9 柚子の香りに包まれて
「檸檬さますみません、私もうそろそろ行かなきゃならないので行きますね。蓮。檸檬さまを命に代えても守るのよ!」
「多少なら自分で守れるのでご安心を!」
美紗子さんを見送って蓮さんと二人になる。
さっきのあんなことがあったし、大丈夫かな………?
そんなふうに思って、チラッと蓮さんの方を見る。
「………檸檬さま、アロマはお好きですか?」
「え?」
蓮さんは二階に行ったと思うと、すぐ降りてきた。
その手にはアロマディフューザーがあった。
説明しよう!
アロマディフューザーっていうのは……何?(お前が知らんのかい! つうか誰や!)
あててててっもの投げてくるなよ!
あッ台本発見!
アロマディフューザーというのはアロマを入れて、部屋の中に匂いを広げるらしいよ!
色んな種類があるけど、狐宮家は加熱式と言って火を使うんだ!
「フッ!」
蓮さんはササッと準備をした後、部屋の電気を消し、カーテンを閉め、アロマディフューザーに火をつけた。
妖狐用で自分で操れるから火が燃え移らないようになっていない。
だから火をそのまま見れてとても綺麗。
仕掛けはよく分からないけど、火の回りで線香花火のようにパチパチッと弾けている。
見入っていると、このアロマディフューザーに入っているアロマ、柚子………?
「自分、演じることが好きなんです。人の感情を考えてその役、誰かになりきる。そう言うところが好きなんです。それと、自分の勘でしかないですし、違ったら申し訳ありません」
前置きでそこまで話すと、蓮さんはこちらをまっすぐ見て
「檸檬さま、無理してますよね?」
と言った。
「…してないよ?」
「檸檬さま、気づいてないかもしれませんが、嘘をつく時、手を後ろに隠す癖がありそうですね気をつけた方がいいです。あと、これはたまたまかもしれないですが、敬語が抜けてます。これが俺が言う前と、言った後の違いです」
「……………」
最近、嘘ついた時を思い出す。
「……一瞬で見抜くなんて蓮さんは凄いですね」
そういえば蓮さんの言った通り、手を後ろにやってたまに敬語が抜けている。
「人間観察ってやっぱり重要なんですね」
「いえ。知り合いが同じ癖だったので気づけただけです。それに、俺より年下の子が両親を同時に亡くして時間も経ってないのに明るく振舞えるのが異常なんです。誰でも気が付きます」
……ダメ元の話を逸らすのもダメだったか。
「……また、嘘をついちゃっただけなんでそんなにたいしたことじゃないですよ」
「また? 何回も繰り返していないと『また』とは言わないですよね。演じるということは同時に嘘をつくことにもなります。誰かの前で何か演じてたんですか?」
「違うよ。そんなに気にしないでくださいよ。昨日の夜と、朝に嘘ついたし出かけてくるときも嘘ついたから『また』って言っただけで、特に深い意味はないですよ」
あんまり軽く言わないで、さっき言われた癖をやらないように。
よくありがちな視線、頭の向き、瞬きを変えないで、鼻や口を触らないように。
さっきと似たように敬語も外さない。
「…………分かりました」
するとソファーの反対側に座っていた蓮さんが立ち上がって、どんどん近づいてきた。
「違ったらすみません。失礼します」
そう一言残して蓮さんは私をギュッと抱きしめた。
「蓮さんッ………!」
「檸檬さま。心理学って知ってますか?」
「心理学……? えっと、種族を問わず心がどう感じ、考え、行動へつながるのかを解き明かす学問……?」
「そうです」
蓮さんが言うには私は右手の人差し指の爪の横の皮を親指でいじっていたそう。
これは自分の体に軽い痛みや刺激を与えることで、溢れそうな感情(例えば泣きたい気持ち)から気をそらそうとする防衛反応だそう。
「…………ッ!」
蓮さんの温かさと部屋の中に漂う柚子の香り。 私はこらえていた、こらえられるはずの涙が飛び出した。
「ウッ……ウッ………ダメだなぁ……また、本音が、言えなかったッ…………!」
「大丈夫です。大丈夫です」
蓮さんは私の頭をずっと撫でてくれていた。
ただ、一分ぐらい、もっと長かったかもしれないけど、だんだん「あれ、これ泣き止むタイミングっていつ?」って考え始めちゃって。
涙もまだ出るし、しばらくはこのままで行けるけど、いつここを抜け出そう。
っていうか、私、お姫様抱っこの次は抱きしめられるんですか?
