11 喧嘩はメッ! 特に明け方などはおやめください
二章、始まるよ~☆
「あ~違う違う。そこを右」
『もうちょっと指示を的確に!』
「ちゃんとやってるよ。こんな迷路なんだから我慢して」
本日は怪盗ワンダーが加入してから初の出動。
残念ながら私はKと一緒に指示役。
コードネームは私がR、伊予がI、圭理がK、蓮がE。
頭文字を合わせて作った怪盗RIKE。ライクって名乗ることを決めた。
でも、なんか私が頭文字になっててリーダーみたいになってない?
ほかにもRIKE、K-RIEとか並び替えたもの、妖狐にちなんでファックスなんかが上がったんだけど、結局はライクになった。
そしてここは古びた豪邸みたいなコケがいっぱい生えた場所。
実際には人工物なんだけど、幻想的な場所で昼間は展示もされているみたい。
そんなここには「鍵」があるという情報が入った。
何の鍵かは分かってないけど、重要な取引の鍵なんだって。
それが拳銃密輸なのか麻薬密輸なのかは知らないけど。
「あっストップ!」
『ちょ、何!?』
「そこの石垣を飛び越えた方が近道だし安全」
『え~結構高いんだけど』
「ぐずぐず言わない。遅れを取ってるから急いで。Kと変わろうか?」
先に全部伝えてもいいんだけど、Iはすぐ忘れちゃうからなぁ。
「たぶんその辺にEとタゲがいると思う」
『りょ~かい』
「……R、すぐに引き返した方がいいかもしれない」
隣に座っているKが話しかけてくる。
「どうかした?」
「『『……何もない』』」
Eも入って来て三人の声が重なる。
「……逃走経路は?」
何があるのかは考えている暇はない。
ともかく二人の安全を確保して逃げ出させなきゃいけない。
「今そっちに送った」
「ありがとう。Kは二人の指示をお願い。安全確認をする」
「分かった。……! 下がれ!」
I、Eはその場を下がる。
二人の正面から棒状のものが飛んできた。
『率直に聞く。敵か味方か』
IでもEでもない声が聞こえてきた。
スピーカー越しでも感じる声はとても鋭く、鳥肌が立つ。
声が聞こえるのに姿は捉えられない。
『……久しぶりだな』
Eの知り合い!?
『なるほど。お前も堕ちたな』
『どうだか。一人で動き回ってバレバレだったぞ』
喧嘩している……?
「……EはEの判断に任せる。I、そこから離れろ」
『…………』
「R。Iの安全確認は俺がやるからEの様子を見ておけ」
「分かった」
Iはそこを去り、残ったEとどこにいるか分からない奴は――――口喧嘩をしていた。
『そもそもお前が複数人で活動している方が悪い』
先に啖呵を切ったのはE。
『はぁ? 複数人って何だよ俺らは二人だ』
『んなわけねえだろ、ニコニコに司令官がいるのは調べがついてんだよ』
『そっちこそ四人で活動しやがって卑怯だろ』
『ど~こがですか? 今俺一人ですけど?』
「い……E? そろそろ夜が明けるんですが……?」
十二月下旬に入った頃。
大体六時五十分ごろに日が上る。
「え~うそ。まだやってんの?」
ついには伊予が帰ってきてしまった。
「三人とも~起きてるなら手伝って~」
下から蜜柑さんの呼ぶ声。
「どうするの?」
「私、Eを迎えに行ってくる。K。何とか外に出して。伊予。悪いんだけど、蜜柑さんのお手伝いお願いできる?」
「わかった」
私は前回と同じウィッグをかぶって準備をする。
「どうやって向かう?」
「……タクシーになるか。バスも電車も間に合わない。これ使え。安くなる」
そういってタクシー割安チケットをもらった。
「ありがと」
私は駅のほうに向かって走り出す。
ここは住宅街だし、なかなかタクシーはいないからね。
Kの指示通り、行くとそこは今回盗む場所から五百メートルほど離れたところ。
口喧嘩の相手も姿を現していて、二人でギャーギャー言っている。
朝早いのに大きい声で喧嘩し続けるもんだから、迷惑そうに窓から顔を出すあたりのマンション住人さんがいる。
申し訳ない……。
「ほら、早く……」
「申し訳な……」
私がEの腕を掴み相手から引きはがすと、Eの口喧嘩相手の方も同じことをしている人がいた。
「……本当に申し訳ありません。りーくん、酔っているのかな? 普段は飲まないんだけど……」
Eを迎えに来た彼女風に振る舞う。
「こいつ、彼女にフラれたみたいで。こちらこそすみませんね~」
相手は親友なのかそれとも親友風なのか分からないけど、そんなように話している。
「「俺は酔ってない!」」
「「ハイハイ静かに~」」
二人で反対方向に口を塞ぎながら連れ去る。
遠くからパトカーの音が聞こえるから、早くここを離れたい!
