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魔王に巻き込まれた大賢者、今世こそ隠遁生活を送りたい(願望)  作者: 白ゐ眠子
第五章・転生した大賢者は伝えたい。

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第84話 元大賢者は、殿下の先々に不安視する。(下)


 それから一週間後。

 二回目の休日明け前にヨハネス達は帰還した。ただ、その表情は何処か暗く、ヨハネスとエリスは何処か余所余所しかった。

 リディも馬車の中から出て来なかったしね?

 だから、私は戻ってきたヨハネスだけを執務室に呼び出し事情を聞いた。


「お帰りなさい。それで、何があったの?」

「う、うむ。実はな…」


 一先ず、何があったか怒りを抑えながら確認してみた。実はあれから暫くの間、リンスの王族教育が再発した事と鍛冶師科の設立準備で私も監視どころではなかったの。そのせいもあってか直前でいえばヨハネス達がダンジョンの地下百九層を突破した頃合いだっただろうか?

 監視を再開するとヨハネス一人がエリス達を護っている状況だったのだ。


(予定よりも深い場所に居たんだけど、何で)


 そう、その間のリディはというとエリスに護られながら後衛で突っ伏していたの。

 状況的に余りよろしくない事が起きているのは私も気付いたが、その時点では既に遅かったらしい。

 私はリディの状況を把握するため頭痛に堪える素振りを見せながら申し訳無さを見せるヨハネスに確認を入れる。


「それでリディは?」

「今はエリスと共に自室に移動しておる」


 ヨハネスも申し訳ないという素振りを見せているが、流石にこれは無い。

 私も自身の事が原因である事に気付きつつも疲れを無視して動き回ったヨハネスを詰る。


「まぁ踏破に対して躍起になるのは良いの。でもパーティーとして活動するなら相手の体調を慮るのは必要な事よね。何でそれを怠ったの」


 ヨハネスはというと元々が第一王子という面もあってか、


「それは、リディが大丈夫と言ってだな?」


 世間知らずな面が表に出てしまい言い訳でリディのせいにした。無いわ〜、上に立つ者ならそこは何としてでも止めないと。


「はぁ〜。本人が大丈夫と言ってても強制的に休ませるのもパーティーリーダーの務めよね」


 ただまぁ、これはどうしようもないかもね。

 ヨハネスも元々は単身で潜る手合いだったためか相手を思いやるという形で人を率いる事には疎かったらしい。

 元魔王という事も含めてなのだろうが魔王は力で強引に指し示すという傾向があったから兵の士気が低かろうとも良く出来た部下に任せて率いてきたのだろう。

 その結果、前世と同じ事を繰り返して状況が読めずという状態に陥ったのだろう。

 まぁ間違いに気付いて省みれば成長の可能性もあるからこればかりはヨハネス次第だけど。


「う、うむ」

「まぁいいわ。それに気付けなかったのなら、反省房での反省文一万枚の刑だったけど悪い事をしたという反省があるなら疲れを癒やして翌日に備える事ね?」

「そ、そうだな。すまぬ」

「謝るなら私ではなくてリディに行ってね?」


 そうして私はヨハネスに対して休む事を指示し、執務室の外でヨハネスと別れてリディ達の元へと向かった。次代の宰相閣下としては必要な事だから、よーく覚えておく事ね。


  ◆◇◆


 リディの自室前に着いた私は扉を叩く。


『はーい!』

「私よ。入ってもいい?」

『どうぞ』


 そしてリディの自室に入るとエリスがリディの左手に治癒魔術を行使していた。受け答えもエリスが行ったようだがリディはベッドに突っ伏した段階で痛みによって気絶したらしい。


「調子は… あまり良くないみたいね?」

「百層を踏破した時に無理したようでして…」

「一応リディ自身の目標は達成したって事か。でも、それなら何で? 一応、リディの目標が達成されたら他は後日に回すって約束してたわよね。そう何度も潜っていける物でもないし」


 今回はヘリオの個人都合によりAクラスの平日授業を全面休講し、生徒の面々はそれぞれの余暇を楽しんでいたのだけど、その内の三人が時期的に好都合としてダンジョン踏破へと赴いたのだ。