え、マジで恥ずかしい。どうしよう。
……………………………………寝よ。
うん。寝たらなんか夢だったとかはないかもだけど、ちょっと顔を合わせるのが楽かな。
このままリアル寝しよう。よし採用。
二個上の男子の腕の中で眠るのにはちょっと恥ずかしいが、仕方ない。恥など捨て去れ!
「ウッ………ッ……………ッ………………………ス――――――――ッ(ガチ寝)」
♢♢♢
檸檬が泣き始めて数十秒後。
蓮の心境。
さっきまで読んでいた「無意識に出てしまうサイン100! 周りで見たら話を聞いてあげて!」と言う本で得た知識だからまだ正しいかどうかわからないのに使ってしまった~!
どうしよう。
もしかして気を使って泣いていたりとかしないよな。大丈夫だよな。
大丈夫じゃないと俺が死ぬ。
立場の違いすぎる雲の上の人、地中にいる俺が宇宙にいる檸檬さまを抱きしめてるんだぞ⁉
ただじゃすまない。
最悪首がスパーンと真っ二つになり頭と胴体は永遠の別れを告げる。
そんな考えを続けて大体一分後。
檸檬も泣き止むタイミングを探し始めたのもすぎ、後五秒後にはガチ寝する時間になった。
「ウッ………ッ……………ッ………………………」
うん。もう、落ち着いて来たと思うし、話しかけよう。
「れもッ」
「ス――――――――ッ」
「えッ」
緊急ミッション!
なんと檸檬さまが れん の腕の中で眠ってしまった!
▷ ソファーに寝転ばせる
母の布団にまで連れていく
姉の布団にまで連れていく
妹の布団にまで連れていく
自分の布団にまで連れていく
寝込みを襲う
いや、最後二つは全くもって論外だ!
残りの四択だが、璃乃や零は自分の布団に人の匂いが入っているのを大層嫌がる。《いや、蓮(お兄ちゃん)が嫌なだけだからね? By姉と妹》
母は最悪失神しかねない。
とりあえず、ソファーに寝かせる…か
れん は「ソファーに寝転ばせる」を選んだ!
家には我一人と檸檬さま。
その檸檬さまは眠ってしまったし、起こすことは恐れ多い。
動くと起きてしまうかもということでどうすることもできない蓮は檸檬が起きるまで何もできなかった。
~三十分後~
「っ………」
三十分経ち、ようやく檸檬が夢の世界から目覚めた。
「天使の目覚め……?」
「天使ではなく、妖狐の半妖です」
起きて早々目の前に非の打ち所がない顔の整った蓮の顔がドドンッと現れても静かに突っ込みを入れられるのは才能なのか慣れなのか。
「失礼しました。檸檬さま、三十分ほど眠っておられましたよ」
そう言って蓮さんは立ち上がる。
「あたたたっ」
「…どうかしたんですか?」
「足がしびれているだけなので大したことないです」
「もしかして、私が寝ている間、ずっと正座をして………?」
それならめちゃめちゃ申し訳ない………。
「いや、慣れなので気にしないでください! これから一日中正座して鍛えますので!」
「そんなことで無理はしないでください!」
蓮さんの思考はよく分からない……。
そんなことを思っているとポケットに入れていたスマホが振動した。
伊予から連絡が入った。
『ごめん』
『感覚は人によって違うもんね』
『あの後、お兄ちゃんに怒られちゃった……』
と来た。
「………………」
『私こそごめん。
今から帰るから心配しないでね』
と送り「蓮さん。私、そろそろ帰りますね」と言った。
「分かりました。送りますね。あと、さん付けはやめてください」
「じゃあ、蓮?」
そっちこそさま付けをやめてほしいけど、頼んでも無理そう……。
翆「アロマとかそういうの気になってはいるんですけど、ちょっぴりお高そう」
小「それなー」
翆「やっぱギャグが一番書きやすい!」
小「わかるー」
翆「こんな面白い兄貴欲しいな~」
小「それ――」翆「ちょっと、適当すぎません!?」
小「話題が無いからしゃーなし」
翆「その通りでございます」
☆言い訳タイム☆
だってさ? 何もないんだよ!
調べたよ!? 「今日は何の日?」って。
だってだって意味わかんないのしか出ないんだもん!
小「はい、言い訳見苦しいよ~」
霧「かいしゅーしま~す☆」




