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君だけが

リレーが終わった後も、体育祭は続いていた。


グラウンドにはたくさんの歓声が響いている。


「東堂すごかったなー!」


「めっちゃ速かった!」


クラスメイトたちはまだ興奮冷めない様子だった。


その中心にいる湊は、相変わらず人気者だ。


私は少し離れた場所からその様子を見ていた。


「見すぎ。」


隣から玲央の声がした。


「見てないし。」


「見てた。」


即答だった。


「……。」


反論できない。


玲央は小さく笑った。


「次の競技、お前だろ。」


「あっ!」


完全に忘れていた。


私は慌てて集合場所へ向かう。


参加するのは借り人競争。


お題に合う人を探して一緒にゴールする競技だ。


「絶対変なお題だって。」


友達と話しながらスタート位置へ並ぶ。


そして。


ピストルの音と同時に走り出した。


グラウンドの中央に置かれた紙を取る。


そこに書かれていた文字を見て固まった。


『笑顔が素敵な人』


「なにそれ!?」


難しすぎる。


周りを見渡す。


みんな楽しそうに走り回っている。


その時だった。


「あっ――」


前を向いた瞬間。


足がもつれた。


地面が近付く。


転ぶ。


そう思った。


だけど。


「危ない!」


腕を掴まれた。


強く。


優しく。


気付けば私は誰かに支えられていた。


「大丈夫か?」


聞き慣れた声。


顔を上げる。


そこには湊がいた。


「み、湊……。」


「怪我してない?」


真っ先に聞かれたのはそれだった。


私は何度も頷く。


「だ、大丈夫。」


「よかった。」


湊は本当に安心したように笑った。


その瞬間。


胸の奥がぎゅっと締め付けられる。


どうしてだろう。


嬉しい。


すごく嬉しい。


周りから歓声が聞こえる。


「東堂優しー!」


「さすが!」


「青春だなー!」


恥ずかしい。


なのに。


嫌じゃなかった。


「ほら。」


湊が手を差し出す。


「競技中だろ?」


「あ……!」


私は慌ててその手を取った。


大きくて温かい手。


心臓がうるさい。


きっと。


体育祭だからだ。


そう思いたいのに。


その日の帰り道まで。


湊の手の温もりが忘れられなかった。


そして私はまだ知らない。


この気持ちが少しずつ恋に変わり始めていることを。

ここまで読んでくださりありがとうございます!


体育祭編はいかがでしたか?


伊吹たちの関係も少しずつ変わり始め、作者自身も書いていてとても楽しかったです。


これからさらに動き出す恋模様を、ぜひ見守っていただけたら嬉しいです。


それではまた次のお話でお会いしましょう!

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