深読み
翌日の夕方、先輩は黒だろうという予想のもと白いシャツ一枚とジーパンでお気に入りの音楽を聴きながらいつも通りの道を歩く。
実習が始まったといっても、大学で顔を合わせることがなくなったということ以外は以前と変わらなかった。お互いに示しあわせた様に授業が終わると大学から少し少し外れた喫茶店に集合している。
「今日はどうでした。」そんな軽い切り口から始めた。
ずずっと美味しそうにコーヒーを啜って満足げにその口は開いた。
「基本的に楽しかったな。」
基本的、ということは例外的に楽しくなかったということだ。小学生なんて子供中の子供、人間で言うところの子供第二形態に相当する。そうした子供の代表格である生物が多数存在する空間で何があったのだ。
「何か心に残ることがあったんですか。」
先輩は寂しそうに煙草を持つ指で弧を描いた右手と鼓動するような顔でこちらに一瞥をくれた。
「まだ、敬語するん。私、敬語は嫌やな。」
それは不可能だろう。圧倒的な存在感で眠そうな目。一言で言うとハードボイルド過ぎるんだよ先輩は。
「ゆっくりやろうや。」
そう言うのが精一杯だった。そんな僕を見て納得したのか先輩は小さく「あいよ。」と返事をした。
ちなみに、基本的にという言葉には深い意味はなく、とても楽しかったらしい。
職場で嫌いな上司と顔を合わせる機会を避け続けて、仕事を任せて貰えなくなりました。損な性格だと思いますが改善する気はさらさらありません。




