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魔王に巻き込まれた大賢者、今世こそ隠遁生活を送りたい(願望)  作者: 白ゐ眠子
第五章・転生した大賢者は伝えたい。

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第88話 元大賢者は、襲い来る者達に困惑す。(中)


 それから暫くの間は〈人亜連合〉に問い合わせをしたり、どういう作戦で撃退するかを話し合った。

 出来るなら血生臭い行動にならない方が良いけど相手の出方もあるから対応には苦慮すると思うんだよね?

 だから、たちまちは結界内の様子を監視しつつ状況が変化した折に内部に突入するという方針で話が決まったの。

 そして今は監視中の私を除く全員が寛いで戦いの前の鋭気を養う状態にあるのだ。

 という事で私は結界内に意識を移すよ。

 ここから先は監視を視野で見て実況します『メタな事を』!?


「何だここは、何もない真っ白な空間だと?」

「探査魔術を飛ばしても反応無しですね」

「一体どういう事なのだ? 外からの指令はどうなっておる?」

「それも届かずです。一切を隔離された状態にあるようです」


 そこでは一時的に気絶した懲罰部隊の面々が目覚めて狼狽していた。その結界空間は亜空間だから簡単には食い破れないよ? 唯一私が許可を与えた者だけが出入り出来る結界だから。

 すると内部の指揮官が業を煮やし物騒な言葉を口走る。


「ええい! こんなもの〈極大始原魔術〉で消し飛ばしてくれよう!」

「止めて下さい! どのような反応が起きるか判らない空間ですよ!?」


 副官から注意されるも指揮官は平然と、


「構うか! グラヴィティ・アブソーブ!」


 〈極大始原魔術〉を無詠唱で発動した。


(人間には出来ない芸当だね、これ?)


 これは嘗てのヨハネスが無詠唱で発動した魔術と同系統なんだけど、人間が行使しようものなら何十節の詠唱呪文が必要になるのだ。魔力も膨大になるし、魔力品質も最高位が必要だ。

 但し、亜人や魔人・魔族は無詠唱で行使が可能だけどね。人間には扱えない魔術だから。

 それが何故か彼らには使えている不思議?


「やったか!?」

「バカなんですか!? そんなことすれば、兵達が吸われ… ていない?」

「消えただと!? そんなバカな!」

「影響が出ない? 重力操作術でも、干渉出来ない空間なんて反則ですよ!」


 そう〈極大始原魔術〉を行使したが、それ自体が空間隔離されたため、対象未確定の状態で消え去ったのだった。


(何もないところに打ち出せば、そうなるのは必定でしょう? バカなの? この指揮官?)


 副官の方が割と賢いかもね?


「クソッ! 大体〈工魔会〉の連中は何を思ってこんな指示を出したんだ!」

「知りませんよ。ただ全てを壊してこいとだけ指示が出たのです。殺戮は反発した者だけという指定付きで」

「では何だ? あの外側に張り巡らせた結界も対象だって言いたいのか? あの強度は異常だろう? どれだけ削ろうが〈極大始原魔術〉を使わない限り、削れないというのは頭がオカシイだろう? そのうえ調べた限りで同じ物が残り九十八もあるのだぞ?」

「知りませんよ! それは張ってる術者に言って下さい!」


 それは褒め言葉として受け取っておくよ。


(というか〈工魔会〉ねぇ? という事は魔導学園の大元締めである〈ノタルジア工魔会〉が指示を出したと?)


 なら、改善に動いたゴライアスが解任されたのは何がため? 改善されると困るから?


「まぁいい。どうせこの手の術をずっと張れはしないだろう? 所詮は人間の行う事だ」

「そうですね。強度と精度が高いですし、魔力量が多かろうが長持ちしないでしょうね」


 残念ながらそれは無い!

 指揮官といい副官といい人間を甘く見過ぎでしょう? というか人間という言葉を使うという事は亜人かな? 装備品のせいで誰か判らないから何とも言えないけど。

 すると空間内で少しだけ動きがあった。


「失礼します!」

「どうしたのだ? ガイオス?」

「いえ、この結界に見覚えが御座いまして」

「申してみろ」

「何時ぞやのスタンピードの際に同じ結界を張られた事がありまして何とか綻びを見つけて自滅覚悟の〈極大始原魔術〉で脱出したのです」


 スタンピードの話が出たけどどういう事?

 そういえば名前に聞き覚えがあるような?


「綻びか! でかした! 総員通達! この空間の綻びを早急に見つけよ!」

「「「は!」」」


 今度は結界の綻びを探すという。

 スタンピードの時は確か魔人を相手に討伐後の疲れ気味な中で行使したから綻びが出来ていたんだよね? でも今回は万全な状態で行使してるから綻びという物は、無い、よ?


(ん? 魔人? 確か、魔人の名前が、同じガイオスだったよね?)


 私は一先ず監視から意識を外に戻し知っている筈の者へと問うてみた。


「ヨハネス、質問?」

「どうしたのだ?」

「ガイオスって知ってる?」

「ガイオス?」

「ガイオス!? まさか、彼奴だというのか?」

 

 しかし、ヨハネスは知らなかったようできょとんとしたが、何故かレイズ殿だけが反応したのである。だからヨハネスも怪訝(けげん)となりつつレイズ殿に問う。


「レイズ? お主知っておるのか?」

「ええ。存じております。何度か本国で相対していた魔人に御座います」


 なるほど。

 宗主国内で暗躍していた魔人だったか。


(となると懲罰部隊ってば? なら、武装解除させて戴こうかな?)


 私は意識を内部の監視に戻し、彼等を複数照準して武装解除魔術を行使した。

 するとそこに現れたのは、


「なっ!? 装備が!?」

「イヤー! ガイオス殿、見ないで下さい!」

「グォ!? それよりも、何で装備が剥がれたんだ? しかも無残に崩壊して?」


 浅黒い肌を晒したダークエルフの副官と蒼白い肌を纏った魔人達であった。

 指揮官も魔人かぁ。


(唯一女性士官だけがダークエルフって事ね)


 今は全員が半裸だけど。

 出るとこ出てるエルフがここにも居たよ。


(貧乳エルフよ、何処行っ『それは幻想です』うそぉん!?)


 それはともかく、私は意識を外に戻し、


「確定情報、懲罰部隊は魔人とダークエルフだったよ」

「「「「「!!?」」」」」


 一同が驚く事実を示した。

 まぁ驚くよね。今まで〈人亜連合〉の名の下に動いていた者達が実は魔族の下働きだった魔人や亜人達なのだから。


(という事は祖国を滅ぼしたのも?)


 いや、あれは人間か。

 では何時から侵入していたのだろうか?

 その点は後で調べるしかないかな?

 すると事情を知ったレイズ殿は打ち震え、


「という事は、我等は今まで謀れていたという事か?」


 ヨハネスも怒りでワナワナと震えていた。

 いや、アンタ元魔王じゃないの?


「そういう事であろう。これは由々しき事態であるぞ…」


 そしてエリスは託宣があったのだろう。


「許せません! しまいには〈人亜連合〉を無視して私達の学び舎を壊しにくるなんて!」


 その言葉に怒りが滲んでいた。

 これはヤツ等を出す理由が無くなったね?

 そのまま処罰して遺体解放が無難であろう。

 全く何を思って人類大陸に入り込んだのやら? 頭痛の種でしかないよ?


数年ぶりの改稿で申し訳ございません。

改稿を行いつつ続編を書いていきます。

今しばらくお待ちください。

〈改稿日:2022年12月19日〉

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