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ダンゴムシの記憶を持つ男の物語  作者: @000ーooo


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21.入学試験

 学院の入学試験は12歳の年の夏に行われる。ノルトマンとクララとベルタは試験を受けるために王都に出てきた。そして今、王都の辺境伯邸にいる。クララとベルタには試験に通ったら解放奴隷にしてやると言ってある。これは母の了解も取った。


 学院の試験は座学が国語、数学、魔法理論、外国語、地理、歴史、貴族の常識、法律の8科目、実技が魔法か剣術のどちらかの選択である。なお、実技で高得点を出した人は優遇される。


 また王族、公爵家、侯爵家、伯爵家の人間は試験の結果によらず入学できる。しかし、点数が低いと多額の寄付金を求められる。ノルトマンは伯爵家の人間なので金さえ積めば合格できるが、そんな恥ずかしいことをする気はない。実力で合格をもぎ取るつもりである。


 また、平民の子弟も毎年一定数合格する。しかし、平民で合格するのは至難の業である。先ず何年も受験勉強をさせてくれるような家となると、商人など家が裕福でなければならない。そういう意味では奴隷として受験させてもらえるクララとベルタは異質といえる。


 学院で学ぶ期間は3年間。学院はこの国の最高学府、卒業後はかなりのエリートとなる。王宮での文官としての採用や騎士団の採用においても優遇される。


 また、女子の場合、学院卒業は優秀さのシンボルであり、将来優秀な子供を望む貴族との良縁も期待できる。


 そうやって最後のあがきをして王都の辺境伯邸で数日過ごしたら、今日はもう受験の日である。朝、伯爵邸の執事とメイドそれに家庭教師の先生に見送られて伯爵邸を馬車で出た。


 試験は2日間にわたって行われる。1日目は午前中が国語、数学、魔法理論、外国語の4教科、午後が地理と歴史、貴族の常識、法律の4教科である。2日目は魔法か剣術の実技である。なお、2日目の実技で高得点を出した人は優遇されるとのこと。


 1日目の午前中の国語、数学、外国語は微妙なところである。たぶん合格点そんな所である。魔法理論は山が当たった。たぶんこれまで最高の出来だと思う。これには山をかけてくれた先生に感謝である。


 午後の地理と歴史は暗記物なので完璧だった。貴族の常識もそつなくこなした。法律は微妙、「たぶんあっていると思うけど」という感じ。


 試験の会場では、エルザに会うかと思ったが、さすがに5年もたつと容姿も違っているようで分からなかった。それにノルトマンの場合、スキル「ダンゴムシ語理解」を気にしているので、他の受験生と顔を合わせないようにしている。下を向いて目が合わないようにしているので余計である。


 1日目が終わって馬車に乗って、しばらくすると、クララとベルタも試験が終わって馬車に乗ってきた。試験は平民会場と貴族会場で場所が違う。馬車は当然貴族会場の近くに止めたので、試験が終わる時間が同じでも、クララとベルタが馬車まで戻るには時間がかかる。


 クララとベルタに試験結果を聞くと、クララは難しかったと言っている。ベルタは数学は完璧だが、国語、外国語は微妙なところとのこと。


 魔法理論は俺と同様、山が当たったと喜んでいる。これには山をかけてくれた先生に感謝である。クララはこれも難しかったと言っている。山は当たったはずなのによく覚えていないのか試験で舞い上がってしまったのかよくわからない。


 午後の地理と歴史と法律はクララは難しかったとのことである。ベルタは大体できたとのことである。貴族の常識は2人とも全然ダメとのことであった。


 こうやって学院受験の1日目は終わった。そのまま3人は伯爵邸に戻った。


 2日目の魔法と剣術の実技についてはノルトマンは魔法を選択した。他の受験生を見ていると的に当たって終わりのようである。しかし、ここで高得点を出せば優遇される。それが頭にあったのでかなり多めに魔力を込めた。詠唱はもちろん人間の言葉である。ダンゴムシ語など用いれば的どころか会場ごと吹き飛ぶ。


 ノルトマンが詠唱して氷魔法を放つと氷の矢が的に突き刺さって、そのまま的を破壊した。これにはノルトマンだけでなく周りの受験生や教官も驚いた。たぶん今回の受験生の中では魔術試験は最高点だと思われた。


 昨日と同様、2日目が終わって馬車に乗って、しばらくすると、クララとベルタも試験が終わって馬車に乗ってきた。結果を聞くと、クララは今日も神妙な顔をしている。クララとは対照的にベルタはうれしさいっぱいである。魔法がうまくいったと言っている。火魔法を的に当てることが出来たと言っている。


 フロデント王国の国民なら試験に合格すれば誰でも入学でき、外国人は許可制となっていることになっているが、学費が高いので、入学するのは王族、貴族、それに裕福な平民である。


 それに試験に合格しても、その後の審査で犯罪歴や素行不良のある者は不合格となる。これは王族や貴族の子弟が学ぶため、危険を可能な限り排除するためである。


 数日して結果が発表になった。貴族の場合通知が来るが平民は通知が来ないので3人で会場に見に行った。まず、ノルトマンの結果を見ると合格Aクラスと出ている。


 次にベルタ、これも合格している。クラスはCクラスであった。しかし、クララは合格者に名前がなかった。ベルタはうれしさ100倍であるが、クララは泣きそうな顔をしている。


 その後事務室に行って、提出書類を受け取った。そこには入学試験の成績が記載されていた。入学試験の成績はノルトマンが全体で15位、ベルタが170位であった。そしてそこには授業料免除の記載があった。


 こうして、3人の学院受験は終わった。その後学院に合格したベルタは解放奴隷として平民になった。ただし、住まいは王都の伯爵邸で引き続きノルトマンの専属メイドである。

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