紫煙、満足と共に
そしてその時ソウタ史はムーブした。
「出来た」
特に深見はないここ3日間での付き合いだが少し感動した。
一人前の男になったと認めるにはまだ早いが、その根性に負けたので握手してやる。
「出来るやん。」
「コージのおかげやでほんま。」
そういって強く握られた手からはどこか懐かしい感触がした。
そういえば僕も小学生だった時期があったな。
しみじみと感傷に浸った。
先輩はポーカーファイスを貫くつもりのようで「まあ見込み通りやな。」などと呟いた。
満足げに吐き出された煙の行く末をじっと見つめる様ではばればれなわけだが。
「ほれ、先生から生徒へ賄賂や。」
と、煙草のケースを模したお菓子が宙を舞った。
嬉しそうに、しかし若干の照れを見せつつもソウタは「キョーコもありがとうな。」と言い、頬張った。
そしてなにやら先輩と内緒話をし、別れた。
「僕らもそろそろ帰りましょうか。」
そう声を掛け、歩き出す。
そうしていつもの十字路に差し掛かる時、先輩が足早に「こっちや。」と僕を先導した。
ついた先は小学校の校庭が見える道。
「あの子だけ仲間内で逆上がりが出来んかったんや。で、今日は逆上がりデビューやろ。だから見せつけに行っとんねん。」
よく目を凝らして見てみるとソウタは数人の友人たちと鉄棒の前で座って語り合っていた。
その様子を遠目で確認し満足したのか「ありがとうな。」とはっきりと僕の目をみて言った。
眩しい夕焼けがあの頃の懐かしさを加速させた。




