40 本日はよく人にぶつかります
先週はサボりまして申し訳ありません!
気が付いたら40話が四千文字で、いろいろと手直ししてたら五千文字になったので、追加して六千文字にした後、二つに分けました!(ドヤ!)
このままだと41話が二つあるので、溜め書き分の話数ずらしを行います!(約二十五話分)
地味にめんどくさそうですね。
「こっちがお家な気がする! 行こう!」
あってるけど、動きが読めないなぁ……。
「きょ~のご飯はな~に~?」
「こっち向きながら歩いてたら危ないですよ~」
後ろ向きで歩き続ける葵に注意をする一花。
でも、そんな注意は虚しくも遅かったようで、速攻で葵は人にぶつかった。
「うおっ、って、痛いじゃね~かよ譲ちゃん!」
「う~わっ、ハハッ、折れてんじゃね? 慰謝料くれよ」
葵がぶつかったのは大学生ぐらいの二人組。
そんな事よりも。
そんな事よりも、ってほどじゃないかもだけど!
知ってるやつだ。
蓮と目を合わせてどうしようか無言の会議。
「すみません。すみません。葵さんも謝ってください!」
速攻で謝り出す一花。
もう、母だわ。
「ごめんなさい」
「……なあ。奥の二人、どっかで見たことある気がするんだが、お前知ってるか?」
葵とぶつかった方が言った。
言ってしまった!
口封じに伸ばそうとした手も全然間に合わず、
「あ~……? あ。あれだ。去年の雪が降った日に会ったやつだ」
と大正解を当ててしまった。
去年の十二月、怪盗として初めて動いた日に絡んできた二人組。
私たち二人とも、だいぶ印象違うと思うんですけど。
その類の才能ありますね。
「あ~めっちゃ走ったやつ?」
「そ~そ~。あ。じゃあ、こっちがれんとかいう奴だ。彼氏っていう」
はいはいはいはい!
せめて最後の一言が無ければ!
最初の台詞には届かなくても、そのまま伸ばし続けて飛びつき腕ひしぎ逆十字固めでも決めてやればよかった!
「……そうですけど、何か用ですか?」
テンパってる私を見てナイフみたいな尖った目で睨みつける蓮。
だが、かなり焦っている!
「彼氏」と言う部分を否定、というか、全部を否定してほしかった!
「……ッいや、用はねえよ」
いやな予感がしたのかよく分からないがその後、二人はすぐ去った。
「怖かっ……」
「二人とも、ラブラブなんだ~」
葵をかばって前に出た一花がホッと胸をなでおろすのをかき消すように葵が遮る。
「断じて付き合ってもラブラブでもございません!」
蓮が全力否定する。
「伊予、従姉とお出かけしたときに話しかけてきたの! 本当にただそれだけ! その時に助けてくれたのがかッ……蓮よ!!」
危ない!
もうボロを出すところだった、怪盗ワンダーって言いそうだった!
「ざ~んねん」
「葵。なぜ残念か聞いてもいい?」
「……じゃあそろそろ帰ろっか~」
「聞いてる?」
「聞いてな~い」
「聞いてるじゃ――」ドン
葵との会話に夢中で周りを見てなかったから人とぶつかる。
「ごめんなさい!」
「いえ、こちらこそ」
あ。
この子、猫又だ。
遠くの方で葵が「先行ってるよ~」っていう。
「じゃあ……」
そう言って私とすれ違いざま、何かをポケットから落とす猫の子。
「あっ、ぶっ、ないっ!」
落ちかけた鍵をギリギリでキャッチする。
え~っと、この子の名前は、猫柳さんだったかな?
