すいとう
清水寺から一週間。ここの所先輩は喫煙所に姿を見せていない。
あのふざけた言い回しを耳が欲している様な気がする。そんな僕の耳事情を察したのか笑みを浮かべた先輩が近づいてきた。
タバコに火を着け、開口一番
「いやぁ、死ぬ前にキヨピー見れて良かったわ。この間はありがとさん。」
お礼を言われた。死ぬ間際とは大きく出たものだが何時もの口八丁なのだろう。軽く受け流す。
「行きたいところが有ったらまた二人で行きましょうよ。」
スムーズにかつスマートに次回の約束を取り付けにかかる。
「さてはお主、好機と見ておるな。」以外に鋭いな。
それとも先輩、あんたはただの歴史好きなのか。
頭では下らないことに思考を巡らせ口が疎かになってしまった。
無意識に口が開いた。
「まあ、センパイのことすいとうからね。」覆水盆に帰らず。パーフェクトなミステイク。九州独特の言葉が飛び出てしまった。西郷って奴は最高だな。
と、落ち着かぬ心にテイクイットイージーと言い聞かせ伏し目がちに様子を伺う。
先輩は発言の意味する所を暫く思案した様子を見せた。そしてパッと笑顔を咲かせて言った。
「ほんなら付き合おか。」
その場の流れに任せて交際がスタートした。
出納と書いてすいとうと読む。初めて読みを知ったとき違和感を覚えました。なかなかどうして日本語という奴は時に綺麗であり時に不可解である。鋭利な角を持つものもいれば丸みを帯びたものもいる。その両方を備えたものもいる。書き言葉に話し言葉。平仮名に片仮名。尊敬語や謙譲語。現代文に古文。もう、なんでもありかと。とても難しいです。




