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秘知ら陰譚-私が怪盗になって知ったことー  作者: 翠雨 ユイカ
心の靄とアクティブワンダーランドの霧
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23/32

22 ブラック(職場)ですね、やりません。

「付き合っていただき、ありがとうございました」


 クイズも終わり、辻村さんとは解散する雰囲気になったのでお礼を言う。


 ちなみに伊予が別の所に走り出してしまったので、蓮は追っかけ(させ)て、結局二人ともどこかに行ってしまった。


「僕は大したことしてないよ。なんにも答えてないしね。それにしても圭理くん頭いいね! 僕の職場に来る気ない?」


 机を乗り出し……はしてないけど、そんな勢いで圭理に話を持ち掛けた。


 ……確かに、圭理の技術はよいことに生かせば大人勝りだ。

 ケイ自身が人の物を盗んでいないとはいえ、情報などを数々の犯罪を犯していることに変わりはない。


 でもこれは誰でもできる事じゃない。

 ホワイトハッカーなど、この技術が使えるところで使えば本当にいい給料がもらえる。


 ――本当に怪盗をやっていていいのだろうか。


「……年収によります」

「欲しいだけあげるよ」


 ん? 警察組織ですよね。

 辻村さんに決める権利はないのでは?


「……って言うのは冗談だけどね~。一千万ぐらいでどう?」

「一千万……? ケイ、日本人の平均ってどのぐらいなの?」


 二十代の日本人の平均年収は約345万円〜365万円程度。

 さっきも言ったけど、民間のホワイトハッカーとかセキュリティエンジニアとかなら技術次第でいけなくはない。


「一千万の半分以下」


 顎が外れるぐらいポカンとする。


「僕にそれだけの技術はないですよ」

「じゃあ年収六万」

「ブラックですね、やりません」


 なんかもうずっと言ってるけど、警察ってブラックなんですか?

 月五千円とか生きていけないって。


 バイトより少ない。


「僕の愛情付きだよ?」

「お断りします」


 それなら……とはならないね。うん。


「就活するときは僕に連絡してねっ!」


 十年後もこの会話をやる気なんですね。


「あの……鈴木くん?」


 そこで後ろから白髪交じりの七十歳前後の男性から話しかけられた。

 あれ……? この顔、どこかで?


「前川先生」


 あ、そうだ!

 ケイたちの通う学校の校長先生だ!


「奇遇ですねどうしてこちらへ?」

「孫と一緒に来ました。藍斗(あいと)。ご挨拶」


 校長先生の足にしがみつく小学校低学年ぐらいの男の子。


「……あいとです……」


 そういえば前川さんって碧の友達(?)のお爺ちゃんだっけ?

 藍斗くんのお兄ちゃんか従兄かな。


「そちらの方たちは?」

「初めまして、圭理の従妹の狐月檸檬と申します」

「……初めまして。彼らの叔父(・・)の作本です」


 正直に話さないんですね。

 っていうか、あなた、私たちの叔父になるの好きですね。


 勝手に何も説明していない一般人の親族になるのはやめた方がいいですよ。

 否定されたら怪しまれますけど?


「初めまして」


 藍斗くんがお母さまの元に行って、圭理と前川さんが話し始める空気になり、移動し始めた。

 (私は辻村さんと二人きりになるのが嫌なので、)私たちもついて行く。


 辻村さんは叔父と自分で言ったので保護者替わりだと前川さんも思っただろうし、辻村さんもついてくるしかなかった。


 お仕事大丈夫ですか?


「圭理くん。我が校が大体異性同士、学年同士で仲が悪いのはご存じですか?」

「はい」


 部活も今時珍しい上下関係が厳しいらしい。

 この学校の欠点が生徒の仲の悪さだったんだけど、それでも進学校&伊予たちがいるって言うのが背中を押したよね。


 まあ、仲悪いんじゃなくてただ先輩たちがそうだったからそうなっているっていうのは聞いたことあるけど……。


「それの解決策としていい案を思いついたのですが、大きな壁がありまして……」


 伊予からも聞いたことがあるけど、伊予のコミュ力ですら乗り越えられない伝統。


「その壁って?」


 部外者がきいていい話なのか分からないけど、介入して来た辻村さん。

 でも、確かに気になる。


「お金です」

「ああ……」


 うん、仕方ないね。

 「よい子のみんなぁ~? お金や金額より気持ちが大事なんだよ~!」って伝えたいところではあるけど、実際はそう行かない部分が多い。


「いくらほどなんですか?」


 聞いてしまったなら聞いてもいいだろう精神で聞いてみる。


「あと約一億五千万ほどです」


 喉を通ろうとしていたミルクティーが気管に入りそうになってむせる。

 タピオカ入りにしなくてよかった……。


 あの、かの有名な(のかは知らないけど)辻村さんでも変わらぬ笑顔で小さい声でやりすぎ……? と囁いていた。


「大きい……ですね。何年後の予定なんですか?」

「もう建設はだいぶ終わってきているので、新年度からですね」


 ん、建設?


 お金集まりきる目途が立ってないのに建て始めちゃったの?

 って言うか、1.5億ですべてじゃないの?


 なにやってんの?


 そこでピンポンパンポ~ンと店内アナウンスが流れる。


『辻村さま、辻村左紅さま。至急、サービスカウンターにお越しください。もう一度繰り返します。辻村さま。至急サービスカウンターにお越しください、と言うか来い』


 ピンポンパンポ~ンとなってアナウンスが終わる。


 ちょっとキレてる……ていうかなんで呼び出されてんの?


