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【オルキ国】ー神に捨てられた人形と魔獣の孤島開拓-  作者: 桜良 壽ノ丞
国際会議

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世界一圧が強い極小国家

 


  突如として出現したオルキ国のせいで、連合軍の思惑は何もかも潰されてしまった。

 世界一の人口を有する軍事大国と、その隣にある世界有数の経済大国が、建国3年に満たない人口数十人で経済指標最下位の国に完敗。


 これでこのまま引き下がっては大国の名が廃る。

 ここでギャロンではなくジョエルの代表が手を上げ、自席のマイクを持ちジョガル語訛りで話し始めた。


「我が国は許可制に反対いたします。オルキ国には確かに我が軍が攻め入った過去があります。勿論我々は正当性を主張できますが、オルキ国にも言い分はあるでしょう」


 ジョエル代表は自分達の姿勢を崩さず、オルキ達の気持ちを察してもいるとメッセージを送る。


「ただ、オルキ国やその他の許可制支持の国々は、弱い立場にある国にとって脅威でしかありません。脅威となるものを排除すべきなのは当然です。異議を唱える方がおかしいでしょう」


 ここでオルキが律儀に手を上げたが、司会者から見えたかは分からない。オルキはジョエル代表への反論を話し始めた。


「図々しくも他国に攻め入り攻撃を仕掛け、他国の船の往来をも封鎖するならず者国家が言えた立場か。貴様らが自らを脅威と認識できぬなら、他国を脅威と認識する能力もなかろう」


「なっ……」


「戦争を引き起こし武力で他国を脅し、土地を奪って国王の拉致までやってのけた畜生共が偉そうにと言っておるが、理解は出来るか」


「この……このよ、ような脅しを仕掛けてくるから、脅威だと」


「貴様の国は脅威ではないのか」


「い、今は貴国が」


「貴様の国は脅威ではないのか。貴様の国では他者を殺し家を奪い家族を連れ去る行為は脅威ではない、その認識で間違いないな」


「き、貴国の話をし、しているのであって、我が国がどうかは関係……」


 ジョエルの代表が怯えているのは、オルキがトラ程の大きさになったからだ。もっと大きくなれるが、消耗は激しくなる。この程度で十分効果はあったようだ。


「貴様らのやっている事が脅威にならないなら、吾輩の行為も貴様らの言うところの脅威ではない。よって、我が国は脅威と言われる筋合いがない。以上だ、分かったらさっさと座れ」


 ジョエル代表は言いたい事の半分も言えていない。すぐ近くの席にいたギャロン代表が手を上げ、ゆっくりと立ち上がった。

 オルキ国に何を言われるかは分かりきっている。ギャロンはオルキ国にとって敵だ。ギャロン代表は澄ました顔をしているものの、マイクを持つ手は大きく震えていた。


「許可制となれば、きょ……許可の条件もあるはずだ。その許可条件についてはどう考えている。仮に我が国が気に入らない国を不許可にし、もしくは許可に100万ダールの費用を求めてもいいとお考えか」


「今までの許可制で問題ないだろう。国交がない場合は各国が自由に決めておると聞くが」


「では、我が国が貴国に100万ダールを払わなければ通行させないと言っても良いか。貴国はそれでもいいとして、他国はどうだろうか。通らなければ外洋に出られない国は存在するが」


 ギャロン代表はジョエル代表よりも幾分現実的な話を始めた。ごく少数だが、確かに湾の奥に国があり、海峡付近は他国の領海という国も存在する。その国々にとっては死活問題だ。

 それについても、オルキは特に言い淀むことなく反論する。こう見えてオルキなりに人間の法は学んできたのだ。

 1度目を通せば忘れないイングスという生き物デナシ字引きがあるのも強い。


「ならば海洋封鎖を禁止する方向に動くべきではないか。自国の海を通ると宣言すれば誰でも通れて、その隙に魚でもなんでもゴッソリ浚って行ける方が問題だからな」


「あ、あのー、陸路だって同じだと思います。人道的安全回廊を確保する義務があり、海上でも安全輸送回廊は設ける事となっています。どうしても通らなければならない海域は、そもそも私道のように封鎖が禁止されています」