 ただ、一度に潜る代物ではない階層故にリディの目標達成で帰還する制限を与えていたの。

 しかし、蓋を開けてみれば何故か地下百十層まで行っているのだから、頭痛の種という面では何故そうなったのか、考えたくなかったよ。

 エリスも申し訳というか苦笑というか例えようの無い顔で返してきた。


「あー、殿下が…」

「ヨハネスが勢いに任せて先に行ったと?」

「はい。止める間もなく降りて行って…」

「困った王子殿下だよ…」


 その後、更なる事情を聞くと六十層を超えて以降、リディの魔術回路はジワジワと熱を帯び本人も我慢に我慢して時折、エリスの治癒魔術で癒やしながら降りて行ったらしい。

 ただ、その間も殿下は気付かず先へ先へと行くものだから、第百十層のボス部屋で気絶したリディをエリスが報告した事で漸く気付き猛省したそうだ。


(暴走王子め)


 私はその事情を聞きながらもリディの状態を検査した。そして状態をエリスに告げる。


「経路が塞がれているね。無理を押したから熱で経路が歪んで痛みの元になってる。そこに更なる魔力を宛がうから魔力圧が歪んだ経路と精神に負荷を与えて激痛が起きてる状態みたい」

「!? そ、それじゃあ、もしあのまま継続していたら?」


 エリスは私の言う診断結果により驚愕の顔を見せ、殿下を止めずに放置した場合を想像し蒼白い顔に変わる。だが事実は示さなければならないので私は厳しい表情で宣告する。


「再起不能だったと思う。勿論、再度魔術回路を施す事を精神が無意識に拒絶するレベルで」

「そんな!? では、リディはもう?」


 流石のエリスも事情が事情のため、


「落ち着きなさい!」

「─ビクッ─」


 アタフタしだしたので大声で注意した。

 王女様なんだから、平静を保たないと!

 まぁ原因が自分達であるなら仕方ないかもしれないけどね。

 だからこそ、落ち着かせる意味合いで教えたのは、再処置の方法である。


「現状では、一度剥がして、治癒魔術で癒やしてから再付与が一番だね。元々、か細い経路で本数も少なかった事で簡単に発熱して歪む状態が続いていたんだと思うよ?」

「か細い… でも、私達の場合は?」


 エリスは「か細い」と聞き自分達も起こるのではと質問する。

 私はそれが性質上の問題であると示した。


「私達の場合は、か細くても経路と分岐が複数あって、分散して流れるから歪む事はないの。でもリディの紋様は自己施術だからか、数本の経路と分岐も無い状態で元々持ちうる潜在魔力を高位化で出し続けるには無理しないといけない代物なのよ」


 ようは細い管の中を高位高圧の魔力が分岐せずに一本道の管で抜けるのだから出口の紋様までの経路数本だけで耐えられるわけがないの。

 その高位高圧の魔力も、その前の潜在魔力の抗力で高位化された物であり、その魔力圧は計り知れない物となるの。だから私達の場合は分岐と経路を複数用意し、全体の圧力を分散化で下げるから熱も発生しないというわけね?

 すると私達の会話が聞こえたのか、


「分岐… そう、私の紋様には、それが、無かった、から」


 リディが目覚めながら呟いた。


「うん。独学で施術している点は評価出来るけど、後少しという面があるね」

「そう。その結果がこの(ざま)じゃ、貴女の評価通りなのかもね…」


 流石のリディも普段の不遜な態度は見せず、今回ばかりは自嘲めいた言葉を吐いた。

 私の素性を知ったうえでの事だから先はまだ遠いという事を自覚したのだろう。私はリディの判断ミスを示しつつも再処置を提示する。


「潜在魔力量が少なかったら、こうはならなかったんだろうけど、読み間違いと思って、再処置をするしかないでしょうけど、どうする?」

「うーん、流石に惜しい気持ちもあるけど、このままだと再起不能でしょう?」

「そうね。次に魔力をあてがったら最後かもね? 精神への負荷が予想以上に深い傷を残しているから」


 リディは考える。

 次は無いと知り決意のままに願い出た。


「なら、再処置をお願いするわ」

「了解よ。たちまちは紋様を剥がすから眠っててね? 剥がした紋様は別の形で使うから安心していいよ?」

「? そう。アリスにお任せするわ」


 そうしてリディは深い眠りにつき寝息を立てたのであった。今はエリスの癒しが効いて来たのか疲れを癒やす方向に意識が向いたのだろうね? ちなみに剥がした紋様は何に使うかといえば、あとのお楽しみという事で!


(しかし、この状態になるまで気付けないヨハネスってば鈍感過ぎでは?『前世の影響が出ているのでしょう』やっぱり、そっちの面が大きいのか)


 魔王が持つ因果とは恐ろしいね。


数年ぶりの改稿で申し訳ございません。

改稿を行いつつ続編を書いていきます。

〈改稿日:2022年12月19日〉

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