 一瞬疑問に思ってから思い出した。

 この人仕事中でしたね。


 ほったらかして来ているんですか、私たちのせいですねごめんなさい。


 ……見物ですね~。

 貴方はこの状況からどうやって抜け出すんですか?


「……やはり学校の運営って大変なんですね」


 ん? 続けた?

 この人行く気ないな!?


「そうですね。うちは私立なので……」


 前川さんも続けちゃったし……かといって私たちが「そろそろ行きません」とか声かけるわけにもいかないし……。


 ……そもそも私が辻村さんを気に掛ける必要はない……か。

 そうだね。私たちの正体がバレなきゃいいんだもんね!


「作本さんはご結婚されてます……よね。お子さんとかは……」


 前川さんは辻村さんの左手の薬指を見てそう答える。


「まだ婚約中ですよ。四月に式を」


 ここでも嘘。

 確か奥さん、亡くなってるんだっけ。


 そこで、ヴ――ッ、ヴ――ッ

 と辻村さんのスマホが鳴った。


「ちょっとごめんね」


 席は外さず、壁の方を見ながら電話を取る。


『辻村先輩!? 今、どこにいるんですか!?』


 声的にあの時(十九話のおまけ2)の辻村さんの後輩さん。


 アナウンスから三階に居たらまだたどり着けないぐらいの時間しか経っていないけど、行く気配ないなってわかってる。

 いい後輩だ。


「ごめんごめん、今すぐ戻るよ」


 そう言って通話を終わらせた。

 席を立ちながら「ごめんね二人とも。僕、仕事が入っちゃって。また今度」と。


「お話し中すみません、この子達を頼みますね」


 前川さんに会釈をして最後まで叔父を演じながら去って行った。

 この人、後輩からの電話が無かったらどうやって去るつもりだったんだろう。


 ……おそらく去る気なかったんでしょうね。

 後輩くん、ガンバッ!


「あれ? 檸檬じゃない?」


 そう話しかけられ、振り返るとそこには藤森グループの社長の息子がいた。

 何で髪色違うのに分かったのかな~?


 ちなみに、小さい時からの母の希望で社長の姪としてかかわるときは髪色を茶色いウイッグを被って出ることになっている。


 そして話しかけてきたのは、うちの会社と取引をしているところで何度か食事の席に言ったこともある。

 私より三つ下で、ザ・お坊ちゃまって感じの子。


 もちろん社長の仕事相手の子ども同士ということで会っているから茶髪でしか会ったことない。


「お久しぶりです慶太さん」


 正直、向こうもさん付け、慶太さんが年上でもちゃん付けをしなきゃいけない立場関係。

 小三だし、まだ許してる。

 でも、私の普段の立ち振る舞い的に呼び方はもさん付け。


「俺様のあげたブレスレット、つけてくれてて嬉しいよ。最近、つけてくれなかっただろ?」


 ああ、なるほど。

 早速ボロを出しましたね。


 二度と付けません。


 でも、ここで相手をしないわけにもいかないので、席を立つ。


「ごめん、ケイ。すみません前川さん。少し席を外しますね」


 晃さんと要相談だな~。

 壊したり捨てたりしてもいいんだけど、この性格だしいやいや言ってきそう。


「……さっきのやつ、檸檬の彼氏?」


 ケイのこと指してますか?


 少し嫌そうな顔をして聞いているのがまだまだ子どもだと言うべきか、この先が心配と言うべきか。


「いいえ。彼は(わたくし)の母方の従兄です」

「二人で来たのか!?」

「彼の妹とあともう一人いますよ」


 一応、蓮の性別は伏せとくか。


「あ、そうだ。これから時間あるか?」

「あ~……」


 ここで断ってまた今度一緒に出掛けようと言っても社交辞令が通用しない子なんだよね~。

 今はケイと前川さんが近いからいいけど、ちょっと二人だけになるのは怖いから、晃さんか昴さん……

最悪碧について来てもらおうかなぁ……。


 苦手なんだよなぁこの子。


「ごめんなさい、連れを放っておくことはできません」

「そっか……じゃあまた今度出かけような!」

「家の者と相談して許可が出ましたらね」


 そう言って別れた。


 ところで大人を誰一人付けずに藤森グループのご子息が歩き回ってるんですか?

翆ちゃん調べで申し訳ないですが、最近は部活間などでの先輩後輩の上下関係は薄くなってきているようです。部活とか学校にもよると思いますが、先輩にタメ口とか普通にありますし、私の所属していた部活は先輩後輩間で仲いいと言われればそれほどでもないですけど、先輩に緊張して話しかけない子もいます(私は性格上、気軽に話しかけに行けない)。他校の友達は「先輩(後輩)とめっちゃ仲いいよ~」とか聞きますね。


翆「慶太殿、多分この章終わったら出てこないと思う」

小「出す予定はないよな」

翆「でも~人気投票して、三位以内に入りそうなら考えてあげようかしら?」

小「そもそも人気投票する気ないのに言うな。……檸檬はあのあと、檸檬はどう対処するんだ?」

翆「未だに出てこない檸檬の叔父の飛空(ひくう)しゃちょもお互いの関係性がどうとかで止めはしないんじゃないかな~。とりあえず晃さんか昴さんに相談が一番に来るとおもう」

小「そうしてくれ」

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