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【オルキ国】ー神に捨てられた魔獣と孤島開拓-ようこそ、ここは魔獣の国。最後の秘境、そして最初の楽園。  作者: 桜良 壽ノ丞
オルキ国の内政

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オルキ国の維持のために

 


挿絵(By みてみん)


 * * * * * * * * *





「わぁ、これが噂のノーザンライツ! どうして空にこんな緑のカーテン模様が現れるの?」


「真っ暗な夜空なのに、光が現れるのはどうして?」


 春になり、オルキ諸島は約80か国との国交樹立を済ませた。


 観光客が急激に増え、真夜中になっても町はずれの高台では人々が空を見上げ歓声を上げる。

 もうじきオーロラ―が見える季節も終わりだ。ただ短く静かな夜もまた、活動的な観光客には喜ばれる。


 シルトンホテルを建設しているのは、人形が10体と国民が10人。決して手抜きはしていないが、人間が建設するスピードと比較すると3倍ほど早い。来月には内装も仕上がるだろう。

 そうすればもう少し観光客の受け入れも楽になる。


 高級な本館と、崖の上に建ち眺めこそいいものの、簡素な部屋に素泊まりの別館。今まで民泊用に開放していた家々も、来月からは移住希望者の住居になる。


 朝になれば観光客が思い思いに集落や山を散策し、景色の写真を撮る。有料の生活体験ツアーも盛況だ。

 午前9時を過ぎた首都に、観光客の笑い声が響く。


「移住希望者は多いけど、家の数も水道や道路も追いつかないな」


「このひと月で移住申請が1000人以上やけんね。あたしらも元は移民やし、移住者に特に何も言える立場にないんやけどさ」


「ソフィアさんの言いたい事、なんとなくわかるっすね。ちょっとオルキ国の雰囲気が変わったっつうか……これは観光客が多くなっただけが原因じゃないと思うんすよ」


「オルキ国に合わせるのではなく、自国での生き方をそのまま持ち込んでいる人がいるせいですね。ちゃんと移住時の決まりは伝えているはずなんですが」


「移住してから、自分の希望通りに変えて欲しいと言い出す人をチラホラ見かけます。月に2度の見張りを拒否する者や、せっかく静かな田舎に引っ越したのだから干渉するなと言い出す者まで」


 ガーミッドが溜息をついてオルキへと視線を向ける。国防を担うガーミッドは、かつて5年間も連合軍に所属していた。有事の際に素人など役に立たない事を良く知っている。

 そのため、一般人であっても自分や大切な誰かを守れるよう訓練を施し、国防意識を高めるため監視塔での見張りも義務として課している。


 だが、数は多くないものの信条により拒否する者、女に兵役を課すのかと喚く者、そういった国の方針に従えない者が現れ始めたのだ。

 特に、オルキ国の助け合いの精神を逆手に取り、仮病で働こうとしない者、仕事をさぼる者も。


 オルキ国の人口は120人。正確に言えば、そのうち60人は在留許可を持った外国人だ。

 人口増加を見越して随分と家やインフラは整えてきたが、まだ100人ちょっとにも関わらず、もう統率が失われつつある。


「一番気になるのが、国際会議前からいる人と、その後から移ってきた人の間に溝が生まれつつあることです。古株だからと偉そうにと……」


 ガーミッドの言葉に、オルキはとうとう我慢が出来なくなった。


「奴らめ、我が国に何を求めて移住したいと申し出たのか! 安全な所ならどこでもいいなどと考えている者は全員追い出す!」


 国際会議でオルキ国が存在感を強めた後、移住希望者が殺到しているのは前述のとおり。しかしオルキ国に賛同し、オルキ国民としての義務を果たす覚悟を持って移住申請する者はごく僅かである事が分かった。


