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【オルキ国】ー神に捨てられた人形と魔獣の孤島開拓-  作者: 桜良 壽ノ丞
国際会議

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オルキ国を支持する声

 


 急にオルキ国批判を始めたエリカ・ワトソンに、オルキ国の者達は眉を顰める。オルキには眉がないので目を細め、イングスは者ではないため表情は変わらずだ。


「我々ベルゴン海を臨む国々は皆、他国を威圧するような態度を続けるオルキ国に恐怖を感じているのです!」


 条約そのものの是非ではなく、オルキ国が怖いから権力を持たせるな、領海を好き勝手にさせるな。そのような国の特権を排除せよと繰り返すエリカに、各国からブーイングが上がった。


「うるさいわね、オルキ国のような国に権力を持たせたなら、航海の安全を保障して上げられないでしょう!」


 エリカはブーイングを受けて更にヒートアップ。

 条約についてオルキ国側から特に意見をするつもりはなかったものの、名指しで批判されたなら反論の権利くらいはあるだろう。

 だが、オルキが前足を上げ反論を述べようとするも、司会者からは見えない。ただ前足を上げたポーズが可愛いだけ。


 代わりにイングスが大声で「はい」と言って手を上げ、エリカの話は強制的に中断された。


「エリカ・ワトソンはとてもうるさいね」


「なんですって」


「エリカ・ワトソンは喚いているという意味だよ」


 イングスの唐突な口撃に、エリカは咄嗟の反論が出て来ない。


「エリカ・ワトソンはオルキ国への文句を言いたいのかい。僕はエリカ・ワトソンのように他国を悪く言って自分の意見を通そうとする人間の国は危ないと判断するけれど」


「な、なんて口のきき方……野蛮な国の者は随分と無礼なようね!」


「僕は聞いていないよ、喋っているんだから。聞き方が必要なのはエリカ・ワトソンだね。今この場でエリカ・ワトソンに礼が備わっているのかい」


 イングスはとても穏やかにモリガン共和国の代表を煽り返す。

 いつもと変わらない柔らかな表情と今にも笑いを零しそうな口調。けれどケヴィンとフューサーは、イングスが怒りを表している事を理解していた。


 いつか、ソフィアが「フルネーム呼びはやめて」と言った事がある。ソフィアはその後、イングスに相手をフルネームで呼ぶ時は、真剣な怒りを伝える時だと教えた。


 イングスは紹介された名前を繰り返すためフルネームで相手を呼ぶことがある。それ以外で相手をフルネームで呼ぶ時は、だいたい相手が悪人である事が多い。


 要するに、イングスなりにエリカに対し「僕は怒っている」と伝えているつもりなのだ。

 オルキはそんなイングスの肩に乗り、エリカへの質問を開始した。


「モリガン共和国の人間よ、貴様が言う皆とは具体的にどこだ」


「どこって、そんなの大勢いるんだからどこでも良いでしょう」


「どこでも良い? 貴様のような品のない国なのか、そうでないのか、内訳は非常に重要だ」


「ひ、品がないですって」


「その通りであろう。貴様自分の様子を一度確かめる機会を設けた方が良いぞ。品も知性も礼節も今更身に付く事など期待しておらぬが、何も持ち合わせていない自覚くらいは芽生えるだろう」


 オルキもイングスも、これを言ったら相手が怒ると分かる言葉を躊躇わずに使う。人間よりも容赦がなく、相手がこちらに敬意を払わないなら、わざわざこちらから人権や体面を守ってやる義理はないからだ。


「それで、貴様の言う皆とはどこだ。ベルゴン海を臨む国と言うならアイザス、ギタンギュ、東ユラン、レノン、メインランド、シェルランド、フェアアイル、ベルグ、エスティア、ゴレイ、具体的にどこだ」


「た、例えば、ゴレイなどでは」


「など? 他には」


「他は、他には……」


「どうせゴレイだけを指しておるのだろう。括りを大きく設け、さも大勢が非難しているかのように偽装するその浅ましさが恥ずかしくないのか。貴様の言う皆とは、ベルゴン海に面する国々の大多数ではないのだな」


「……」


「大多数ではないのだな」


 エリカは冷静なオルキの反応に言い返せず、しばらく悔しそうに睨んでいた。オルキ国を危険分子として周知させるつもりだったが、世界との接点が殆どなかったはずのオルキ国には、一切の動揺が見られない。


