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【オルキ国】ー神に捨てられた人形と魔獣の孤島開拓-  作者: 桜良 壽ノ丞
国際会議

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国際会議での再会

 



 * * * * * * * * *





「全然知らなかったつうか、すぐに連絡くれよ! 大事件じゃないか」


「悪い悪い。ガーデ・オースタンとの事前協議をしてる最中に命狙われたなんて話出したら、纏まるもんも纏まらないって思ってさ」


「そりゃ、刺客が来る可能性の話はしてたけどさ。本当に来たってなら教えてくれても良かっただろ」


「騒動の最中には連絡できる状況じゃなかったようですし、私もたまたま正面側の部屋で騒動に気付けただけで。中庭側の部屋だったらぐっすり寝ていたと思います」


 トリスとの打ち合わせが終わる頃、ガーデ・オースタンとの事前協議に向かっていたフューサーが戻って来た。フューサーは昨晩の事件の間ずっと徹夜で話をまとめており、騒動に気付いていなかったらしい。


 今朝も早くに向かった事から、ブルーンの行動はガーデ・オースタンとの打ち合わせの場で聞かされたという。


「んで、フューサーの方は順調だったのか? ガーデ・オースタンはオルキ国の事を支持してくれそうか」


「元々和平国側ってのもあるし、国王補佐官でありながら農政大臣と国土大臣を兼任しているって肩書もあって信用はしてくれた。レノンの紹介状もあったしな。一般人の身分じゃ官房長官への連絡も取り継いで貰えなかっただろう」


「ガーデ・オースタンは海域問題の件で許可制を貫きたいとの事だった。その上で、域内交通に関する手続きを簡単にするため、幾つかの協定を結んだ国同士であれば申請だけで通行できる仕組みが欲しいと」


