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37 辻村さんと似た人


……彼が辻村さんに似たのか辻村さんが彼に似たのか。

 それから少し雑談をしながら時間を潰していると、


「檸檬さま。そろそろテレビを付ける時間ですよね」


 と蓮から言われた。


「そうだった」


 学校を出る前に先生から言われたことの一つに「十二時にテレビをつけてください」と。

 十二時まで残り五分。


「本当だ。もうそんな時間なんですね」


 テレビのHDMIを2にしてと言われていたので2にすると校長室と思われる部屋に紙で「音声確認の音楽を流しています。音が出ていない場合は隣の部屋に移動するか一階にいる先生に聞いてください。」

 と書いてあった。


 流れている音楽は校歌。


 ちなみにHDMIとは、テレビやモニターに映像と音声を一緒に送るためのケーブルの規格のこと。

 ゲーム機やパソコン、今回みたいに校内放送の機器なんかをつなぐときに使われる。


 そうだなゲームをテレビにつなげてやりたいとき、テレビのHDMIが1、ゲームのHDMIを2にするとHDMIを変えるだけでテレビとゲームを簡単に切り替えられるってこと。


 そんな説明をしている間に外で十二時のチャイムが鳴ったと同時に画面が暗くなった。

 どうやらアニメに切り替わったようだ。


 だんだんと画面が明るくなり黒マントに黒いハット。

 そして仮面のつけた男と校長先生そっくりの二人がテレビに映っていた。


『フッフッフッ私は悪の組織のボス、ブラック! 貴様の学校の生徒の仲が悪いためここに来た!』


「え?」とほぼ全員が声をそろえてそう言った。


 ……どこかの女児向けアニメやどこかのヒーロー番組にありそうな展開……。


『そんなことない! 仲が悪いわけじゃない。お互いの事を知らないだけだ!』


 校長先生そっくりの男性は校長先生が声優をしているみたいだ。


『なら、中学生を一年一緒に過ごさせてそれを証明して見ろ!』

『なんだと!?』

『我が根城の近くで監視させてもらうよ』


 ブラックは高く飛んで行って消えて行った。


『中学生たちよ。そこは、ブラックの根城の近くだ。ブラックに仲いいところを見せるんだ。仲良くなるためにぶつかり合う事、時に慰め合う事、大いに結構! お互いを知るんだな!』


 そう言ってプツンと通信が切れたかのように画面が真っ暗になったのち、テレビ画面は校長室と校長先生に切り替わった。


『先生たちからの説明を聞いているだろうが、ブラックはいつもお前たちを監視している。テレビの隣にあるスマホを起動した。見てくれ』


 確かにテレビの横にあるスマホがついた。


『朝夕は必ず六人で食べること。自炊してもいいが、一階に食堂もあるためそこで食べることも可能。証拠として六人が映る写真を撮って、送る事……などあるが、すべて話すと長くなるので詳しくは冊子を見てくれ。本日の夕飯は必ず自炊。家具などは各自そろえてくれ。じゃあな!』


 そう言ってテレビが切れた。


 最後にテレビ番組同様撮影協力などが流れたが……うちの会社が協力してるぅ……。


 ……って言うか最初のアニメ、必要あった?

 小学生ならまだしも、中学生があのアニメ見せられてテンションはそんなに上がんない気が……。


「みんな! 仲良く頑張ろうね!」


 いた。

 メチャメチャテンション上がってるのは葵だった。


「学園長の思い付きならぬ校長の思い付きですね」


 それは某公共放送で放送されている、忍者の卵たちが騒ぐアニメだね。

 ……今日、子ども向けの番組ネタ多くない?


「夕飯自炊で家具は各自そろえる。……コレ、早めに行かないと近くのスーパーとか全部すっからかんになるんじゃない?」

「それもそうだな。早く出ね~と遠くに行くことになるぞ?」


 琉生の提案で全員が動き出すと「ピンポーン」とチャイムが鳴った。

 お客さんは先生だった。


「お邪魔します。一棟の四階担当します。新藤です」


 新藤先生は二年の数学担当の先生。

 二年生二人に後から教えてもらったけど、去年が新卒、そして新任の先生なんだって。


 優秀だなあ~。


 ……肌はちゃんと二十代っぽく若々しいんだけど、オールバッグになっている銀髪がどうも老けて見えてしまう。

 にしても、どっかで見たことある顔なんだよな~……


 服の洗剤とかの匂いはまあ好みもあるだろうし、別の種類なんだけど、本人の匂いを嗅いだことがあるというか……。


「お金の使い方の説明に来ました。今月分の生活費と初期の家具代はスマホとこちらのICカードが連動しているので、そちらを使ってください。生活費は食費、基本十万円と余分の五万円です。水道代、電気代は学校側が受け持ちますが、使いすぎないでくださいね。見た通り、家具もほとんどありません。布団が支給されているので、あとは毎月相談しながらやりくりしてください」


