35 やりすぎでは? 前川先生
「一年生のクラス発表はこちらで~す」
生徒会の人が案内をしている。
……確か副会長。
「あ。B組だ」
「クラスが見つかった人はこっち~!」
右に向かう矢印の書いてある看板を持った女性の先輩が看板を横にぶんぶん振っている。
その矢印の方向へ向かうと中庭に続いていて一年生の昇降口がある。
奥にA、B、C組。手前にD、E、F組がある六組編成で一クラス二十五名。
計百五十名の新入生だ。
A、B組は普通科ではなく運動も勉強も他四つよりレベルの高いものとなる。
学校側が判断した結果だからまあどうしようもないんだけど。
そしてA組はスポーツの方に力が入っていてB組は勉学の方に力が入っている。
中庭はベンチが二か所にあり、木が何本か植えてある。
日当たりはそこそこだが、風通しはよく真ん中には太い桜の木があり、花弁が散っている。
「何組ですか?」
中庭の景色を少し楽しんでいると、話しかけてきたのは蓮だった。
雰囲気がいつもと違いおとなしく、クールな感じ。
そう言えば学校ではなるべく正体を悟られないために真反対の性格にしてるって言ってたな。
「B組です」
「そうしたら奥です。出席番号順になっているので番号の上に靴を置いてください」
「ありがとうございます」
「入学、おめでとうございます」
そう言って蓮は深くお辞儀をする。
………さっきまでの人にはやってなかったな?
――――時々思う。
何もすごくもない、ただ親の立場だけでここにいる私に蓮や晃さんも含める人たちは、何の敬意をもってその行動に移すのだろうと。
父や叔父様、叔母様にお爺様などの歴代の当主、そのごきょうだいはそれぞれ人の為となる実績は必ず一つはあるというぐらいにいいものがあげてある。
もちろん失敗した物の記録など残すことは少ないがそれにしてもだ。
私は子どもだし、何の実績もない。
妖の人に何か政治的にやったわけでもないし、本当に家庭がそうだっただけ。
そう考えだしたのは小学校五年生ごろ。
たくさんの考えが頭を巡ってきたが、今のところ一番思うのは私に流れる血。
私には九尾の血が流れている。
私は血が薄れないために作られた子どもではない上、母は人間なので『九尾』と呼ばれる血は薄れている。
だが本当かどうかわからない。
本人に聞いたわけでもないただの仮説だ。
単純に三大首領の内の一つの当主候補だからっていう可能性もあるわけだし。
だからもう一度聞きたい。
この人たちはいったい私の何を見て私に敬意を表しているのだろうか。
ボーっと考えていたからなのかいつの間にか教室の前まで来ていた。
途中、変な違和感を感じたけどもうないし、気のせいかな?
「なあなあ! クラスと名前教えて? あと、好きなこととこの学校に来た理由もくれたらうれしいかも!」
と教室に入る前に関西弁の男の子に突然話しかけられた。
「あ……B組の狐月檸檬です……好きなこと? は……人の役に立っているとき、この学校を選んだ理由としては……いろいろあるけど、校長先生が面白そうだったからです」
「おお~、分かる~あの先生兄貴の話聞くだけでも笑えることしかないもんな! 俺はA組の芥子川祐太郎!」
元気な人だなぁ……そう思っていると、ゴッと固く鈍い音が聞こえた。
芥子川くんはスクールバックで軽め(?)に叩かれたようだ。
「いきなりやめんか! 人に名前聞く時は自分から!」
今度は関西弁の女の子。
この子が芥子川くんのこと叩いたようだ。
「ゆうぼーがごめんな? うち、ゆうぼーと同じA組の谷川 結実! よろしゅうな!」
「うん。よろしく」
この学校は三年間クラスメートが変わらない。クラス替えは高校に上がる時。
その時の外から百五十名の新入生が入ってきて、高校は三百名で共に学ぶことになる。
といっても高校まで進学するかは分からないけれど、高校は十組ある。
ちなみに中等部、高等部と言いやすいようにクラス名が中等部は英語、高等部は数となっている。
入学式を終えて、写真撮影もすました後、私たちは教室に戻ってきた。
体育館に行く前に先生の挨拶があった。
斎藤先生。
三十代後半ぐらいの男の先生で担当教科は国語。
「さて、皆さん。簡単な自己紹介をしてもらいましょうか。先生、面白いものを考えてきたんです」
面白いもの?
