どれがいいのかな
海へ行く約束をしてから二日。
私は朝から自分の部屋でクローゼットを開けていた。
「……どうしよう。」
ベッドの上には、水着が二着。
去年着たネイビーの水着。
そして、先日買ったばかりの淡い水色の水着。
どっちにしよう。
「うーん……。」
鏡の前で合わせてみる。
去年のでもいい。
でも、新しい方も着たい。
「決まんない……。」
その時だった。
「お姉ちゃーん!」
勢いよく部屋のドアが開く。
「……ノック。」
「ごめんごめん。」
笑いながら入ってきた妹は、ベッドの上の水着を見て目を丸くした。
「え!海!?」
「うん。」
「いいなー!」
妹は新しい水色の水着を手に取る。
「こっち可愛い!」
「そうかな?」
「絶対こっち!」
私はもう一度鏡を見る。
確かに可愛い。
でも。
「派手じゃない?」
「全然!」
妹は腕を組んで私を見る。
「……お姉ちゃんさ。」
「ん?」
「誰か意識してる?」
「え?」
思わず固まる。
「そんなに悩むなんて珍しいじゃん。」
「海だからだよ。」
「ふーん。」
その返事に、妹はにやっと笑った。
「湊お兄ちゃん?」
「なっ……!」
思わず声が裏返る。
「違う!」
「じゃあなんで顔真っ赤なの?」
「暑いだけ!」
「部屋クーラーついてるけど?」
「……。」
何も言い返せない。
妹はケラケラ笑いながら部屋を出ていこうとする。
ドアの前で立ち止まり、
「私はその水色が好き!」
と言い残して階段を駆け下りていった。
「はぁ。」
急に静かになった部屋。
私は鏡の前に立つ。
水色の水着を胸に当てる。
ふと。
頭に浮かんだのは湊だった。
『似合う。』
夏祭りの日。
浴衣姿を見て言ってくれた一言。
その言葉を思い出しただけで、胸が熱くなる。
耳が赤く染まった。
「もう……。」
私は小さく笑った。
恋って、こんなに大変なんだ。
「伊吹ー!お昼できたよー!」
一階から母の声が聞こえる。
「はーい!」
返事をして、水色の水着をそっと畳んだ。
海まで、あと二日。
私は少しだけ楽しみで、
少しだけ緊張していた。
伊吹の妹初登場です!
次作でプロフィール紹介します!




