氷と湯気とラーメンと
寝転びながらハンティングゲームをしていると、氷上から持たせられているスマホが鳴り通知を告げた。
メールの内容は今日は遅くなりそうなので晩飯は各々でということであった。
今日はワンピースの部屋着を纏っていたので、そこにデニムのジャケットを羽織り、髪をひとつに括って氷上のキャップを被った。
化粧を施さなくても顔が整っているのは、個体の問題か怪異の関係か。
雪女が美しいと認識されているから私が美しいとなるならば、ある意味でゆゆ式事態である。だが私は不細工な雪女を見た事があるのでそれはないか。
家の鍵を閉める事はなれない、がゲームが盗まれる可能性があると考えると、閉めない訳はいかない。私のセーブデータ。
氷上の家は少し高い所にあって坂道を下ると商店街がある。
行きはよいよい便利だ。
商店街のど真ん中の暖簾がかかっている店に入った。
「紫蘇ちゃんとりあえず氷酒」
カウンター席について注文する。
「発音が葉っぱなのじゃが、今日の氷酒は初冠しかないのだけれども良いか?」
「ん、はい4000円」
「ん、確かに」
席に出された氷酒、10本。ゲームソフトがひとつ買えそう。
「さて雪女、お主今日はハイカラじゃの。高等教育機関に通う小娘みたいな格好しおって。若づくりかの?」
「んー、これ? 部屋着以外全部氷上だよ」
氷点下のお酒に口を付けると、いままで忘れていたことを思い出した。
「おかみ!! 決闘しよ、やってるでしょこれ」
わたしはカウンターにデッキを置いた。
「今勤務じかんなのじゃが」
「え、どうせ今日はガラガラでしょ」
「そうじゃなお主のせいでな」
「神格が漏れちゃっているのかね」
「漏れているのは冷気じゃと思うがな」
帰宅途中、女将さんからメールが届いた。
『冬を連れて帰れ』
商店街に一つだけ下がっていない暖簾をくぐると、朝確認した寝巻すがたの美少女がカウンター席に突っ伏しているを視認した。
「おう、氷上」
「お疲れ様です、ってカードゲームしていたんですか」
「うむ、今日はこいつのお陰で客が来んのじゃ」
「何かうちの事情に巻き込んで申し訳ない」
「まあ、近所付き合いは大切にせんといかんしな」
「それじゃ帰ります、ありがとうございました」
雪女をおぶって暖簾をくぐる前に挨拶をした。
「うむ、またな」
少しの揺れと、少しの温もりで私の意識はこちら側に戻ってきた。
「あ、氷上の背中ー」
「今日は悪かったな」
「いいよーおかみが暇つぶしてくれたし、それに氷上におぶって貰っているし、えへへ」
私は微かな温もりの背中に頬張りをした。
「去年の晦日を思い出すね」
「その時は逆だったがな」
「迷惑?」
「全然」
それならと、また彼の温もりを楽しむべく私は目を瞑った。




