7話 : 『吉良殿、絶対切腹しないで仕返ししてやる!』
【第二章 7話】(メインタイトル:爆走!無音赤兎馬と金庫番のハッキング)※第二章・完
1.ハットリ君登場! 金庫番のソソソ(身辺調査)企画
「吉良と柳沢の、外部の隠し蔵……。ならば、その裏帳簿を握る金庫番たちの身元を、ソソソと洗わねばな」
脇坂邸の奥の間で、浅野内匠頭がギラリと不敵に目を光らせ、次なる経済ハッキング作戦を立ち上げていた。ターゲットは柳沢の金庫番・小栗金満路と、吉良の金庫番・小県 こびとの佑の二人。
「ニンニン。身辺調査なら、服部半蔵の遠い親戚である、このハットリにお任せを……」
その時、天井裏から逆さ吊りでスッと現れたのは、自称・エリート隠密のハットリ君であった。
お掃除班長の尾三次は、柳沢様への絶対の忠誠があるため絶対に寝返らせず(本人は意地でも寝返らないつもりだが、ただサボって大自慢しているだけでデータは全漏れしている)、裏の隠密実務はこのハットリ君が担当する。調べれば埃どころか小判の塵がザクザク出るに違いない二人の身辺調査が、ここに怪しく企画されたのである。
2.爆走無音馬の「オドロケモノデェェェェス!!」と一学の絶望
同じく二月の終わりの、ある嵐の夜。吉良邸の物見櫓の上では、清水一学が「闇の組織(小石一派)」を警戒して、自慢のダンボの耳をピクピクと尖らせていた。
その時であった!
嵐の闇を切り裂き、蹄の音が一切しない「無音走行ナイキ馬」が、赤兎馬並みの猛スピード(時速百キロ)で吉良邸の門前へ突進してきた。門番たちはそのあまりの速さと無音さに「ん? 今、突風が吹いたか?」とポカンとしている。
しかし、耳が良すぎる一学の鼓膜だけは、すれ違いざまに放たれた「音速の残響ボイス」をハッキリと捉えた。
「オドロケモノデェェェェス!!(お届け物で〜す)」
「ひ、ひええええ! 出たァァァ! 闇の組織の突風ボイスだ! おのれランマル君、追え!……って、バカ野郎、重要な密書を持たせて、ランマル軍団ごと上杉(米沢)に出張させたのは拙者だったァァァ! 誰も追えねえぇぇ!」
一学が自分のポカによる頼みの綱の不在にガチ泣きする中、無音馬はクシャクシャの書状をフリスビーのように投げ入れ、風のように去っていった。
3.クシャクシャの正式書状と、意味不明なヒント
「うう、今度は何だ……。仕掛け爆弾か……?」
一学が宿直の面々と共に、腰を抜かしながら門前に駆け寄ると、そこに落ちていたのは、親の仇かというほどにクシャクシャに丸められた、上質な「正式な書状」であった。
一学が涙目で必死にシワを伸ばして読むと、そこには怪しい数式と謎の暗号記号がズラリ。さらに、ご丁寧にその一番下に、以下のような「ヒント」が添えられていた。
『ヒント:玄関の敷居をまたいで、右斜め後ろを振り向くと……?』
「右斜め後ろ……? いや、振り向いても物置の壁しかねえよ! 分からん! ヒントのせいで、さらに意味が分からん! 脳がバグるゥゥゥ!」
一学はクシャクシャの書状を抱えたまま、完全にノイローゼになって white(白目)を剥いた。
それは、ハッキングを完了した浅野側からの「次はそっちの金庫番(小栗・小県)の番だぞ」という挑戦状だったのだが、闇の組織に怯える一学に解けるはずもなかった。
上野介が「おお、尾三次が直した庭のライトアップ、実に見事じゃ、ホホホ」とピュアに美酒に酔いしれる後ろで、一学の絶望の悲鳴が夜空に虚しく響き渡る。
ここに、お庭を巡る騙し合いの「第二章」は、浅野側の完全なる勝利をもって幕を閉じたのでございます。
(第三章へ続く)
【今宵の一句】
無音馬の 声だけ響く 嵐かな
【あっちゅ寝太郎エッセイ】
(吉良殿、お庭のライトアップにうっとりしている場合ではございませんよ。音もなく届いたクシャクシャの暗号に一学が白目を剥いている間に、お前たちの『外部の隠し蔵』を握る小栗金満路と小県こびとの佑の二人の足元に、ハットリ君がソソソと忍び寄っているよ。せいぜい今のうちに、その自慢の庭で美味しいお酒を飲んでおくがいいよ)




