他愛ない日々
夏休みに入った。エアコンがガンガンに効いた部屋で煙草を吹かし嬉しさに浸る。
大学に行かなくて良い。大学生だというのにも関わらず友人一人できなかった僕が抱く感想はこれくらいだ。正直、先輩と出会って無かったらリタイアしていた可能性が高い。
大学はその名の通り大きな学問を修めに行く場所なのだろうが現実はそうではないとこの数ヶ月で痛感させられた。多分、大学とは就職するまでに社会性に乏しい人間を弾く場所なのだろう。とりあえずこの幸せをどう噛み締めるか。そんな思いを馳せていると煙草が根本で消えた。
よし、惰眠を貪ろう。そう思いベッドに体を持っていこうと一歩目を踏み出したとき電話が鳴った。
「コージ今暇やろ。デート行こ。」夏休み初日から飛ばし過ぎだろこの人は。僕は二つ返事で家を飛び出した。
待ち合わせ場所である阪急河原町駅に着くと黒いパーカーを着た先輩が居た。「遅い。激おこさまランチ三人前ビーム。」先輩は三分間しか闘えない例のマンの必殺技ポーズを決めながら言う。
「めっちゃ懐かしいですね。」そう返すと「これから見に行くねんで。」と手を伸ばしてきた先輩に行き先を告げられた。
並んで通りを歩く。
途中、先輩は立ち止まり抹茶アイスを売る店の行列を見やる。先輩は食べたいオーラ前回で目を輝かせている。そして先輩はそのままナチュラルに割り込もうとした。
「それはなしでしょ。」
いや、ボケだって分かるよ。でもボケにしては高度過ぎるだろ。
今から子供達の憧れである某マンの映画を見に行こうとする者にあるまじき行為の素振りを見せる先輩を制する。
先輩は舌を出し「行けるかなと思って。」と反省していない様子だ。僕は「また帰りに寄りましょ。」そう言い手を引いた。
並んで映画を見る。
平日の昼ということもあり客は僕ら以外誰もいない。それを良いことに戦闘シーンになると先輩は「行けぇ。死ね死ねビームだぁ。」と声を張り上げている。
死ね死ねビームてアンタ。
将来日本を背負って立つ子供達が居なくて良かった。
エンドロールが終わり明るくなる。隣の先輩は何故か目を腫らしていた。
「いやあ、感動したわ。」
感動とは何ぞや。
「感動するシーンって有りました。」
「全部やろ。」
先輩が熱い某マンマニアだと知れた一日だった。




