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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第3章:命を懸けなければ

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第95話:告白


──────────────────



「おいおいおいおーいッ! 城が崩れてくぞ!?」


「うるせぇ! 見りゃ分かんだよこの馬鹿ッ! クソッ……あいつら無事じゃなかったらただじゃおかねぇ!」


「城に向かおう! ティアいけるか!?」


「は、はい……なんとか……うっ……」


 魔族や魔物達に囲まれていた彼らであったが、救援に駆けつけたザワンの活躍もあり、なんとか総崩れすることなく持ち堪えていた。

 加えて、インヘルムに吹き荒ぶ猛吹雪が、魔族の動きを抑制していたことも大きかった。

 先程までその場にいたグングニルのおかげで、彼らだけはその影響下になく、彼女が去った後は多少回復したティアがその役割を担っていた。


「こいつら……今なら行けるぜ!」


 城の崩壊が始まるとともに、魔族や魔物達の攻撃がますます緩慢なものへと変わっていく。

 インヘルムの象徴であるブラッドウェル城の崩壊は、彼らの士気を下げるには十分すぎる効果を持っていた。


「ふんッ!」


 ケルト王オーランドはティアを抱え、ゆっくりと崩壊していくブラッドウェル城に向けて走り出した。


「へ、陛下っ……!」


「ティアは吹雪を防ぐことだけを考えよ。なぁに、君なら軽いものだ!」


「おっさんは俺の後ろに! ザワンは殿しんがりだ! 俺は前を払う!」


「はいよ!」


 彼らがいる位置は城からそう離れておらず、巨大な瓦礫が落ちるたび、それが大地を幾度も揺らす。


「ロード! 聞こえるかロード!」


 オーランドは通信魔石を取り出し、ロードに連絡を試みる。

 ザワンの力により、既に強大な魔力が消えたことは分かっていた。

 ザワンのスキルは"魔力感知"。

 普段はうるさいザワンであるが、彼は神速魔法と魔力感知を使った潜入任務を最も得意としていた。

 彼が元々ティーターンにいたのも、バーンを介したニーベルグからの依頼により、とある場所に潜入していたからに他ならない。


「頼む出てくれ……!」


 消えた魔力や城の崩壊から察するに、恐らく決着がついたのだと、オーランドはそう判断していた。

 彼が祈りを込めて魔石を握り締めていると、その願いが通じたのか、通信魔石から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