「で? あの人は誰なんですか?」
リビングで準備をする私たちに電話越しで蓮と連絡を取る。
ちなみに私はミキサーがぶっ壊れたので手動で生クリームを作っています☆
『あいつはnikonikoという怪盗グループの一人です。俺のようにニュースに出ることもなく活動する怪盗です』
ニコニコ?
確かにニュースでは聞いたことがない。
『ちょくちょく顔を合わせるんですが、あっちは妙に合わなくてですね。こっちが下手に出ても結局は喧嘩になってしまうんですよね……』
「あっちとかこっちって言うぐらいだから、もう一人いるってこと?」
キッチンに入ってくる伊予が蓮に質問する。
「盗み食い厳禁、伊予撤退。でも、それは気になる。あの人も言ってたよね。『俺らは二人だ』とか『今は一人だ』とか」
『あいつらは最低でも三人いることが分かっています。行動に出るのは二人だけですが、圭理のように指示を出す人がいるんです』
なるほど。
「……檸檬。初任務の時僕が寝ていなかったのを覚えているか?」
「うん」
「あれは蓮以外に誰かのアクセス履歴がかすかにあったからだ。恐らくそのニコニコと言う奴らだろう」
ケイが寝なかった理由はそれかぁ……。
『……ん? 俺のアクセス履歴残ってた?』
「ああ」
あ、残してないつもりだったのね。
『マジで!?』
「全て消しといた」
『ありがと~!』
「手遅れじゃないといいんだが」
『あいつらのことだから見つけてそうなのが厄介……』
この事で足跡が付いたら最悪活動終了、逮捕になりかねない。
「そいつらが盗むものは何なの?」
これ重要。
今後注意した方がいいのかが決まる。
『調べる感じ、半分が情報でもう半分は盗品などですかね』
「情報!? マズくない!?」
「何がマズいの? ケーキ、美味しく作れなかった?」
コップに水をくむ伊予。
「いや、美味しく作りますけど!? 情報を盗るプロならがちがちに固めないと私たちが逮捕されかねない」
法律的には捕まるのは蓮だけなんだけど……。
「それはヤダ。絶対にイヤだ」
「まあ、ともかく四人とも。力不足かもしれないけど、大人の力が必要なら言いなさい! あら、美味しそうなケーキになりそうね!」
重要な話の後にケーキの後に話になるのが不安だが、蜜柑さんはかなり信頼できる大人だと思っている。
『ありがとうございます、鈴木さま』
「そんなことより、さま付けはよして!」
「……そろそろ修一さんが来るかも。いったん切るね」
『ハイ! それではまた!』
「バイバーイ」
ケーキを作っていたり、準備をしたりしているのはこれからクリスマス会を鈴木宅でやるからだ。
そして修一さんとは蜜柑さんの旦那、圭理や伊予の父、私の叔父だ。
修一さんは普段は海外勤務でいないんだけど、私の両親が亡くなったっていうのがあってクリスマスイブの今日から年始まで日本にいることになった。
お葬式には間に合わなかったんだけどね……。
「ただいま~!」
「お父さん!」
伊予は大のお父さんっ子。
百七十近い伊予が飛びついてもしっかりと受け止める修一さん。
筋肉ムキムキマンだ。
「しゅーくん、おかえり」
「父さん、おかえり」
「圭理も檸檬ちゃんも大きくなったなぁ……蜜柑。変わったことはあったか?」
「特に? 檸檬ちゃんが来たことぐらいは変わらないかな~。最近は遠出もしてないし」
……遠出というのは人それぞれ感覚が違うし、定義があるわけでもない。
だが、下道……一般道で行った六十キロ以上は遠出と言っていいだろう。
蜜柑さんは新藤家のお墓に行ったことを隠している?
他の家庭に首を突っ込むわけにはいかないが、ケイはどう考えているんだろう。
「檸檬ちゃんもいらっしゃい。葬式、行けなくてごめんな」
「お気遣いなく。飛行機でお疲れでしょうし、少々休まれては?」
「いや、準備を手伝うよ」
翆「いやぁ、3,4年檸檬たちの怪盗名を『怪盗ファックス』でやっていたので名前を忘れる忘れる」
小「妹との会話も『秘知ら陰譚』と言わずにいまだに『ファックス』だよな」
翆「そうなんですよ~あ、二章始まりましたこれからも末永くヨロです☆」
小「明かりを付けましょぼんぼりに~」
翆「急になんね!」
小「なぜ博多弁……? 今日は桃の節句なので歌いました☆」
翆「我が家には七段のひな壇があります☆ 先週ほぼ一人で飾りました、汗かいた。いい運動!」