 それどころか、このままではモリガンこそがただのノイジーマジョリティ。気に入らないものを排除するため、勝手に他国を巻き込もうとした迷惑な国になってしまう。


「威圧的な態度は事実です! 事実を指摘して何が悪いのですか? 恐ろしい刑罰、報復として戦艦を沈め、捕虜にしたり! 先程の演説の場も非常に威圧的でした!」


「はー、おいこの場にいる代表らよ。こんなにも愚かで無様で仕様もない畜生でも国家の代表を名乗れるものなのか」


 オルキの呆れたような声と発言に、その場の空気が凍り付いた。この魔獣は今、人間全体を愚かだと判断しつつある。

 魔獣にとって愚かな存在、それが人間全体への評価に及ぶのではないかと、心臓が縮み上がっている事だろう。


「おい、貴様はなぜそれをゴレイ、ジョエル、ギャロン、ノウェイコーストらに言わぬか。他国を攻め、砲弾を喰らいたくなければ降伏しろと迫る連合軍に言うべきではないか。威圧? 我が国は物理的に攻め込まれたが、貴様は非難の1つもせぬようだ」


「あなた達が威圧的な態度で世界を脅かしているのは変わらない! そこを認めるべきです!」


「世界? 先程はベルゴン海を臨む国の話をし、結果ゴレイだけだったというのに今度は世界か。フン、馬鹿ほど主語を大きくするというのは本当なのだな」


「ば、馬鹿などと……皆さん、聞きましたか!? 王ともあろう人物が、か弱き1人の女性に暴言を吐きました! こんな国が平和的外交を行えると思いますか!」


「か弱い女性は喧嘩仕掛けて吠えたりしないよ。吠えるのは畜生の証、畜生は逞しいものだ」


 イングスが穏やかに煽る。


「馬鹿な事を言っているのは事実であろう。事実を指摘して何が悪いのか、問うたのは貴様だぞ。自分は良いが、相手には認めない。そんな横暴な性悪が平和を語るな」


 オルキは努めて冷静に応対しているが、内心はそろそろエリカを喰い殺そうかと考えていた。

 初めての国際会議の場であり、殆どの国はオルキ国の詳細を知らない。

 賢王として人間からの印象を良くするつもりでいたが、理屈の通らない主張はオルキが特に嫌うもの。


 オルキ国を良く知る国々は、モリガンの官房長官を自席に呼びつけて止めさせろと助言している。


「オルキ国は戦艦を沈め、自国のものにし、強国であるかのように振舞っています。いずれ軍国主義を進め戦争をする国になるつもりなのです」


「現在進行形で戦争をしている国に言わぬか、愚か者め。ないものをあったと証言するのは余程の嘘つきか、それとも痴呆だろうか」


「ほら、こんな個人攻撃まで……何の統治実績もない勝手な領土宣言を行っただけの野蛮なオルキ国の権利を制限し、大国の統治下で……」


「君はオルキ国を攻撃しているんだね」


「……な? 私は攻撃しているわけでなく、オルキ国の恐ろしさを説明……」


「君はオルキ国を攻撃しているんだよ。僕はオルキ国を攻撃したジョエル連邦とギャロン帝国と、エリカ・ワトソンを許さない」


 イングスの穏やかで有無を言わせない物言いに、エリカはたまらず口を閉じる。さすがの愚か者も、イングスが明らかに怒っていると分かったのだろう。


「あのー。威圧的だとか、そうするに違いないとか、個人の感想や憶測で他国を批判するべきじゃないと思いますけれどもね。我が国は許可制の維持を支持します」


 アイザスの大統領、ドイルが司会の席に歩み寄り、勝手にマイクを奪い取った。その後に続いたのは経済大国セイスフランナの国王。


「我が国も許可制の維持を支持する! オルキ国の代表席に座っているのは、私のかけがえのない娘なのだが……モリガンのあなたは、私の可愛い娘の事を野蛮な国の無礼な者だと言っているのかね。ん?」


 北の海の重要な基幹港を有するアイザスに、技術力と経済力で世界を圧倒するセイスフランナ。

敵に回して良い事など1つもない国々の応援により、もう勝負はついたようなものだ。


 おそらくモリガンは会議時間を伸ばし、散会としたかったのだろう。結果、過激にやり過ぎて自分が傷ついてしまった。

 見ればギャロンやジョエルの代表陣はコソコソと集まって何かを打ち合わせている。

 別の手を考えているのか、それとも作戦に失敗したモリガンの今後の処遇を考えているのか。


「心配には及ばぬぞ、我が国に好意的な他国を拒むつもりはない。我が国に実害を与えたギャロン、ジョエル、それに我が国を侮辱したモリガン、この国々の船に許可を出す事はないし、排他的経済水域内に入ってきたら必ず沈めると誓おう。フン、どうだ、こんなに安全な海域が他にあるだろうか」

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