34 貴方は無視のできない厄介な人。
四章開幕というおめでたいことなのに作者の都合により、後書きは書きません。
「え〜うそぉ〜(´・ω・`)」となってくれるほど後書き盛り上げ隊(名前忘れた。あってる?)を好いてくれてるならうれしい限りです。
「行ってきま~す!」
今日から中学一年生。
私は伊予と同じ制服をまとって今から学校へ向かう。
入学式は午後から。
先輩たち、つまり伊予たちは午前中から学校で私たち新入生のために入学式の準備をしてくれているそうです。
「行ってらっしゃ~い。晴れ舞台、見られなくて残念だけど、お話聞かせてね」
私は蜜柑さんに見送られ足を踏み出す。
入学式に来てくれるのは蜜柑さんではなく晃さん。
何ででしょうね。
車で送ってもらうことも出来るんだけど、どちらかが必ず私を送れるわけでもないし、碧もほぼ行っていない学校はバスと電車通学。
私もここから行くならバスと電車になる。
……ここから行くなら。
「写真、撮りすぎないでね」
「はい。心掛けます」
心掛ける、かぁ。
「白いネクタイ新鮮だね」
「そうですね。あまりつけませんね」
「いいじゃん。似合ってるよ」
晃さんは素直に、ありがとうございます。偶に付けますね、と言った。
「毎日付けますね」じゃないのが伊予みたいに零か百じゃないなと思わせる。
蓮は毎日付けるって言いそう。
後で写真撮ろ。
「飛奈さまと美蘭さま(社長の奥さん、檸檬の父方の叔母)から入学祝を二択で伝言をうかがっております」
「それはそれは! お二方から!」
いや~な予感がします。
「後日私が持ってくるか今度あちらに向かった際に受け取るか」
「何着ですか?」
あの二人から送られてくるものは大抵お二人好みの服(ジャンル問わず)と決まっている。
「おそらく鈴木家の檸檬さまに用意されている収納には入らないでしょうし、そろそろご実家の方も厳しいかと思います」
「だよねぇ……」
服のために収納を借りるのも私は管理できないし、そうなると延々に増え続けることになってしまう。
SDGsって知ってますかね。
Sustainable Development Goalsです。
サステナブル、ディベロップメント ゴールズですよ。
「……今度持って来て。何とかするから」
「伝えておきます」
♢♢♢
「うわぁ……」
人気アイドルのアオがテレビスタッフと一緒に路上で道行く人に質問してるぅ……。
今はバスから電車への乗り継ぎの途中だ。
「今からで悪いけど、ここの道を通らずにいけない?」
「お気持ちはわかりますが、時間的に無理です。話しかけられたほうが遠回りをするより早いかと」
話しかけられる前提……。
なるべく気配を消して離れたところを通り抜けねば。
「インタビューいいですか?」
最ッ低だな!
分かってたよ、わかってたけどさ!
一番距離を置いたのにズカズカと近づいてきて!
「……お話だけならいいですよ! ただ、あまり時間がないので急ぎ目で!」
どこにアオファンが潜んでいるか分からない中、断ることは私は無理。
そして、晃さんが断ることも無理。
最悪。
捕まってしまった。
「わかりました。じゃあ質問です。お姉さんは学生さんですよね。何年生ですか?」
(…………)
「中学一年生になりました!」
「中学生! 中学生で公共交通機関を使って学校に行くって珍しいですね! 電車やバスを使うほど家から離れているんですか?」
(…………)
「そうです!」
「お姉さんがそこの学校を選んだ理由は?」
少しだけど、怒りがわいて来た。
「……そ~ですね~……家族と~、友達がいるからですかね!」
「ちょっとアオくん」
おそらく質問の趣旨が変わってきたのだろう。
スタッフさんから指摘が入る。
「あ、ごめんなさ~い。僕と同じ状況の子と話すのが珍しいから気になっちゃって!」
「ちゃんとしてくださいね」
は~い、とムカツク笑顔で答えている。
「お姉さん、僕の事知ってる?」
「知ってます! ライブとか、そういうのは見てないですが、テレビで」
「どこで初めて見たとか、わかりますか?」
「そぉですね……檸檬が初めて見たのはドラマかな~」
少しリアルに考えこんでから言う。
アオと関係のない檸檬としては多分?
