合格
「ほな行くで。」と鉄棒を握りしめた先輩は前回りをした。
「えっ。」ソウタは素直に一言で驚きを表した。
僕も完全に同意だ。先輩がやってみせたそれは完全に前回りだ。確かに鉄棒を使った一転だという一点に共通項を見いだすことはできるが、前転は逆上がりと全くの別物だ。例えるならサッカーとフットサル程違う。ソウタは屍と化した眼でじっと先輩を見つめている。
「センパイそれは前回りです」と口を開きかけたその時、「ええよ、ええよ、称賛は聞き飽きたから言わんでええよ。」と捲られた。後の先を制する物言いに一瞬アンジーなる架空の外人の姿が見えた気がした。
「キョーコ、はよ逆上がりしてえや。」ソウタが反撃した。
その後、先輩もソウタよろしく地面と挨拶した。先輩は体を起こし無表情な顔をソウタに向けて「辞めや辞め。こんなん出来るわけないやろハゲ。ソウタも辞めようや。」と悪魔の囁きで諦めを促す。
ソウタは即答で「嫌や。やる。」と力強く返事をした。
その覚悟を聞いてにっこりと笑った先輩が「コージ、頼むで。」と依頼してきた。
ふう、頭が痛い。
とりあえず今日は時間も遅くなったので、明日の講義終了後にまた集合という手筈となった。
「コージ、バイバイ。」ソウタの後ろ姿を見届けた。ふと、隣の先輩が居ないことに気づいた。振り返ると、先輩は鉄棒の前に立ち、こちらを見ていた。
そして、一も二もなく逆上がりしてみせた。
「出来ない筈、ではなかったみたいですね。」
「まぁ、やる気をみてみたかったから。試すような真似になったけど。でもこれでソウタはやる奴やと分かったわ。明日から頼むな。」
嘘つきだな。この人は。ようわからん。
「帰りましょうか、京子さん。」
「合格。」
恥ずかしそうな声音が夕轟に溶け込んだ。
笹でくるまれたお肉を初めて焼いて食べました。すごく美味しかったです。
たまの贅沢もしてみるものですね。
ササクレストだけにします。