 何かあっても人形とオルキが何とかしてくれるから安心だ、何か面倒な事は人形がやってくれるらしい、そんな誤った認識の人間が増えても、オルキの力は回復しない。

 オルキの眷属になる覚悟がなく、またオルキが自らの身を犠牲にしてでも守りたいと思える人間ではないのだ。


 ゴミを落とすな、落としたら必ず拾えと忠告し、承諾して入国したにもかかわらず、そのままにして通報された者はこの1か月だけで7人。

 通報されなかったが、ソフィアの透視や入国時の指紋との照合で出国時に捕まった者は20人に及ぶ。


 皆が口を揃え、そこまで厳しいと思わなかったなどと言い訳したが、全員がきっちり罰を受け、罰金を科された後に国外通報からの再入国禁止。


「入国時の誓約書に書かれている事は、どんな事情があろうと死守しなければならない。守れない事態になったら直ちに申し出る事。何が難しいというのか」


「俺達もそう思うんだけどなあ。落とし物は可能性あるとして、飲料缶や弁当のゴミは捨ててるとしか言えねんだよ」


「実際に磔の刑になっている人がいるタイミングで入国した人達は、結構守ってくれるんだけどね」


「イングスが虎視眈々と展示用のヒトを狙ってるからな」


 イングスが園長を務める国立動物園の展示は、羊、馬、ウサギ、野ネズミ、その他小川で見つけたサンショウウオ、それとヒトが5匹。


 元からいた2匹と、ガーデ・オースタンで捕獲した1匹、残りは島内で窃盗を働いた個体だ。

 その窃盗犯の展示を始めた頃から、オルキ国には時折人権活動家を名乗る者も上陸するようになった。


『人間を展示するなんて、非人道的で惨い事をしてはいけません! ただちに解放しなさい!』


『僕が君の命令を聞くべきかどうかは、オルキが決めるよ』


『国の方針がどうであろうと、これは許されない行為なのです! すぐにこの人々を解放しなさい! 人権侵害です!』


『人権があるのは人間だけだよ』


『その通り、人間には人権があるのです! このような扱いを……』


『これは人間じゃないよ、ヒトだよ』


『人間と表現しようが人と表現しようが関係ありません! 公衆に晒され人権を蔑ろに……」


『だから、これは人間じゃないよ。人間じゃないから人権はないでしょ』


 例えばイングスと活動団体がこのようなやり取りをする場面も何度かあった。面倒な事に、この手の活動家は自分達の考えを変える事が得意ではない。

 自分達は正しく、相手が変わるべきだと考えている。ただ、イングスが根負けする事は決してない。


『人間だった頃はあったけれど、オルキ国の法律で人権は剝奪したからもう人間じゃないよ。畜生のオス個体』


『どう理屈を並べても人間として生まれたなら人権を有しているのよ! あなたこそ人権を奪われてこのような目に遭ってもいいの!?』


『僕は人間ではないし、未だかつて一度も生まれた事がないから人権は持ち合わせていないよ』


『何を言っているの、どこからどう見たってあなたは人間でしょう! まあ、あなたも人権を奪われ、こうして世話をするように強いられているのね』


『見た目が人間だから人間とは限らないよ。このヒト達も見た目は人間だけれど中身は人間に相応しくないから人間じゃない』


『訳の分からない事を言わないで! 人権侵害を国際機関に訴えます! こんな野蛮で非人道的な後進国が存在するなんて認められない!』


『最低なならず者国家じゃないか! 人の心を持たない民度の低い未熟な人間が好む危険な島だ! この事実をもっと世界中に知らせるべきだ!』


『人権を守らなくちゃいけないのは、人間の掟だよね』


『当たり前でしょう!? 人間は平等に権利を持ち、人間同士で尊重し合い、何人たりとも侵害してはなりません!』


 活動家達の額には青筋が立ち、平和主義者とは思えないような攻撃的で侮辱的な言葉を吐き捨てる。これがイングスでなくケヴィンやアドバンだったら乱闘騒ぎになっていた。


『オルキは魔獣だから人間の掟は関係ないよ』


『人間の権利は魔獣だろうが何だろうが守らなければならない!』


『白クマは人間の権利を尊重するかい。狼は人間の権利を尊重するのかい。クサリヘビは人間の権利を尊重するのかい。ボツリヌス菌は人間の権利を尊重するのかい』


『そんな屁理屈のような』


『君が言ったんだよ、人間同士で尊重し合うって。君はオルキや僕に、人間の主張を強引に押し付けている。オルキにとっては君達がならず者だよ。オルキは悪人を食べたいのに、食べずに我慢しているよ。おりこうなのに君達はどうして悪人の味方になるのかい』


『悪なのはどっちだか!』


『犯罪者の味方は犯罪者。君達は人間の権利を守れとギャロンやジョエルに言わず、どうしてオルキ国にだけ言うのかな。人間同士で尊重し合うものは魔獣や人形には関係ない』


 この活動家達は結局、オルキが人間ではない点をどうしても覆す事が出来ず、諦めた。

 オルキ国刑法「国の秩序を乱す行為は、はりつけの刑、もしくは死刑とする。はりつけの期間は裁判で決める」に該当する事を告げられて降参し、新設の罰金刑で済んだ後、再入国禁止に。


 このような、国家同士ではない問題が急浮上。

 オルキも元からいる50名ちょっとの国民も、新たにやって来る者達との意識の差に頭を悩ませていた。

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