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15 冒険者登録


 従業員が部屋に朝食を届けに来てそれを食べた後、急ぎの用が無い俺達は仮眠を取ることにした。

 冒険者ギルドに登録予定だったが昼からでも良いだろう。そもそも朝一に行けば冒険者達の依頼受付でごった返して登録どころじゃない。

 昨日はちょっと興奮しすぎた、二度目のこの世界でレオンとは違う景色が見れるであろうことに胸がときめいてしまった。


「冒険者登録した後は何か依頼受けるの?」


 目が覚めたのは昼を少し過ぎていた。宿の浴場は何時でも入れるようになっていたので、着替えを兼ねて眠い頭をスッキリさせてから宿を出た。今は冒険者ギルドへ向かう通りを二人で歩いている。


「今日は依頼は受けない。まずは服と装備を揃えよう」


 今着てる学生服は完全に風景から浮いていて、ここを歩いてるだけでも多くの視線が飛んでくるんだ。


「絵美は初異世界だから観光しながら慣れてもらおうと思ってる」

「ほほう、じゃあまずは定番の屋台でオーク肉の串焼きだね」

「いいね、その《あるある⦆ならあるぞ」

「やったぁ」


 そんな他愛無い会話をしてると次第に他とは違う雰囲気の建物が見えてきた。

 直ぐに冒険者が町の外に出れるように昨日通った町の門からすぐ傍にあり、無骨な扉が何度開閉しても壊れないぞと主張している建物。

 ここが冒険者ギルドマテス支部だ。


「よし、ここからまた冒険者をやり直せるぞ」

「……」

「ん? どうした」

「何でもない。ただ、冒険者を始めるぞ~って言わないんだなぁと思って」

「……?」


 ウキウキ気分でギルドの前に立つ俺を、絵美は首を傾げてジッと見ていた。

 いや、だって、俺は……


「よ~し今日から冒険者だ~ 行こう()()君!!」

「お、おう」


 絵美の言葉は何だったんだろう。それの答えを思い付く前に彼女は右手を突き上げて俺を入口へと促した。


 やや重めの扉を押し開くと中は広く、右半分が受付のようなカウンター等があり、左側半分は飲食場のようになっている。

 案の定ジロジロとその飲食場で酒を飲んでる冒険者の視線が飛んでくる。別に敵意が有るわけではなく、依頼を持ってきた奴なのか、初めての奴かそれとも実力者なのかなどと色々詮索しているのだ。


「思ってたより清潔で人が少ないんだね。なんか役場みたい」


 そんな視線を気にも留めず、絵美はキョロキョロと見渡し異世界小説との差異を確かめていた。


「もう昼過ぎだぞ、皆は依頼を受けて外出してるよ」

「それもそうか」


 俺はカウンターへと歩を進め、一人の受付嬢の前で止まった。


 (まだ居たんだな…… あれから二年しか経ってないんだから当然か)


 確か名前はミーツだったか。前世の時はまだ一年目の新人で早とちりをよくやってしまう人だったが、二年も経つと立ち姿もそれらしくなってるな。

 比呂として十七年経っているのに此処では二年しか経っていない。本当に異世界不思議だ。


「いらっしゃいませ。本日は依頼の申し込みでしょうか?」

「いや、冒険者登録をしたいんだが」

「も、申し訳ございません。服装から貴族様からの依頼かと早合点を……」

 

 やはりこの学生服を見たらそうなるかぁ。登録終わったら直ぐに服を買いに行こう。

 それにしても、二年経っても早とちりは簡単には治らないんだな。


「その気持ちは分かるから気にしなくていいぞ。あと、俺達は貴族じゃないから」

「は、はい。ではこちらの用紙に必要事項をお書きください。代筆は必要ですか?」 

「それは大丈夫だ」


 そうして二枚の羊皮紙を渡された俺達は記入を始める。俺は前世の記憶が有るし、絵美は女神様に異世界言語理解のスキルを貰っていた。

 因みに絵美の〈鑑定〉と〈言語理解〉は、本来この世界に存在しないスキルなのでステータスボードには反映されていない。

 サラサラと書いていく俺達。といっても、書くのは名前と年齢と犯罪歴が有るかどうかだけだ。


「必要事項ってこれだけ? スキルとかは書かなくていいんだ」

「うん。スキルは個人情報だからな。 まあ、人前で使えば直ぐにバレる事だけど」

「その通りです。ギルドとしては冒険者の力量は知っておきたいのですが、それはその人の弱点にも繋がりますから聞かない事にしています」


 絵美の質問に俺が答えミーツが補足した。

 用紙を書き終えるとミーツに渡し、その後は恒例のあれだ。


「ではこの水晶に手を置いてください。先程個人情報は聞かないと言いましたが、最低限の力は把握しておきたいので魔力量の測定だけはお願いしております」

「《あるある⦆きた~」

「あるある?」

「あ、いえ、気にしないでください。えっと、こう?」


 異世界小説あるあるにテンションが上がってしまった絵美の口から心の声が出たしまったようだ。

彼女は恥ずかしさを誤魔化すように、だけど顔を赤らめたままスッと水晶に手を置いた。

 水晶による魔力量測定はその量によって緑、青、赤へと色が変わって行く。大まかに言うと初級の魔法使い冒険者が緑色、中級で青色、上級で赤色だ。

 そして絵美は白に近い赤色だった。


「こ、これは?! 見た事が無い色」

「光具合にもよるが、赤じゃないのか?」

「あ、確かに赤にも見えるような……」

「次は俺の番だな」

「あ、はい。どうぞ」


 無理もない。絵美の魔力量は上級のさらに上を言ってるのだから。おそらく上級より上は白色へとなって行くのだろう。

 実は赤からさらに色を変え始めた時に俺は絵美の体を軽く突いた。彼女はその合図の意図を察知したらしくそこで手を離したため赤みが残っていたんだ。

 さらに俺は変な詮索をされる前に誤魔化し、直ぐに俺の番へと話を進めたのだ。


「青と赤の間の紫色…… お二人とも凄いのですね」

「ああ、魔力量だけは少し自信があるんだ」


 俺もまた赤色に変わる手前で水晶から手を浮かせた。別に力を隠したいわけじゃ無いんだが、登録初日に、しかも装備も揃って無い今はあまり目立ちたくはなかった。


「いえいえ、少しどころか将来有望ですよ。これならスキップしても……」

「スキップって?」


 初めて聞く単語に絵美が尋ねた。俺も初めて聞く単語だが、もしかして二年の間に何か変わったのか?





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