「毎回許可を取っていたら時間も掛かりますし、許可を出す側も労力が必要ですからね」


「許可制、申請制、どちらも持ち時間は1時間だ。その後過半数になった方が追加で意見を述べることが出来て、採決で3分の2を取れたら許可制のままになる」


「まずは過半数を目指さないと、申請制への変更に有利な展開になっちゃうんですね」


 ガーデ・オースタンとはまだ国交樹立に関する話が進んでいない。接触を試みたのも今回が初めてだ。

 同国出身のフューサーならと送り出したが、ガーデ・オースタン側はまだオルキ国との交流には慎重な姿勢だった。


「オルキ国の実績は知ってたよ。だけど味方にするにもなるにも、信頼を勝ち取るための何かをしないと。それはお互い様だろうって」


「それはそうだな。我々にとっても、ガーデ・オースタンは味方とするべき存在か見定める必要がある」


 フューサーからの報告を受けているうちに10時30分となり、レノンの政務官がホテルまで迎えに来た。

 機械駆動車での出迎えであったが、乗って来たその車ではなく、一行はホテルが用意した別の専用車に乗り込む。


「爆弾などが仕掛けられている可能性がありますから。ホテルの車を使わせて頂きます」


「暗殺計画が終わったとは言い切れぬのだな。ズィースは引き続き警備に付けさせるとして、イングスは機械駆動車と共に並走し、狙撃から車を守れ」


「はーい」


 黒塗りの機械駆動車がホテルを出発し、すぐ横をイングスが並走する。

 時速は40km程度でも、普通の人間は革靴のまま、その速度を保ち2kmも3kmも走れない。その様子に街の者達が大騒ぎするも、今は説明する時間がない。


 直線の大通りを進んでいき、車は開けた3車線同士の交差点の信号で停車した。


「この速度で周囲への警戒を怠らず並走できるのですか」


「ただ走るだけであれば、この倍の速度でも付いてくるのではないか。全速力を試させた事はないが」


「オルキ国の港から首都までは4kmちょっとくらい離れているんですが、それでもイングスは往復10分で用事を済ませて戻ってきますよ」


「今後島内電話の導入も予定していますから、イングスくんはちょっと暇になっちゃうかもしれません」


 イングスに対する驚きと感心で車内に和やかな雰囲気が漂う。その時ふいに車両の屋根に鋭い金属音が響いた。


「何だ!?」


 皆が思わず頭を押さえて伏せた。

 オルキは音に反応しただけですぐに周囲を見渡す。何の音なのかを予測した時、まず頭を上げたのはケヴィンだった。


「イングス!」


 外にいたイングスが手で何かを摘まんでいる。日差しの中で銀色に光るもの、それは銃弾だった。

 どこからか狙撃され、そのうち車に命中しそうな1発をイングスが阻んだのだ。

 車の屋根で鳴った金属音は、狙いが少し外れたか、もしくはイングスが軌道を変えさせた銃弾だった。


「今、何かそこ当たったよな!?」


「なんかコインが落ちたような落としたよね」


 外では何が起こったのか分からない民衆が不思議そうに周囲を見渡すのみ。他の車や通行人がいるにもかかわらず、犯人は白昼堂々と射殺を目論んだのだ。


「やっぱり狙撃されてる!」


「い、イングスさん大丈夫ですか!?」


「まずい、イングスの肩、穴が開いてる! 貫通してるぞ」


「おのれ……」


「イングス、大丈夫か!」


≪うん≫


 フューサの呼びかけに対し、車の窓越しに返事が聞こえた。特に慌てている様子はないが、いつもの穏やかな口調ではない。イングスなりに警戒をしている事が分かる。


「うんって、肩に穴……え、どこ行った!?」


 信号が進行可を示し、車はそのまま直進していく。だがイングスはどこかへと視線を向けた後、瞬間移動のようにあっという間に見えなくなってしまった。


「イングスはどこに行った!?」


「今はこの場から離れることを優先に! 運転手さん、信号にはあと幾つかかりそうですか!」


「あ、あ、あああと3つ、3つですが順調に行けばギリギリ信号に掛からず敷地に入れるかと」


「車線を変更しながらなるべく早く!」


 制限時速は60km。車はそのギリギリの速度で直進し、車線変更で他の車を追い越したり先に行かせたりを繰り返しながら会場へと向かう。


 最後の信号を警告を示す表示が出るギリギリで通過した車は、そのまま突き当りの大きな門の中へ入り、守衛門の陰で停車した。


「入門許可……」


「レノンの政務官、セイラ・マルスクです! これが参加者証、身分証! こっちは招待のオルキ国の方々! こ、ここに来る際に狙撃された、すぐに建物に入りたい!」


 レノンの政務官が事情を話すと、すぐに車を発進させて会場前に乗り付けるよう指示された。オルキ国の入場チェックはそこで行われるという。


「周囲を警戒しております。冷静に、急いでお入りください」


 武装した警備兵に守られながら、一行は宮殿のような重厚な造りの会場へ入った。

 オルキ国の手続きを済ませ、安全のため別室ではなく、紛糾している会場の最後列へとそっと案内され、気配を経って待機する事となった。


 レノンの政務官セイラは自国の代表の席へと戻っていく。狙撃された事はすぐに報告され、今後の対応について協議がある事だろう。


「イングスは大丈夫かな」


「どうして車の傍を離れたのでしょうか」


 ひとまず身の安全は確保された。けれどオルキ国代表の心配はこれからの会議ではなくいなくなったイングスの事ばかりだった。





 * * * * * * * * *





「関税会議の制限時間が来てしまいました。議題は後半へと持ち越されます」


 30分程時間が経ち、会場内に無機質なアナウンスが流れた。


 大声で怒鳴る者、呆れた様子で椅子にもたれかかる者、すぐに席を立ってどこかに行こうとする者、隣の席同士で話し込む者。行動は人それぞれだが、関税についての議題も纏まらなかったようだ。


「あらあ! アリヤちゃん、いぎなり会いだがったんだっちゃ」


「ドイル大統領! お久しぶりです」


「オルキ王、ご機嫌麗しゅう」


「うむ、アイザスもドイル殿も調子が良いようだ」


「はい、お陰様で有難うござりす。……んまあアリヤちゃん、がおった顔してなじょしたの、国さ順調だすぺ? ガーデ・オースタンは遠ぐて疲れとんのしゃ? のっつぉばりこぐ時間もねぐて今朝寄ったんだどもからもどりになって……」


「すみません、午前中はシルトンホテル様と打ち合わせがあったものですから」


「……何て言ってんのか全然分かんねえ」


「吾輩もだ。イングスがおれば通訳させるのだが」


 ドイルはアリヤと満面の笑みで会話をしている。まるで仲の良い親戚のようだ。そのすぐ背後には、見知らぬ男の姿があった。


「アリヤ……」


「お父様」


「あら、私ったら横入りしちゃって。ごめんなさいね、アリヤちゃん、またね!」


 ドイル大統領が笑顔で手を振り、自席へと戻っていく。


 白いゴトラを着た男は厳しい顔のままアリヤの前に立ち、フューサーと同じくらいに高い背からアリヤを見下ろしていた。


 アリヤの父であり、経済大国セイスフランナの国王を務める、世界でも屈指の賢王とも名君とも呼ばれる男。

 彫りが深く厳しい目つきとその体躯。雰囲気はドイルのような親しみやすさとは正反対のように思われた。


「お久しぶりです、お父様。お元気そうで……」


「アリヤ……んも~~~! パパ心配してたんだからな! アリヤが出席すると聞いて無理矢理大臣を押しのけて出席したんだ。ほらすぐパパのほっぺにキスしなさい!」


 厳つい顔に地を這うような低い声。だがそこから紡ぎ出された言葉はおよそ似つかわしくないものだった。


「えっ、セイスフランナの王様、こんな人……なんだっけ」

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