「猫柳さん、どうぞ! 気を付けてくださいね」
「ありがとうございます。……なぜ私の名前を?」
あ、やらかした。
「……猫田家は長い付き合いだからね。失礼のないようにしなきゃいけないから。覚えられるものは覚えさせられるのよ」
自分のやらかしと、思えばかなりの無茶に、苦笑いが出てしまった。
「檸檬さま……、なのですか……?」
両手で自分の口を抑えつつも一発で私の正体を当ててくれる猫柳さん。
嬉しいというか嬉しくないというか。
「ええ。檸檬よ」
すると遠くで葵が「檸檬ちゃ~ん! 助けて~! また迷った~!」
「声が聞こえるから迷ってない! 他の四人はどうしたの~!?」
そんなふうにどこかにいる葵に話しかけていると
「おっ! お急ぎでしたか!? 引き留めてしまって申し訳ありません」
「そんなに急いでいるわけではないわ。それに、年もそんなに変わらないんだから敬語はやめて仲良くしましょ? ね? 琴音」
この子は猫柳琴音ちゃんだった気がする。
「檸檬さまのお声で私の名前を……?」
あらま、蓮タイプだったかな。
「琴音。呼び捨てにして」
「ハッ! 恐悦ながら呼ばせていただき……ううん、呼ばせてもらうね。れ……れみょんしゃん……ひゃ噛んだ!」
「蓮もこんなに素直ならいいのになぁ……」
「何か?」
琴音ぐらいに聞き入れが良かったらいいのに。
せめて人前でさま付けはやめてほしいよね。
病気レベルだよ。
「ううん。何でもない。また会えたらよろしくね。琴音」
「うん。また、ね。れ……もんちゃん」
名前で呼ぶのになれるのはいつになるかなな~。
でも、妖にそう呼んでもらってよかった。
一歩進展と言うかな。
これがこの先どう出るか。
『起きうることに備えるのは良いことだが、起きていないことを恐れてはならない。』
うちの考え方の一つだ。
「檸檬ちゃ~ん。本当に迷っちゃうんだからね~!」
「今行く~」
そう言って近くで待っててくれた蓮の方に駆けよる。
「今の方はお知り合いですか? 猫ではあると思いますが」
「今日初めて会った友達」
「え……? 今すぐあの女を調べに行かないと……」
腕まくりをしながら琴音を追い掛けようとする蓮。
「だめだめ。一個上の年上に話しかけられたら怖いでしょ? 私だって怖いなぁ……」
そう言って自分を抱くようにしてぶるぶるって震える。
「ウッ……ホントに思ってます? 演技じゃないですか?」
バレたか。
いや、怖いけどね。
そんなもので「怖い~!」なんて言ってたら、大人とまともに話せないって。
でも、碧がいるからこそ、私は多少なりとも、本家で感情を露にできているのかもしれない。
「……そう言って肝心な時に助けてくれないんだよね~」
「ウッ……で、でも、それは檸檬様が演技を日常的にするからですよ!」
「楽しいんだも~ん。蓮も分かるでしょ?」
「それは……そうですけどぉ……」
よし。
蓮に勝った。
「檸檬ちゃ~ん!? 本当に本当に迷うんだから~ね!?」
あら、葵を待たせすぎちゃった。
そんなこんなで楽しい昼は幕を閉じた。
♢♢♢
時間が経つものは早いもので、次の日の夜。
私たちは寮を抜け出す不良生徒だ。
『そこにいろ』
「了解」
Kからの指示で私たちはちょっと街外れの廃墟にいる。
ここにアイツが来るらしい。
「見つけたよ」
「ナイスI」
ちなみに私はRではなく、狐坂檸檬としている。
手だって冷え切ってしまったが、絶対に聞き出す。
この心は揺らがない。
Kから私に対しての指示は『指示は出さない。好きにしろ』とのこと。
「……なんだよ。話ッつうのは」
聞く。
絶対に。
「貴様に聞きたいことがある。どれも正直に答えろ」
先陣を切って行ったのはE。
いつもより、ずっとずっと、怖い。
「いいよ。話しな」
Iが私の両肩をポンと叩きゆっくりだけど、口を開いた。




