8月25日
今日は8月25日、七夕の日だ。
商店街の一角のラーメン屋にいつもの面子が集まっていた。
鬼、鬼、人、雪女、河童とウカミ。
銀、桃、黒、銀、紺に緑とカラフルだった。
人である自身は場違いなのではないかと思ってしまう。
「え、七夕で集まったんじゃないんですか?」
自身の疑問に答えたのは鬼の女将さんだった。
「元々、あの行事はの、わしらを退治するのものなのじゃよ。だから皆乗り気ではないのじゃ。そしてそもそもこの国の行事ですらないからの」
「収穫祭や聖夜祭などはいいんですか?」
「あれはの、上手いからよい!」
銀髪の鬼は自信満々な顔をしてグッドポーズをした。
「なんかさ、そうめんセールで売られていたから買ってきといたぞ」
水神さんが持ってきた袋にはそうめんが5キロくらい入っていた。あっ、そこは七夕なんだ。
「ナイスじゃ河童」
「あー、何というかあんたも河童と呼ぶんだな」
ウカミさんは夏の野菜と西瓜。桃色の髪の鬼は豚肉の小間切れ。多分10キロくらいありそう。
自身は家で腐りかけていたお中元で貰った花火。
「それでお主は何を持って来たんじゃ?」
問い詰められる雪女に逃げ道はなかった。
「そうめん冷やすよ」と、その言葉に何故か皆、満足げだった。後で聞いたところ彼女が作る氷はとても純度が高く美味しそうだ。言われてみて先月のかき氷を思い出した。普通の氷はそのまま食べても微妙らしい。
女将さんと雪女が奥へと潜って、手持ち無沙汰を感じた水神さんはゲームを始めた。
所謂今日は何の日ゲームだ。
山手線ゲームのように手拍子の間に今日の出来事を言っていく。
となりのウカミさんがボソッと「このゲームは毎年日付が変わるから、何回もやっている方が不利なのよ」と教えてくれた。
「「「「今日は何の日?」」」」
トップバッターは自身だった。時計回りに自身、ウカミさん、河童に鬼と言った感じだ。
「即席ラーメン記念日」
「「「え?」」」
自身以外疑問を唱えた。
「確かにあるわね」
「ほんじゃ気を取り直して」
「「「「今日は何の日?」」」」
「柴ちゃんがペスト菌を見つけた日」
「誰だよ柴ちゃん」
「肥後の北里では?」
「ああ、北里柴三郎」
「「「「今日は何の日?」」」」
「ローマオリンピック」
「「「「今日は何の日?」」」」
「1981ボイジャー2号が土星に最接近」
「「「「今日は何の日?」」」」
「2012ボイジャー1号太陽圏離脱」
「「「「今日は何の日?」」」」
「太田道灌が死んだ日」
「何したんだよどうかん」
「確か江戸城を築城した人だな」
「「「「今日は何の日?」」」」
「エミールテオドールコッハーの誕生日」
「「「「今日は何の日?」」」」
「1922大河津分水完成」
「「「「今日は何の日?」」」」
「1946アルノルトロゼがなくなった日」
「誰だよロゼ」
「オーストリアでコンマス57年間勤めた人」
「誰だ氷上混ぜたの、凍神のほくそ笑む顔が目に浮かぶ」
「「「「今日は何の日?」」」」
「ベルギー独立革命」
「「「「今日は何の日?」」」」
「川柳発祥の日」
「「「「今日は何の日?」」」」
「そろっと夕餉じゃよ」
「「「「はーい!」」」」
勝敗はつかずに終わり、皆で食卓を整えた。
ウカミの野菜は天ぷらに、桃色の髪の鬼の豚肉はひやしゃぶに。量が量なのでとても豪華にみえた。
夜遅くまでラーメン屋には明かりが灯されていた。
今年最後の納涼会と言った感じだった。




