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魔王に巻き込まれた大賢者、今世こそ隠遁生活を送りたい(願望)  作者: 白ゐ眠子
第四章・転生した魔王は探したい。

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第79話 元大賢者は、下拵えに留意する。


「殿下? 居場所が判明しました」

「何処に居るのだ?」

「帝国領北部・ロイナベル領の領海ですね。先程まではノルンハイド合国の港街に居たようですが」

「夜の海に出たか… それで、行き先は?」


 肥満豚を追う殿下達。

 先程、私が報告した事で神が動きエリス様が祈祷した際にお教えになったようだ。

 私やリディと違って頻繁に繋げる訳にはいかない『貴女方は知恵神の使い』らしい。

 だから、後手後手にまわるのだろう。

 しかし、あの肥満豚も何気に知恵が回るようだ。今は海上をユラリユラリと進んでいるようで殿下達も足止めを喰らったみたい。

 転移魔術も海上だけは使えないからね?

 殿下から行き先を聞かれたエリス様は例えようのない顔で、


「はい。偶然といいますか、申し訳ない気持ちで一杯なのですが…」

「どうしたのだ?」

「いえ、船の行き先は旧ライナメリー領、現ライナス領・領都ゼアンとなります」

「ん? 旧ライナメリー領とな? 確かそこは皇家直轄領だった筈だが?」

「殿下、お忘れですか? ルークハイド公の寄子による分割統治となった港町です」

「あ! アリスの領地か!」


 うそぉ!? 止めて!

 来ないで!? 領地が穢れるから!

 という私の嘆きは何処へやら肥満豚は何を勘違いしたのか、皇家直轄領と思い込み現ライナス領・領都ゼアンに向かって来てるという。

 北東の港を封鎖するとしても商業港だから下手に閉鎖出来ないし…。


(肥満豚めぇ!)


 ちなみにユアン殿は無事に伯爵を叙爵し、ユアン・ライナス伯爵として寄子の一人に名を連ねる事となった。まだ一人目だけどね。

 彼には子息も居るので今後に期待である。


  ◆◇◆


「リーナ! ライナス殿に伝令! 逃亡中のアーベン・ゲドー元教皇が港町に向かって来てるから私兵と共に厳重警戒して! 発着の船はノルンハイド合国・カシカ領発・ロベリー号。おそらく三日後に導入する予定の鋳型製造魔道具と共に入る予定だからその点に留意されたし」

「は! 直ぐに手配致します」


 たちまち出来る限りで対策を打つ事とした。

 相手が元教皇だとしても今は逃亡中の犯罪者だからだ。それが何を勘違いしたのか鋳型製造魔道具と共に来るのだから頭の痛い話である。

 この鋳型製造魔道具は学院に導入する予定の設備で鍛冶を学びたい者への特別授業のために依頼した品物なの。

 今後もし、人気が出るようなら鍛冶師科を用意してもいいからね。魔術学院なのにと思うなかれ、大賢者に至る者は鍛冶も熟さないといけないからだ。それは魔道具の筐体も自身で作らないと意味が無いからね?

 すると、その声をきいたアイカが給湯室から顔を出す。


「先生? 何か問題でも?」


 どうもシーナは明日の準備で、リーナが伝令に向かったから代わりに茶を用意してくれているらしい。


「うん、大問題が発生ね?」


 ちなみに弟子としたアイカは私の専属秘書を兼任して貰ったの。元々は学生でもあったけど本来の技能面が学生の範疇を超えていた事と知識面は私が教えるという事で強引に卒業資格を与えたのだ。まぁ擦った揉んだあったけど試験結果を見せたところ教師陣は納得していたよ。

 ただ、中には「何故、今まで?」という話もあったが「独学との差違を知るため」というと総じて納得したようだ。

 この手の話は割と多くリディもそうだもの。

 今ではエルリア首長国の魔術学院は魔導学園に吸収合併されて存在しないしね。


「元教皇が合国よりこちらに向かっている事が判ったの」

「それって、例の?」

「うん。錫杖の問題で大騒ぎした肥満豚ね?」

「という事は推進派の大元締めでしょうか?」


 アイカは私からの報告を聞き、事情を察したようだ。私達が色々と迷惑を掛けられた主であるとも気付き、剣呑な気配を漂わせる。

 私はそんなアイカに対して、なるべく安心させようと現状を伝えた。


「元ね? 今は推進派自体が解体されたも同然だから学園の方は位階差別自体が沈静化してるそうだよ。教会の方も少しずつだけど正常化しているらしいから」

「少し、は真面になると良いのですが…」

「それは、願うしか出来ない、かな?」


 本当に願うしか出来ないね。

 アイカも渋々という様相でお茶汲みに戻って行った。内部から変化を与えようとして不可能だったから今は外から刺激を与えているのだもの。どんな変化が起こるかはまだ途上だから判り辛いけど良い方向に向かう事を願うしかないじゃない。人の身で出来る事は限られるけど。


  ◆◇◆


 そして翌日、過ぎて二日後!

 港町に船が近付いてきた。

 殿下もエリス様と共に桟橋の影で様子を見守っている。


「さてさて、豚は居るかしら? 船倉付近で積み荷の食材食ってる!? 無銭飲食も追加ね」

「困った豚ですね」

「それなら、どう料理しようかしら?」

「その辺は殿下が行うでしょう。アイカ、リディ、私達は逃げられないよう結界を張るよ?」

「「はい (はーい)」」


 今回は豚の捕獲のために私とアイカ、リディだけが出張った。リリィとリンスも来たがったが、あの二人は立場上、問題が出ると不味いので屋敷に待機してもらったの。

 一応、正規の王女と皇女だからね?

 実際にはリディもそうだけど王女としての身分は既に無いと言っていたから、この場に連れてきたのだ。


(でも無いって変よね?『勘当されております』あぁ、退学した件が問題となったのね)


 学園を管理する国の王女が自主退学したから。リリィ達は伯父上に直談判したから仕方ないけどね。

 船が接岸するまでの間は打ち合わせとして誰がどの結界を張るかで話し合った。


「船が入港したら、問題の元教皇だけを通さない三種の結界を張るよ? 桟橋は私、左の港はリディ、右の港はアイカでお願いね?」

「術式は何でもいいのよね?」

「ヤツの波長だけを除外出来るならね」


 それと共に、それぞれの見た目も変えて、私が茶髪のリサの姿でリディが人間の姿ね?

 アイカも銀髪に偽装しているから今は小柄な少女にしか見えないの。

 これは誰なのか特定されないための措置ね。


「りょーかい! なら、偽装結界を張れば良いわね!」

「私は風縛結界で!」

「私は暗幕結界ね。他の船員達は普通だけど元教皇だけは暗闇に見える結界ね」

「それはそれで」

「面白い事になりそうね?」


 そう、それぞれに選んだ結界はリディが偽装結界で船員や外の者達に元教皇を見せずに隠す結界だ。処断時であっても気付けないから残忍な事となっても問題はない。

 アイカが選んだのは風縛結界で元教皇のみを桟橋に釘付けする結界ね。残りの私が選んだ結界が暗幕結界ね。これは説明してるからいいけどアイカもリディも巻き起こる事案を想像しニコニコと微笑んでいるよ。

 その後は私達三人も別れそれぞれの持ち場に就く事になった。それと今回は殿下が何かを企んでいるみたいだから、私も例の物を使おうかと思ってるの。どういう結果になるかは見てのお楽しみだけど、いやはや、どうなる事やら?


数年ぶりの改稿で申し訳ございません。

改稿を行いつつ続編を書いていきます。

〈改稿日:2022年12月18日〉

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