気づいてしまった
体育祭が終わって数日。
学校はいつもの日常を取り戻していた。
だけど。
陸の日常だけは少し違っていた。
「陸ー。」
教室のドアから顔を出した伊吹が手を振る。
「帰るぞー!」
「うるさい。」
そう返しながらも立ち上がる。
昔から変わらない。
いつものやり取り。
なのに。
最近は妙に落ち着かなかった。
「玲央も行く?」
「行く。」
三人で廊下を歩く。
その途中。
前から湊がやって来た。
「悪い、待たせた。」
「遅い。」
「先生に捕まった。」
そう言って伊吹の隣に並ぶ。
自然だった。
あまりにも自然で。
まるでそれが当たり前みたいに。
「そういえばさ!」
伊吹が楽しそうに話し始める。
湊が笑う。
伊吹も笑う。
その光景を見た瞬間。
胸の奥がざわついた。
理由なんて分からない。
分かりたくもない。
だけど。
気付けば視線が二人を追っていた。
帰り道。
玲央と二人になる。
伊吹は先に帰り、
湊はサッカー部へ向かった。
夕焼けに染まる通学路。
しばらく沈黙が続く。
そして。
「なあ。」
珍しく陸から口を開いた。
「ん?」
玲央は前を向いたまま返事をする。
「最近さ。」
陸は頭をかいた。
言葉がうまく出てこない。
だけど。
このまま黙っている方が苦しかった。
「伊吹が湊と話してると。」
玲央は何も言わない。
ただ静かに聞いている。
「なんか。」
陸は苦笑した。
「面白くねぇんだよな。」
風が吹く。
沈黙。
そして。
玲央は小さく息を吐いた。
「やっと気付いたか。」
「は?」
陸が顔を上げる。
玲央は呆れたように笑った。
「お前。」
「ずっと伊吹のこと好きだっただろ。」
その瞬間。
陸の心臓が大きく鳴った。
否定しようとした。
でも。
できなかった。
体育祭の日。
笑っていた伊吹。
転びそうになった伊吹。
湊に助けられて安心していた伊吹。
全部。
覚えている。
どうでもいい相手なら。
こんなに覚えているわけがない。
「……まじか。」
思わず漏れた声。
玲央は肩をすくめた。
「遅すぎ。」
「うるせぇ。」
陸は空を見上げた。
夕焼けが滲んで見える。
認めたくなかった。
でも。
もう無理だった。
伊吹が好きだ。
幼なじみとしてじゃない。
もっと特別な存在として。
初めて認めたその気持ちは。
思っていたよりずっと重かった。
そして。
そんな二人を知らずに。
伊吹は家路を歩いていた。
これから始まる夏を。
少しだけ楽しみにしながら。
陸さん、恋してることに気づきましたね!!
玲央くんの全部を知ってるって感じがいいんです笑