「それは安全保障条約の話であり、領海内の航行に関する条約は別である!」


「いいえ、領海内の航行に関する条約は、安全保障条約に付随するものとして採択されたものです」


 オルキ国にはこれまた優秀な外務大臣がいる。

 アリヤが堂々と手を上げて発言を始めたなら、各国が期待の眼差しで見つめている。アリヤもまた、今回の会議には並みならぬ意欲を持って臨んでいた。


「第16条、領海に関する権利の第2項、他国の孤立を生む海域についての制限事項を設ける。他の迂回ルートがない国家に対する海上封鎖行為を禁止する。第56条、紛争に関する例外規定の第4項、他国への侵攻および航行する船舶人員に危害を加える目的での侵入は認めない。第5項、武力によって他国を排除してはいけない。紛争解決法第2章2項……」


 アリヤはギャロンの主張を真っ向から否定するため、他の条文や国際法を持ち出しながら、一切の反論が出来なくなるまで言い切った。


「……の場合に関してはこの限りではない。海上輸送船に関する安全基準についての附則第7条、武器弾薬の輸送は通行を要する領海の所有国ならびに領海に隣接する領海を持つ他国全ての承認を得なければならない。歴史遺産保護法第9条……」


「……」


「……海洋資源法第23条、航行船舶基準を満たす船舶の仕様上やむをえない損害については、補償を求めない。第23条2項、但し環境保護法に規定される自然保護すべき地形および生物の生息地については、船舶の仕様について一定の制限を設ける事が出来る。以上の国際法および条約と照らし合わせ、ギャロン帝国側の主張には正当性がない事を指摘いたします」


 法律、条約合わせて30程の条文を言い切った後、各国が明らかに動揺していると分かった。各国それぞれに国際法の識者がおり、代表らも法律を知らないわけではない。

 それでもここまで多くの法律の事細かな条文まで持ち出して反論できる者はこれまでいなかった。


 ……いや、実際はやろうとすれば出来たものを、いままでやってこなかったのだ。

 この世界は20年以上もの間、戦争という大きな課題があるせいで、本題に関しての議論を疎かにしていた。


 連合国側はいざとなれば法律を調べる時間が欲しい等の時間稼ぎをし、議論を次回へ持ち越したかったのだが、アリヤが先回りして全て封じてしまった。


「一応、言っておきましょうか。ここにいるオルキ国代表のイングス・クラクスヴィークですが、ジョエルからフェイン国王を救出した時に来ていた服がこちらです」


 フューサーがボロボロになった青い布切れを掲げた。それはフェイン国王救出の際、イングスが着ていた青い長袖の服だった。銃弾の痕が焦げ、生地は半分以上吹き飛ばされている。


「国にはまだ、ギャロン軍の砲撃で負傷し、傷が癒えていない国民もいる。建物は再建したけど抉れた地面はそのままだ。脅威だ何だと言う奴に限って、自分達が攻撃的で人の心持ってないの、何でですか」


 ケヴィンが砲撃を喰らった際の写真を周囲の席に配れば、各国が口元を押さえ絶句した。これでも戦禍に見舞われた都市よりはマシなのだが、実害のなかった中立国にはよく刺さった。


 そうしてギャロンの代表も何も言えず座った所で、メインランドやアイザスの代表と目が合った。

 イングスが綺麗な挙手と共に立ち上がり、申請制を支持する国々へのトドメに入る。


「君達人間の法律は君達が決めたものだよね。不都合だから変えたいって話じゃないのかい。守るつもりもなく守ってもいない者には最初から不都合なんかないでしょ」


「文句を言えるのは、きちんと守りながら訴えている国だけだよ」


 人形とはいえ、イングスの見た目は若者。

 若者に正論で黙らされたなら、もうそれ以上抗うだけ惨めなだけだ。


「議長、君はきちんと守っていない国の主張を認めるのかい」


≪い、いえ……≫


「じゃあきちんと守っている国から許可制反対の主張を聞いて。いなければこのまま採決でなにか問題はあるのかい」


≪いえ……≫


「何か反対の意見はあるかい。きちんと守っていないのに文句を言うならそれなりの覚悟をしているよね」


 穏やかなイングスの声が、違反を繰り返してきた国々の耳に突き刺さる。沈黙が流れた後、イングスに凝視された議長が耐え兼ねてとうとう採決を始めた。


≪許可制を申請制に変更するべきとする国の代表は、ご起立下さい≫


 立ち上がったのは僅か7か国。


≪……賛成7か国、よって議案は否決されました≫

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