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殺したのは俺?  作者: おもち
解散に至るまで

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5/10

ポーターのサイモン




 僕は、Aランクパーティ一騎当千のポーターをやっている。戦闘力もない訳では無いけど、器用貧乏で特化したものがない。まあまあなんでもこなせるのが僕だ。


 僕は今まで何組かのパーティにいたことがある。だけど、なんでもそこそこできる僕のポジションは、希望が被る新メンバーが来るとすぐ奪われる。

 例えば、槍士がいないパーティで、僕が魔術師をやっていたとして、僕より弱い魔術師がメンバーに入って魔術師しかできませんって言えば、僕は槍士をやれと言われる。納得できると思う?

 僕はこれでも、任されたポジションには責任をもち、そのポジションでやっていこうと決めて鍛錬し、頑張ってきたつもりだ。

 百歩譲って僕よりも強いならばいい。新メンバー選ぶなら足りないポジションで選んで欲しいとは思うけど、強いならばまだ許せる。だけど、僕がポジションを変えればいいという前提でメンバーを入れるのはおもしろくない。そんな感じで、どこのパーティに入っても長続きはしなかった。


 だが、一騎当千は違った。最初からずっと僕はポーターで、僕だけに任された役割だ。変えてと言われることはなく、仲間たちは僕だから任せられると言ってくれる。それに他のメンバーは、後から入ってきたメンバーも僕より皆強い。僕はポーターの仕事を精一杯やって、仲間もそれを認めてくれる。僕はそんな一騎当千が大好きだった。


 最近僕の仲間は二人いなくなった。だけど、リーダーのクリスタも他の皆も、怪しいとは思っていても、仲間を疑って調べることはしない。でも僕は調べなくてはならないと思う。だから一人でこっそり調べることにした。

 

 まず初めに、僕が怪しいと思う三人から調べることにした。僕はドラムが襲われた時に一緒にいた三人が怪しいと思っていた。

 何故かと言うと、僕とモーリスはその時一緒にいた。消えたアリアは除くとして、今残っている中で怪しいのはリーダーのクリスタと、魔術師のマーク、シーフのレジーナだ。

 もしかしたら実行犯が別にいたかもしれないけど、あの四人に見つからずにドラムを殺して逃げてくるなんて、そんなことができる人間がいるとはどうしても思えない。


 最初に、一番怪しいと思ったレジーナを尾行した。アリアが消えた日だ。この時からすでに僕は仲間を疑っていて、このまま護衛依頼に向かうのはリスクが高いと思ったのだ。

 一番レジーナが怪しいと思った理由は単純だ。一番レジーナが近くにいたし、一番素早く動けるのもレジーナだからだ。ドラムだって仲間に殺されるとは思っていないだろうし、目の前にいたレジーナには警戒もしていなかっただろう。


 大蛇(サーペント)討伐の後、ギルドで解散した。僕はこっそりレジーナの後を尾行する。レジーナが向かったのは武器屋だった。武器の買い足しかな?さり気なく窓の外から覗いたが、ここでは何も不自然なところはなかった。


 武器屋から出てきたレジーナは酒場へ入っていった。レジーナが一人でテーブル席に座ったので、フードを被って見つからないようにしながら、レジーナから死角になる席に座った。不自然にならないよう、僕も普段あまり飲まない酒を頼んで見張る。


 すると、一人の男が入ってきてレジーナの隣に座った。何かを話しているけど周りの声がうるさくて聞き取れない。あいつが仲間なのかな?いや、なんかそんな距離感じゃないかもしれない⋯。まるで恋人のような距離感だ。レジーナって彼氏いたんだね⋯。

 結局その日は何も怪しところは見つけられずに、パーティハウスまで尾行して帰った。そして次の日にはアリアが消えた。


 昨日ずっとレジーナを尾行していたけどレジーナは何もしていない。少なくともアリアの件には関わって無さそうだ。だがとりあえず、護衛依頼中は感の鋭いモーリスあたりに怪しまれそうなので、普段通りに過ごすことにした。


 護衛依頼から帰ってもアリアは戻っていなかった。もう殺されちゃってるかもしれないな⋯。そう思ったけど、帰った日とその次の日はアリアの捜索に集中した。聞き込みはクリスタと一緒だったから様子は見ていたけど、そんないかにも怪しいことはしないよね。

