には出ないこと。これが解放奴隷にする条件であった。


 これについては、ベルタは快く了承した。そして将来学院を卒業して伯爵領に戻ったら、自分を奴隷に売った商家の後妻に仕返しをするのだと言っていた。これについてはノルトマンはあまり問題を起こすなと注意した。


 入学式は講堂で開かれる。講堂へ行くと受付があった。そこで新入生だと伝えると並ぶ場所を教えられた。並ぶ順番はクラスごと、順番は受験番号順とのことなので、Aクラスのところに行った。ベルタはCクラスのところに行った。


 Aクラスのところに居ると話しかけられた。貴族に知り合いなどいないなはずのにと思ったら、エルザだった。エルザもAクラスとのことであった。


 随分変わっていた。背も高くなったし、一番変わっているのは綺麗になったことだった。ベルタはCクラス、クララは受からなかったと伝えた。本当はあれからどうしていたか知りたかったが、話はクラスに行ってからとなった。


 しばらくすると

「新入生入場」

という声がした。


 Fクラスから入場していくようでAクラスは1番後みたいだ。俺達Aクラスの番になった。講堂の中に入ると一斉に周りの視線が集まる。「ダンゴムシ語理解」のスキルのせいで人と接するのを避けてきたノルトマンとしては人の視線に慣れていない。思わず下を向いてしまう。そのまま周りを見ずに前の生徒の背中だけを見て歩いた。そして、所定の位置まで来ると、式の開始の宣言がなされた。


 しばらくすると校長の挨拶が始まった。


「皆さん入学おめでとう。この学院は王国の発展のため、強い剣士や魔法士を生み出すため、そして優秀な官吏を輩出するため設けられました。


 学院ではこの建校の精神にのっとり、貴族と平民は平等をもっとうにしています。貴族風を吹かせることなく貴族も平民も仲良く武術や勉学に勤しんでください。


 皆さんは難しい入学試験を通って来たのだから、その精神を忘れずに、入学後も剣術や魔術、勉学に勤しんで将来はこの国の一翼を担うような立派な人間になってください。


 立派な人間と言うのは何も武術や勉学が出来るだけでなく、人間的も立派な人間になってください。他者を蔑むことなく、慈愛の精神で接することが出来るような人間になってください。


 改めて皆さん入学おめでとう」


 その後、来賓あいさつ、来賓はこの国の第2王子だった。その後生徒会長の挨拶、入学生を代表して主席入学の公爵令息の話があって、式は終了した。


 式の間はあまり挨拶する人の話は聞いていなかった。しかし、校長が言った「他者を蔑むことなく、慈愛の精神で接する人間」ということが気に入った。俺みたいに劣等感を持った人間には心地よい言葉だった。


 とにかく人の視線が気になるのである。下を向いて、ボーとしている。前の生徒が動き出しので、それに続いた。そしてAクラスの教室に行った。


 ここでは席は特に決められていないようなので適当に後ろ方に座った。ノルトマンはとにかく目立つのが嫌いである。後ろの方に行くと、周りは下級貴族か平民なのかおどおどしている。すると、いきなりエルザが隣に座った。


「人目を気にしておどおどするところ、5年経っても変わらないのですね。泣き虫は卒業したのですか」

「もう泣くことは少なくなった。そう少なくなった。ゼロではない」

「まだ泣くこともあるのだ」

「仕方ないだろう。俺のスキル知っているだろう」

「知っていますよ。それで伯爵邸ではノルトマン様を泣かせて、ずいぶん怒られましたから」

「俺のスキルばらすなよ」

「ばらしませんが、もうみんな知っていると思いますよ。ついでに言うと私も昔伯爵邸にいたことも知られていると思いますよ」

「そうなのか」

「そうですよ、貴族はそんな話に飢えていますから、噂の広がるのは早いですよ」

「どうしてエルザはそう強いのだ」

「わかりません。性格だと思いますよ」


 エルザが公爵令嬢というのは、みんな知っているようで、俺たちの周りの生徒がおどおどしている。

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