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音の先

 静寂に包まれた遺跡の奥、戦いの音も届かないその場所に突如として轟音と土煙が上がる。

 先ほどまで何もなかった壁は大きく凹み猫のような少女が苦しそうに声を漏らす。


「はぁ……はぁ……」


 壁に叩きつけられた衝撃で一瞬意識が飛びそうになりながらもなんとか堪えたミケは呼吸を整えようとゆっくりと息を吐く。

 獣人の能力でもほとんど当たりを把握できないほどの暗闇、幸いすぐに追撃が来ることはなかったがぶつかり合いの衝撃で砕けた武器に変わるものを用意しないと次の一撃を防ぐのは厳しそうだ。


「っ……」


 無理矢理体を起こそうとするも壁にぶつかった衝撃と戦いの疲れによって足元もおぼつかないミケは座り込んでしまう。

 周りが見えないせい足音が近づいて来ているのはわかるが動こうにも動けない。

 最後の抵抗として何か武器がないか周りを手探りで探る…………足音が近づいてくる。

 地を這うように動き手を伸ばす…………足音が近づいてくる。

 何も見えない中確かに近づいてくる殺意を感じつつ必死に手を伸ばす…………もう足音はすぐ近くだ。

 両の手が何かに触れた次の瞬間、笛の音があたりに響き渡った。


「…………!」


 咄嗟に両の手に触れたものを掴み音のする方へ向かって振り払う。

 …………触れたのは淡い色を放つ鉱石と持ち主を失った剣、淡い色を放つ鉱石が音圧で吹き飛びあたりの壁に飛び散ると少し強く発光し辺りを照らし始め持ち主を失った剣は何かに抵抗するように音を逸らした。

 黒と金色の剣、主人を失い沈黙を保つその剣が微かに震える。


「っ……! はぁ……はぁ……」


 石を持っていた方の手に激痛が走り意識が鮮明になる。

 瞬時に間合いを開け痛みの走る手を無理矢理動かし剣を構える。


「はぁ……はぁ……」


 すぐに追撃が来るかと構えていたミケだが少女はミケの持つ剣を見つめたまま動きを止めた。

 少女の不自然な様子に思わず意識が剣に向けられる。


「これは……」


 ミケの声に反応して再び笛の音が鳴り始めるがミケの持つ剣はそれに抵抗するように音を切り裂き道を作る。

 剣からまるで叫ぶような擦れる音が聞こえる。


「…………!」


 危険を感じたのか続け様に笛の音を鳴らす少女だがその音色は剣によって切り裂かれる。

 少しずつ擦れるような音は大きくなり笛の音にノイズを走らせる。


「レミさん!」

「レミ!」


 沈黙を破った剣にミケの声が重なり遂にミケは笛の音を突破する。


「!!」


 笛の音を突破され動揺した少女に向かってミケが魔剣を振りかぶる。


「くっ……!」


 咄嗟に後ろに飛び避けられたものの少女の笛を弾いたミケだが慣れない剣を扱いきれずそのままの勢いで地面を強く叩いてしまう。


「痛!? 何やってるんですか! ちゃんと狙ってくださいよ!」


「無茶言わないでほしいにゃ! こっちはもう立ってるのも辛いんだにゃ!」


「こっちだって色々無茶してるんです〜! 本来レミさん以外に扱えないこの超優秀な魔剣ちゃんを無理矢理あなたようにチューニングしてるんですからね!」


「チューニング全く出来てないにゃ!」


「出来てなきゃこうして喋るのも出来ませんし音を切るなんて芸当出来ませんよ! 実力不足を私のせいにしないでくださいよね!」


 戦闘中にも関わらず言い争いをする2人にどこか懐かしさを感じた少女から殺意が薄れていく。

 しかしまだ残っている怒りの感情が反撃のために黒い獣を呼び出そうと指笛を鳴らさせる。


「まずいです! また何かして……あれ?」


「何も起きないにゃ……」


 指笛を鳴らした少女自身も予想外だったのかもう一度指笛を鳴らそうとしたがその手を黒い騎士に掴まれ止められた。


「生憎あの獣はもう来ませんよ、あの鍛冶屋の少女に敗北しましたので……」


 淡々と答える騎士は抵抗する少女の手をしっかりと掴みながら言う。


「全く……任せろとかなんとか言ってたくせに何やってるのよ……」


「あれー? ぼっちはわかりますけどそっちの人は…………後あのポンコツ悪魔の姿も見えませんが……」


「…………」


「まぁその話は後ほど……今は……」


 いつのまにか手を振り解き臨戦体制になっている少女、最早なんの武器も持っていないのだが燃え続ける怒りが炎となってその身を包み武器と化している。


「あの子をなんとかするのが先ですね」


「とんでもないですね……デザイアウェポン無しで怒りを炎として具現化させるなんて……レミさんでもこれほどには…………同情はしますがレミさんは返してもらいますよ!」


 ミケ達が合流した頃。


「…………」


 ベルはさっきまで獣の形をしていたものの前で立ち止まっていた。

 自身の持つデザイアウェポンについた黒い液体と体に付着した黒い液体が滴り落ちるのも気にする様子もなくただじっと獣の死体を見ている。

 もしそれが生きているところを見ていなかったら気づくこともできないほどに潰れ地面に黒いシミとして残ったそれをただじっと……


 獣の死体を見るその顔はどこか笑っているようにも泣いているようにも見えた。


「…………行かないと」


 周りに空いた無数の穴を避けながらベルがその場を後にする。

 混沌が去った後には何も残らない。


「……いったいなんのつもりですかねー?」


「………………」


 無言のまま銃を構えた壊田の方を夢野が不機嫌そうに目を細めながら見る。

 少女達が歩みを進める中、その男もまた前に進むため決断を下す。

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