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帰り道の話題

湊side


「じゃあ、また。」


千早はそう言って軽く手を振ると、一人で昇降口を出ていった。


「またね。」


伊吹も手を振り返す。


その姿が見えなくなると、陸がすぐに口を開いた。


「びっくりしたなー。」


「何が?」


「伊吹にいとこがいたこと!」


「そんなに驚く?」


伊吹が笑うと、陸は何度も頷いた。


「だって一回も聞いたことなかったし!」


「そういえばそうだね。」


玲央も納得したように笑う。


四人は校門を出て、駅へ向かって歩き始めた。


夏休み中の学校帰りは、人通りも少なく静かだった。


蝉の鳴き声だけが、青空に響いている。


「千早って昔からあんな感じなの?」


玲央が尋ねる。


「うーん……。」


伊吹は少し考える。


「昔から落ち着いてたかな。」


「へぇ。」


「私が騒いでても、千早は『また始まった』って笑って見てるタイプ。」


「想像つく。」


俺はずっと気になっていたことを聞いてみる。


「毎年会ってたの?」


「うん。」


伊吹は頷く。


「おばあちゃんの家で会うことが多かったかな。夏休みとかお正月とか。」


「じゃあ、結構仲良かったんだ。」


「そうだね。」


少し懐かしそうに笑う伊吹。


「小さい頃はよく一緒に遊んでたよ。」


その笑顔を見て、俺は小さく「そっか」とつぶやいた。


自分の知らない伊吹の思い出。


それを知っている人がいる。


当たり前のことなのに、胸の奥が少しだけ落ち着かなかった。


「そういえば!」


陸が急に声を上げる。


「千早もサッカーできるのかな?」


「どうだろう。」


俺は気になって、


「今度聞いてみようぜ!」


「湊、それまずサッカー部に勧誘したいだけでしょ。」


玲央が笑う。


「バレた?」


四人はまた笑い合った。


そんな何気ない帰り道。


それでも、俺の頭の中にはさっきから一つのことが残っていた。


――もっと、伊吹のことを知りたい。


その気持ちは、夏の終わりの風と一緒に、少しずつ大きくなっていくのだった。

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