「自己紹介の内容は名前と出身地、好きな物。中学で頑張りたいものとあと一つ。自由に言っていただきたいです。が、ここで。前の人が言ったテーマをいってはいけないというルールを追加します」
なるほど、というか割とよくある……。
だから最初の人が好きな動物をいったら、後の人は「好きな動物」というテーマを言ってはいけないというものか。
「さて一番最初は誰になるかな?青田くんと若木さんででジャンケンでも話し合いでもいいので決めちゃってください。」
お、一番初めは緊張するけど、一番最後も嫌だなって思っちゃうね。
というわけでジャンケンの結果青田君から。
「え~青田健斗です。出身地は埼玉です。好きな物……はモフモフです。中学では……そうですね苦手教科を克服出来たらと思います。嫌いな食べ物はニガウリ(ゴーヤ)です」
「ゴーヤ、苦いよね~。先生も今だに食べられない。次石井さん」
「はい。石井真美子です。好きなものは絵を描くことで、中学では人とあんばよう話すことができるようになりたいです。好きな給食は揚げパンです。あ。出身は愛知です」
あんばよう……名古屋の方言だね。
「愛知ですか! 先生も一年住んでいたことがあります。次――――」
そんな感じで一人一人の事にコメントを付けてくれた。
「次、狐月さん」
「はい。狐月檸檬です。出身は………」
あれ? 出身ってどこなんだろう。
生まれたところは大阪で、二年住んでたけど、そのあとは神奈川で、つい最近住所が埼玉に変わったんだよな。
「そうですね。出生地と今住んでいる場所が違うと答えずらいですよね。この場合、一番長く住んでいた方か同じぐらいなら最近の方でいいのじゃないでしょうか」
「なら神奈川です。好きなことは演技で、え~苦手なタイプは時間がないのに意地悪で引き留めてくるような人です」
「なるほど……なんか、すごい『この人だっ』と言わんばかりの言い方ですね」
しまった朝のアオの事で……。
「別にこの教室でそういう事をされたわけではないので。ただ、来るときにちょっとですね」
「ならよかったです。次――」
♢♢♢
「配布物もこれで最後です。もうすぐ帰宅になりますが、最後に一点。皆さんの部屋割りを発表したいと思います」
部屋割り?
修学旅行とかあったっけ?
「部屋割り。今から説明しますね。我が校の校長が考えた寮制度なのですがひっ…………じょうに特殊でして……」
おとなしい先生だったから一瞬時が止まったのかと思った。
「学年性別関係なしに部屋割りがされます」
「!?」
「しかも同学年の同姓は部屋の中にいません」
「!?!?」
「食堂はありますが、部屋の掃除、洗濯は自分たちでする+今日から引っ越しです」
「!?!?!?」
うん。
ハハッ、校長先生やりすぎ。
いや、仲良し会~とか……じゃ収まらないか。
入学式の時ですら感じるピリピリ感。
普通の人間にはわからないと思う。
だからと言って普通の妖に分かるわけでもない。
人に見られる立場が感じ取れる周りの空気。
それがどうも恐ろしい具合にピリピリ超えてビリビリ。
お父さんと社長と飛奈さんが静かに喧嘩をしているところは見たことあったけど、それと同等ぐらいの威圧感があった。
「あ、部屋割りの仕方としては皆さんに受けてもらった入学前の各ご家庭のお手紙のアンケート。それをもとに部屋割りがしてあります。誰か一人は仲良くなれる人がいるはずです。一年同じ部屋で過ごす予定なので、仲良くしてくださいね!」
その後部屋番号が読み上げられていった。
仲が悪いというのは公表されなかった。
まあ、部屋についたらそれぞれ感じるだろうし、仲が悪いとはいえ、人の心がないわけではないと思う。
私から仲良くできるように頑張ろう。
ちなみに私は四〇八号室。
どんな人が同部屋になるかワクワクと不安を背負って今から向かう気分でいたら、明日からだそう。
今日は家に帰って、明日の朝から学校ではなく、学校から徒歩に十分、二駅先の寮に行くそうだ。
翆「中耳炎になりました、みんな大好き、翆ちゃんですっ!」
小「みんな……大好き……?」
翆「しっつれいな!」
小「失礼なのは承知だが、人気一位になれる自信があるのか?」
翆「あ~……あると言いたいけれど、無理だね」
小「だろ?」
翆「なんかムカつくッ!」
え~、中耳炎の件ですが、熱とかはなく、元気ですっ!
夏の疲れが溜まっちゃったかな、って感じです!
(と言いつつ、本日もお泊り会……)




