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魔王に巻き込まれた大賢者、今世こそ隠遁生活を送りたい(願望)  作者: 白ゐ眠子
第五章・転生した大賢者は伝えたい。

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第82話 元大賢者は、嘗ての弟子に何か思う。


「アイカは一先ず、見た目を偽って!」

「は、はい」

「私も、アリス・フィリアの姿で、って何時も通りか」


 余りに突然の訪問に困惑した私は慌てて準備に取りかかった。資料の一切合切を金庫にしまい、アイカの見た目を偽装したのだ。

 身長も含めて私と同じに変え魔力波長もシーナ達に近い物とした。

 ヤツもなにげに勘が鋭いからアリステアの繋がりだけは隠した方が良いからね?


(あ! 後、お茶は通常の物を! 奴にバレると後々、面倒だし!)


 その後、シーナの案内で学長室にゴライアスが来た。


『アリス様、お連れ致しました』

「どうぞ」

「失礼致します。オーウェン殿、こちらへどうぞ」

「失礼致します。本日の突然の訪問、お許し下さい」


 私は、こんなしおらしいゴライアスなんて見たくない! という気持ちを隠しつつ何枚も用意した猫の皮を被り、笑顔で応対した。


「いえいえ。お気になさらず。さぁ、そちらへどうぞ」

「失礼致します」


 用件は何だろう?

 急ぎという割に穏やかに見えるのだけど?

 アイカもお茶の用意をシーナに委ね今は私の背後に立って状況を注視している。


「それで、ご用件をお伺いしても宜しいですか?」

「そうですね。単刀直入に申し上げますと、今度鍛冶師科を立ち上げる噂を耳にしまして…」

「耳が早いですね? まだ特別授業で数回ほどの鋳造実習を行ったに過ぎませんのに」

「いえいえ。我が国では割と有名なお話ですよ」


 ゴライアスが腹芸だと!?


(あの直情径行で考え知らずに直撃する脳筋バカが!?)


 おっと、顔には出てないが冷静さを失うところだったよ。


「そうですか。それで何が目的で我が学院に」

「ええ。知っての通り、我が魔導学園では鍛冶と錬金は基本、希望者のみ(・・)の授業しか行っておりません。それも特別棟に居る大賢者候補者達へと私自らが教えております。それで本題なのですが、その立ち上げを止めて戴けませんか?」


 一応は授業してたのね?

 卒業生からは専門外とは聞いてたけど。

 希望者が居ればゴライアスが教えてたのか?

 私の周囲には教わった者が居なかったみたいだけど。それと、止める理由は既得権益?

 私へ喧嘩を売りに、この場に来たという事で間違いないな? 一先ず、確認するのは〈人亜連合〉としてか、個人としてかを問い掛ける。


「それは、命令ですか? それともお願い(・・・)でしょうか?」

「いえ、今の内はお願い(・・・)ですね。その後の動き次第では命令となるかも知れませんが」

「なるほど。では理由をお伺いしても?」


 とりあえず様子見かな?

 だから問い返すのは理由である。

 先程の言葉通りなら、何かある筈だから。

 だがヤツは気持ち悪い微笑みを見せながら、


「それは先程申し上げた、希望者のみという理由そのものです。もし仮に、そちらで立ち上げてしまった場合、我が学園でも立ち上げなければ学生が逃げてしまいますので」

「逃げてしまいます、ねぇ? それは学園の弱点を知っているかのような物言いですが。もしや、各種授業での間違いと嘘を教え込むのも貴方個人の教育方針なのでしょうか?」

「今、嘘と仰有(おっしゃ)いましたか? それと弱点とは?」


 おぉ! ゴライアスが怒った!

 まぁ私も充分に煽ったけどね?

 それに一瞬だけ右のこめかみに青筋が出た!

 さて? この後はどう反応するか?

 まぁ問い返されたけどね?

 怒気の入った声音で。


「嘘を嘘と申して何が? 私もそちらの学生であった時に各学年の授業を拝見しましたが、どれもこれも選民思想に偏った授業と誤認に近いレベルの教科書と授業内容でした。そのうえ特別棟の授業、あれは何ですか?」

「あれとは? どういう事でしょう? それと教科書の誤認に関しても詳しくご教授願えますか?」


 ん? これってマジで知らないの?


(ゴライアスが授業をするって言ったけどあれは鍛冶と錬金だけ?)


