戦略的撤退という名の敗走
タクシーを降りるや否や僕はその人混みに圧倒された。老若男女、様々な国や地域から集まった人々が門前で行列を成す様が飛び込んできた。こんな寺ぽっち一つ見るのにどれだけ並ぶんだ。君らの足は鋼鉄で出来ているのか。自分達のことは棚にあげ、心中で悪態をついた。
隣を見やると先輩もその場に直立し口を閉ざしている。虚ろな目はただじっと前方の行列を捉えたまま動かない。
足が張りつく感覚を覚える。このまま人が掃ける閉門時間までじっとしたい。
しかし、閉門するまでこの場に留まることは管理者である国が許さないだろう。突撃する勇気が君にあるか、問うように同じく隣で目を見開き黙りこくる先輩の肩をつつき前方を指差した。
先輩は白から青に変わった顔を此方に向け、力なく左右に首を振り「ちょっと無理や。人に酔ったわ。休憩しよか。」と、到着して初めて、撤退宣言という形で口を開いた。
「戦略的撤退とはこの事やぞコージ二等兵。」先輩は喫茶店の椅子に掛け、したり顔でふんぞりかえっている。
先程までのオールブルーが嘘のように、破顔しパフェを頬張る様はおよそ敗惨兵には見えない。面白そうなのでつついてみることにした。
「その戦略とやらは山本勘助が聞けば即打ち首レベルですからね。」突っ込みを入れ、「実際はおめおめと逃げた敗惨兵そのものじゃないですか。」と追撃を決めておいた。
先輩は何処吹く風で
「ほんで、再トライは何時にすんねん。」と、撤退指示を出した張本人からは絶対に出してはいけないパワーワードで180度の方向転換を図りやがった。
鯵も参ったアジすか学園といったところだ。
「アジすか。否、マジすか。」
口から零れたのは無茶苦茶な言葉遣いに汚染されたものだった。すかさず先輩が拾う。
「秋刀魚でも鯛でもなくアジや。出世して大アジや。これ食ったら行こか。」
コーヒーの底を啜りながら短い言葉で返す。
「ういっす。」
モンスターのカロリーゼロって美味しさに欠けますよね。例えるなら昭和の薄味なお菓子という感じ。半ズボンで味の薄いジュースとか飲んでる感。私はレットブル派なんですが。




