京子
翌日、昨日の良く分からない京都美人が居ないことを期待しつつ、しかしどこかでは居てほしいという希望が同居する不安定な気持ちで喫煙所へ歩みを進めた。
喫煙所まで10m。気だるげな瞳が僕の顔を刺していた。「おつかれ」以外の言葉を他人と話せるというだけで少し嬉しくなった僕は重度のコミュニケーション不足なのだろう。今度、医者に効く薬を処方してもらおう。そうしよう。
「また明日とは言うたけどホンマに来るところはオモロイなぁ、自分。」喫煙所へ到着するや否や随分なご挨拶だ。なるほど、昨日の「また」は単なる枕詞で本心ではなかったということか。京都人はげに難しき生き物だ。
「またって言うたのはお前やろ」素直に思ったことをぶつけてみた。
すると彼女は英会話教室の外国人講師さながらの疑問ポーズをとり「ナゼ、オマエ、イウ。」「ワタシ、センパイ。」と返してきた。
僕は先輩をお前呼ばわりしたことを反省し「確かに見た目と雰囲気は先輩やろうと思うとったけど、言動が子供やけん、同いやと勘違いしとったわ」と誤解を認めた。続けて「悪かことやったら謝るけ、許してくれん」と頼んだ。
彼女からは「そら、薩摩藩最後の生き残りに頼まれたら許すやろ。」との返答を得た。
「幕藩制度は江戸で終わっています。そして薩摩は鹿児島です。」
真面目な突っ込みに対し彼女は「そいつを待っていたんだよ坊主。」と笑う。やっぱり分からない。この人の発言はカメレオンも驚愕するレベルで変容する。それに付随して表情も柔軟にその形を変える。今回が二度目の会話となるが、やはり僕はこの人の事が分からない。
だから、知りたくなった。
「名前は何と言いますか。」
「京子や。」