 基礎課程だけは本人に丸投げってこと?


「おや? ご存じでない? 最近でしたか父の名で間違いを正したと記憶しておりますが? それに教科書の誤認。まぁ落第クラスの件は元々が退学予備軍として用意していたのでしょうから仕方ないですが、教科書に記された各種呪文、どれもこれも詠唱と鍵言が不一致となっておりましたよ? それも卒業生が見ても不審に思うレベルで」

「!? そ、それは、本当の事でしょうか? そ、それと落第クラスと仰有いましたか?」


 ゴライアスってば特別棟の授業の件は今回が初耳という感じだね?

 教科書といい落第クラスといい。


「本当の事ですよ。実際に私自ら、その落第クラスに居ましたし教科書に関しても、シーナ」

「はい。全く以て偽りだらけで御座いました」


 だからこそ、この場に居る卒業生に問う。

 すると、ゴライアスは目を見開き驚いた。

 そして「ルード(誓約)はどうなったのだ?」っとブツブツと呟く。


「そういう事です。それと落第クラス。これはJクラスの事ですが、そのクラスだけは教科書が別物にすり替わり魔術師を育てたいのか、落伍者を育てたいのか謎のクラスでしたね。最後は授業を聞く気力も有りませんでしたのでゴーレムと成り代わってサボっていましたけど…」

「で、ですが、教科書にはルード(誓約)が刻まれている筈です! それが偽りなど。それに私は落伍者など育てる気は一切ありません」


 ゴライアスはどういう事なのかと困惑顔で怒鳴る。怒鳴ると本音が出てくるよねぇ。

 嘘偽りないゴライアスの本心が、だけど。


「貴方個人がそうであっても、学園という一つの組織では、そうでは無かったのではないですか? これはAクラスと落第クラスで戴いた教科書そのものです。返し忘れていましたので、この場にてお返し致します」

「!? こ、これは」


 ゴライアスは私が返した教科書類を手にとり中身を見たのだが、驚愕のままにルード(誓約)回避が行われていた事実を知る。

 その後、私は噂だけで知ったゴライアスに対し本来の要綱を明かす事にした。


「それと、一つだけ訂正しておきますが我が学院の鍛冶師科は専任科目です。錬金であれば主なる基礎をAからCクラスのみに教えております。それ以降の下位クラスでは教えておりません。そして鍛冶師科に入るためには最低限の鍛冶スキルを持つ者を限定とし、誰も彼も教える事はないのです。勿論、間違った知識を持つ者など論外ではありますが、それであっても鍛冶と錬金を教わりたい者に関しては、Aクラスの教師より許可の出た者に限っております。それはSクラスという、貴園でいう特別棟の授業と同じ扱いなのですから。それと誰からその噂をお聞きしたか存じませんが、間違った認識のまま一方的に猪突猛進するのは常識面に於いても考えものではないですか?」


 昔ながらの捲し立てる言い回しで叱りつつ。

 ゴライアスは見るみる間に顔面蒼白となる。

 これで懐かしむようなことは無いよね?


「!? そ、そうですね。確かに… いえ。先程の物言い申し訳ございませんでした」


 やっぱりか。嘘や噂に惑わされて事実確認もせぬまま飛び出す傾向は変わらないと見える。

 だからこそ昔と同様に彼を諭す時に使った言葉を用いたのだ。そう「間違った認識のまま一方的に猪突猛進する」この言葉は毎度毎度、彼を怒鳴るときに使った言葉である。


「判って下さいましたか? それと丸投げするのは結構ですが時には中身の確認をしませんと最悪、想定外の事態に直面して手の施しようがない事になりますので、ご注意を」

「そうですね。確かに…。いやはや貴女様とお話しておりますと我が師を思い出すようです」

「師… 大賢者様でしたか。では、彼女の功績に泥を塗る者達を一日でも早く除外して、健全な学園運営をなさってください。若輩の私から言われる筋合いは無いと思いますが」

「ご忠告、痛み入ります」


 そうして、ゴライアスは学院から去った。

 その後ろ姿は哀愁のあるものだったが今後は研究一辺倒ではなく改善に動く事を期待して。

 私は一人、廊下から彼を見送ったのだった。


数年ぶりの改稿で申し訳ございません。

改稿を行いつつ続編を書いていきます。

〈改稿日:2022年12月19日〉

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