 聞き込みで分かったのはアリアがパーティハウスの近くで殺されたか意識を失わされたかして、どこかに運ばれた可能性が高いこと。女性でも小柄なレジーナがアリアを運ぶのは簡単ではないだろう。僕の中でレジーナへの疑いは薄くなった。


 その後一週間はマークを尾行した。マークは何故かクリスタを気にしているようで、様子を窺っているのを何度も見た。怪しいような気もするけど、それ以外はいつも通りでなんとも言えない。行った場所も、魔導具店や武器屋、食堂など普段からよく行くようなところにしか行っていない。まだマークを調べるか悩んでいたら、今度はマークが襲撃された。


 マークが襲撃される前にマークはクリスタを気にしていた。もしかして僕がマークを疑っていたみたいに、クリスタのことを疑っていた?もしかしたらそのことに気づかれて襲われたのかもしれない。僕はそう思って、今度はクリスタを調べることにした。


 だけど、何故かクリスタも僕のことを気にしているようでやりにくい。僕はそのことに気づいていないふりをしていつも通りに依頼をこなす。ギルドで解散した後もクリスタが僕を尾行している。もしかして次は僕が狙われてる?怖い⋯。僕じゃクリスタには敵わない。暫くはなるべく誰かといるようにしよう。そうしていたらクリスタの監視もだいぶ緩まってきたみたいだ。


 ほっとしながら部屋で明日の依頼に持っていく荷物を準備する。明日からは久しぶりに泊まりがけの調査依頼で街を離れる。しっかり魔導具の点検をして、ポーションや食べ物の確認もした。念を入れすぎてちょっと遅くなったけど、あとは寝るだけだ。


「よし、寝ますか。」


 一人でそう呟いて部屋を暗くするとベッドに入った。


 目を瞑って暫く経った頃、人の気配で目が覚め、ハッと肘を立てて中途半端に体を起こす。まだ部屋の中は暗いが、目の前まで人が近づいてきた。さすがにこの距離なら見える。


「えっと⋯、なんでいるんですか?」


 そう言うとその人物は、自分の唇の前で人差し指を立てる。


「あなただったんですね⋯。」


 そう言い終えた瞬間、サッと横一閃。サイモンの首から上がベッドの上に転がった。

 犯人は返り血も浴びていないきれいな服のまま部屋から出て行った。



◆◆◆◆◆



「今日サイモンはーまだ起きてないのー?」


「遅いね、久しぶりの泊まりだから昨日遅くまで準備してたのかもね。」


 俺は昨日早くに寝たが、サイモンは準備する物が多いしそういうこともあるだろう。


「ちょっとそろそろ誰か起こしに行ってあげた方がいいんじゃないかしら。」


「俺が行ってくる。」


 そう言ってサイモンの部屋に来た。軽く二回ドアをノックする。


 コンコンッ


「サイモン起きてるか?開けるぞ?」


 そっとドア開けて中を覗くと、ベッドの上が真っ赤だった。


「ヴッ⋯」


 目の前の凄惨な光景と血の臭いで、胃の中から酸っぱいものが上がってきた。俺は眉を顰め固まった。


「どう⋯したの?」


 レジーナに声をかけられて我に返る。


「死んでる⋯⋯⋯⋯サイモンが⋯血塗れで⋯死んでる。」


 皆の方を向くと皆も驚いてポカンとした顔をしている。


「「「⋯⋯⋯⋯⋯。」」」


 俺は一度ドアを閉じた。犯人は俺がサイモンの監視を緩めるのを狙って殺したのか?だとしたら尚更今残っているメンバーが怪しい。俺は三人に向かって疑いの眼差しを向けてしまった。


「そんな目でー見ないでよー。」


「そうよ。クリスタだって怪しいじゃない!」


「ここにいる全員怪しいね。それに、見つかってないアリアが生きてるかもしれないし⋯」


「悪い⋯。」


 さすがにその日からの依頼はキャンセルした。ポーターのサイモンなしでは準備も間に合わない。残りのメンバーは四人。俺が一番怪しいと思っていたサイモンは殺された。誰だ?次は俺が狙われるかもしれない⋯。俺はパーティハウスで寝るのが怖くなって宿をとった。他のメンバーはどうするんだろう?


 ドラムが最初に殺されてから一ヶ月ちょっと、パーティはもうバラバラになっていた。






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