 そっか。

 お金も管理するのね。


 って言うか、よく実現できたな。


 一部屋に一台スマホがある上、月十五万×部屋数。

 いくらかかったんですか。


「余った場合、繰り越しになります。現金化は一階でできますが、月末にレシートを持ってきてもらうので、先生としてはあまり使わないでほしいところです。あと、使い切ってしまった場合はこちらで考えますので先生に行ってください。先生は四〇八号室。ここだと、隣に住んでるから。些細な怪我なんかも必ず来てね」


 なるほど。各階ごとに担当の先生がいるのね。


 ……二十四時間仕事じゃん。

 お疲れ様です……。


「そのスマホに地図アプリなんかもあるから使ってね。アプリは勝手に入れられないようになってるけど、娯楽に使わないように。五月から今は建設中の百均とコンビニができる。四月中に終わらなくてね」


 まあ、かなり急いで作られたから仕方ない。


「お風呂は部屋のを使ってもいいし、一階にある大浴場でも大丈夫。詳しくは全部この冊子に書いてあるから、全員で必ず読んでね。質問とかあるかな?」


 ここまでテキパキと手に持っている資料とにらめっこしながら説明してくれた先生。

 みんな特になさそうだったし、説明を聞きながら誰に似ているのかなんとなく検討がついたから、少し関係ないけど、聞くことにした。


「先生」

「はい、何です――」


 ようやくこちらを見た先生は目を見開いて驚いた表情をしていた。


「……先生?」

「――すみません。どうかしましたか?」

「先生ってきょうだい居ますか?」


 先生を呼び止めてまで聞く質問じゃないと思う。


「……どうしてです?」


 でも気になった。


「これからお隣さんになるわけですし、少しでも先生のことを知れたらな~って」

「私も同意見!」


 葵も賛成してくれる。


 もちろん、本命はこれじゃない。

 直接名前を出して聞きたいところだけど、そうにもいかない。


 この人から辻(・)村(・)さ(・)ん(・)の(・)面(・)影(・)を(・)感(・)じ(・)る(・)からだ。


 髪色、目の色、声、身長。

 すべてそっくり。


「兄と姉がいます。全員生き別れですけど」


 兄と姉?


 辻村さんが兄だとして姉がいたなんてケイから聞いたことないけど。

 まあ、新藤先生と辻村さんが兄弟だって決まったわけでもないし、ドッペルゲンガー並みの他人の空似ってこともあるだろう。


「そうですか。ありがとうございます」

「君の名前は?」

「狐月檸檬です。二年生の鈴木双子の従妹です」

「そうなんだ。鈴木さんとそっくりだね。じゃあ、先生の渡した冊子、しっかり読んでおくんだよ」

「はい。ありがとうございました」


 先生はそう言って今度こそ帰って行った。


「檸檬、新藤先生と知り合いですか?」


 一花が聞いてくる。

 まあ、その質問は来るよね~。


「初めて会う。でも、知り合いと顔がそっくり。あ。新藤先生の下の名前分かる?」

「右紅(ゆうく)先生。右に紅って書くらしいです。珍しいですよね」

「そっか。一花、陽翔、ありがとう」


 さすがに蓮も分かったんじゃない?


 この二人が他人だ、偶然だ、と片付けるのは難しい。

 辻村さんと新藤先生が何らかのつながりがあるんじゃないかって。


 でもケイからは聞いたことなかったし……言ってないだけ?

 それとも辻村さんが消した?(サラッとできる事じゃないよ☆)

翆「あ~……辻ちゃん不足……」

小「四章、辻村は出てこないもんな」

翆「そっくりのセンセだってこの章はこれっきり? うあ~っ!」

小「初のメガネキャラか?」

翆「ぶぶ~! 一花ちゃんがいま~す☆」

小「メガネカチ割っていいか?」

翆「わたくし、メガネつけてなくってよ!?」

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