第81話 元大賢者は、脳筋の訪問に困惑する。
『その理論、とても気に入った! 君に素晴らしい力を授けよう!』
◆◇◆
私は賢者となった日からずっと魔力が何処からくるのかと考えていた。そのうえで魔術を行使し、神秘を発生させるには何が必要かを考え日々実験と研究に明け暮れたのだった。
『あー、こうでもないし、何が違うのかしら? ゴライアス! 茶!』
『は、はい、ただ今!』
『うっ、温いし薄いし! もう少し熱くて濃ゆい茶は出せないわけ?』
『す、すみません! 直ぐに淹れ直してきます!』
『全く、お茶くらい真面に入れられないわけ? あーアイカの茶が飲みたいわね〜。あの子の茶は何度も何度も煮詰めて濃ゆい茶としてくれたのよねぇ。やっぱり茶は濃ゆい茶に限るわね! 頭が冴えるから。でもあいつの入れた物は薄いのばかりだし何でもう少し… ん? 濃ゆい茶? 薄い茶? まって! という事は…』
そして、この日、茶の話題から始まり。
私は何かのヒントを得た。
そう、そこからまた試行錯誤の連続だった。
時には深く書きすぎて気絶する事も屡々だったり、時には物量を間違えて何度もイッた。
うん、恥ずかしいから言えないけど。
そうして度重なる失敗の連続の先。
自身の地位が大賢者となってからも研究を続け、数年の月日が流れたその日、私は自身で見つけた理論を完成させたのだった。
だが、その時である。
突然、時が止まったのだ。
⦅え? ゴライアス達が止まってる?⦆
唐突に不思議な声が頭の中に響き、その御姿が天井付近に現れた。
『その理論、とても気に入った! 君に素晴らしい力を授けよう!』
これはどういうこと?
神秘幻象には変わらないけど、一体何が?
『ふふっ。申し遅れたね。私は知恵神という。外世界の神である七柱の一柱さ』
『え!? 神様!? で、でも、何で?』
『言ったよね? 気に入ったって。君が初めて見つけた理論の事だよ?』
『!? 初めてなのですか?』
『そう、初めてなの。だから褒美として、力を授けたよ。その眼は魔力を注げば世界の理が見える眼となった。名付けるなら〈神理の魔眼〉だろうか?』
『〈神理の魔眼〉?』
『そう、君が私の愛すべき者となった事の褒美だよ? それさえ有れば、固有魔術も比較的楽に作り出せるだろう。君のもう一つの理論も、ある意味で我等の力そのものだから』
『!? え? 時間が戻った? 魔力を注ぐ… !? 何これ!? 凄い!』
そう、この日、私は神に出会った。
だがそれと同時に逃亡生活の始まりでもあったのだ。そう、永遠とまではいかなくとも、人目を避ける日々がここから始まったのである。
◆◇◆
「アイカの茶はやっぱり美味しい〜!」
豚教皇を雌豚に変えた日から数ヶ月後。
季節は冬となっていた。ダンジョン内で飲む茶もいいけど、やっぱりアイカが淹れた濃ゆいお茶が一番眠気覚ましになるわね〜。
「先生はホント、そのお茶が好きですよね?」
「アイカ。周りは誰も居ないから、いつも通りでいいわよ?」
「いえ、一応示しは必要ですので」
全く、真面目なんだから〜。
そこがこの子の良いところでもあるけどね。
「まぁいいわ。それで、来期に発足する鍛冶師科の要望は出ているかしら?」
「はい。数名程、ドワーフが居ますが、それ以外はエルフだったり人間だったりしてますね」
「なるほど、需要自体はあるみたいね」
私はアイカが手渡してくれた資料を読みつつ需要を知った。錬金自体はAからCクラスまでは教えているが、それ以外の鍛冶を知りたい者が居ると知って私は正直嬉しかった。
元々が専任のドワーフ達は除くけどね。
「はい。あちらの学園では魔術全般を扱っていましたし鍛冶や錬金は皆が独学でしたから、何人か間違った知識をひけらかしていましたね」
「そうなのね。得てしてゴライアスの丸投げが大賢者の真反対となる者を拵えるのだから困った話よね」
実は魔導学園は鍛冶や錬金は専門外なのだ。
だから主に行う授業は魔術詠唱や魔術戦に限るのである。その結果が求めてる者と正反対となるのだから質が悪い事この上ない話だった。
何を以て大賢者となるか。
今一度ゴライアスをとっちめたくなるわね。
面倒だから顔は見せないけど。
その直後、学長室にノックの音が鳴り響く。
「はーい」
『アリス様、お客様がおいでです」
「どちら様なの? 今日の訪問は終了してる筈だけど?」
『いえ、緊急でお越しになられた方でして』
「緊急? それで、どちら様なの?」
『えっと、ですね… ゴライアス殿です」
「「はぁ!?」」
噂をすればなんとやら。
何用で来たの? あの脳筋エルフ?
流石にこの訪問は私もアイカも唯々驚いた。
シーナも困惑しているから余程の事だろう。
数年ぶりの改稿で申し訳ございません。
改稿を行いつつ続編を書いていきます。
〈改稿日:2022年12月19日〉