「そうなんですね! 何のドラマかわかります?」
「そ~だな~『恋と謎と嘘』かな。母と蜜柑さんが見ていたものですが、とても面白かったんです!」
この話は二人の大学生のカップルの女性の方がある日失踪してしまって、そこから男性の方が失踪した原因を探っていると、色々な謎と彼女がついて来た嘘が出てくるというものだ。
夏休みに遊びに行っていた時に一緒に見た。
「わぁ懐かしい! もう一年前になりますか。初めての主役だったので結構覚えてますね」
「初めて! そうだったんですね!」
知っている情報をどうも~。
「ちょっと……」
晃さんのそろそろ無理だと言う顔で入って来て
「あ、そろそろ時間がないので……」
と断る。
「あ、ごめんなさい。最後に。今度『秘密の鐘が鳴るとき』という映画やるのでどうぞみてみてください!『恋と謎と鍵』が面白いって思っていただけたならはまると思います! 知ってるかな。Yuzu.と最後に演じた映画なんですよ。これ、裏話なんですが、Yuzu.が突然いなくなっちゃって元やるものとは変わってしまったんですけど……」
(……そうなんだ)
「Yuzu.ちゃん! 久しぶりに聞きました! 彼女、居なくなったの結構前なのに、役を変えないまま続けたんですね」
「お時間大丈夫ですか?」
思わず雑談に入ってしまいそうだったところをアオに止められる。
私も悪いけど、さっきまで引き留めようとしてたのはあなたですよね!
「あ、ウソ! 走らなきゃ!」
「それでは!」と言って駅の方へ向かおうとしたところでアオの口が耳元に近づいてきて
「お前の嫌いなものまでやって、そこまで隠したいわけ?」
と言った。
「……ごめんなさい。時間が無くて」
そこまで言った後、私は小さな声でこう耳打ちした。
「それに、俳優だって嘘の姿を見せてるだけ。それが嫌ならやってなかったよ?」
「――お時間いただきありがとうございます。学校、頑張ってください!」
「ありがとうございま~す!」と言って私は走って駅へ走る。
そこで聞きたくもないのに入ってくるアオの声。
「山崎さん。この後の予定何でしたっけ?」
「十時ごろまでインタビュー済ませたら近くでご飯を済ませて解散。この後予定ないし、そのまま今日は終わりかな。っていうか、あんなに近づいちゃだめだよ?」
「彼女なら問題ないですし、本人から放送NG出てますし!」
相変わらずの傾聴力は劣ってないようで。
「あのね~どこにあの子なら大丈夫っていう根拠が――」「だって……彼女は――」
本当に、私はこの耳が憎い。
聞きたくなくても聞こえてしまうから。
遠ざかって行ったのと碧がさらに小声にしたのも相まって最後は聞こえなかった。
……山崎さんに、どこまで話したんだろう。
ホームで電車を待っている時、私は晃さんに声をかけた。
「さっきの話だけど、やっぱやめ。今度行ったときに受け取る」
持って帰るかどうかはその時決めるけど。
「必ずすべて着て、さらに一着につき一日は着なくてはならなくなりますよ?」
「重々承知。あ、次行くのはGWだったっけ? 碧もいるんじゃない?」
「……はい」
「二人で一緒に撮った方がよくなあい?」
キュルルンっていう効果音が出そうなぐらい可愛く言っているけれど、怒りがマックスの私は、碧を巻き込むことを決意した。
今回の憂さ晴らしは碧に対して静かに嫌がらせをするが一番ですね。
※いじめ、ダメ! ゼッタイ!!※
「……伝えておきます」