『は、はいっ!? どなたですか!?』


 聞こえてきたのは女性の声。

 雑音がひどくて聞き取りにくくはあったが、それは間違いなくレヴィの声であった。


「レヴィだな!? ということは───」


『陛下!? なんで……あ、いや、魔王はロード様が倒して…………でもっ! ロード様がっ……!』


「な……ロードは無事なのかっ!?」


『分かりませんっ……傷が酷くてっ……! 今……なん…………で……分から………………』


「レヴィ! おいレヴィ! クソッ! 雑音がひどくて聞き取れん……急ぐぞ!」


 4人は魔族の追撃を振り切り、なんとか城へと辿り着く。

 だが、崩壊が進む城を前にして手も足も出ず、中に入ろうにも既に入り口は瓦礫で埋まっていた。


「クソッ……いったいどうすりゃいい!?」


「……このザ=ワンに任せてもらおう。微かに魔力を感じる……! やってやれないことはない!」


「おまっ……!」


 ザワンは言葉を待たずに走り出す。

 瓦礫を避けながら外壁を登り、崩壊した壁から中へと進入した。


「み、身軽な人ですねぇ!」


「俺達は身を隠そう。ザワンならば、俺達を見つけられる筈……」


「よし、離れるぞ!」


「ロードさん……レヴィさん……どうか無事で」


 崩壊しゆく城を見つめながら、ティアは祈るようにそう呟いた。



 ──────────────────



「こっちも塞がって……!」


 レヴィはロードを背負ったまま、なんとか通れる道を探し、下へ下へと向かって進んでいた。

 だが、崩壊は予想以上に早く、いたるところが瓦礫によって埋まり、身動きが取れなくなり始めていた。


「これは……さすがに……」


 レヴィは崩れた壁から下を覗く。

 まだ上層付近だと思われるそこからは、吹雪のせいもあり地面が全く見えなかった。

 その時、大きな瓦礫が目の前を通り、外壁に何度も当たりながら下に落ちていく。


「レ……ヴィ……」


「ロード様ッ!? よかった……意識が───」


「置いていけ……」


「……え?」


「レヴィ……だけなら……逃げられる……」


「い、嫌ですッ!」


「けど……このままじゃ2人とも……」


「あなた様を失うくらいなら……私も死にます! 二度と……二度とそんなこと言わないで下さいッ!」


「はは……ごめん」


 互いに魔力もなく、レヴィの体力も限界が近い。

 彼女は数日間鎖に繋がれており、本来なら歩くことさえ出来ない程に衰弱している。

 だが、背中から伝わるロードの弱い鼓動が、彼女の心と身体を奮い立たせ、力強く足を前へと出させていた。


「必ず2人で……帰るんです!」


「ああ……」


「今度は……私がロード様を助けますから!」


「俺の番……だったのにな……」


「そんなことっ……関係ないです!」


「そっか……そうだよな……」


「そうです! ロード様、気をしっかり持って……きゃっ!?」


 その時、城が一段と激しく揺れ、レヴィはロードを背負ったまま床へと倒れ込んでしまう。


「うぅっ……」


「大丈夫か……レヴィ……」


 必死に這いずり、レヴィの下へとロードは進む。

 その姿に、レヴィの瞳が涙で潤んだ。


「ロード様はご自分の……心配をっ……うっうっ……」


 ロードの傷口からは、いまだに血が流れ続けていた。

 このままでは、脱出する前に彼の命が尽きるかもしれないと、レヴィは恐怖を感じていた。

 ロードが命を懸けて救ってくれたのにもかかわらず、自分は彼を守ることが出来ない。

 そんな想いが、彼女の心を締め付けていた。


「ロード様ぁ……」


 レヴィはロードを必死に起こし、彼を膝に乗せて抱き締める。

 途端に、ロードが死ぬかもしれないという恐怖が、彼女の心を支配し始めていた。

 そんなレヴィの頭に、ロードは必死に手を伸ばす。

 そしと、その頭を撫でながら、ロードは消え入りそうな声で囁いた。


「レヴィ……ごめんな……せっかく会えたのに……情けなくて……」


「嫌です……嫌ぁ……」


「レヴィ……俺……レヴィのいない間……ずっと胸が苦しくて…………会ったら言おうと……」


「ロード様……」


 崩壊する城の中で2人は見つめ合う。

 そして、ずっと言わなかった言葉を彼は口にした。


「レヴィ……俺は…………君が好きだ」


 レヴィの目から、ポロポロと涙が溢れ出す。

 ずっと聞きたかったその言葉。

 離れたことで、より強く感じたその想い。

 彼も同じであったのだというその喜びに、彼女の心が力を取り戻していく。

 絶対に、失ってはならないと。


「うぅ……うっうっ……わ、私も……私もぉ……!」


「だから……生きてくれ……まだ……間に合う」


 ロードはレヴィの頭から手を離し、穴が空いた壁を指差した。

 そのロードの言葉に、レヴィは覚悟を決めて強く頷く。愛する者を守る為には、命を懸けなければならないと。

 レヴィは自分の着ていた服を脱ぎ、ロードを背負った後、彼と自身を強く縛り付けた。


「レ、レヴィ……?」


「ぐすっ……外壁を伝って下に行きます。仮に落ちても下は雪……私の身体なら、上手くいけば助かるかもしれません」


「だ、だけど……俺がいたら……」


「大丈夫……ロード様は私が守ります。命を懸けてでもッ……!」


「レヴィ……ダメだ……!」


「大丈夫……死ぬつもりはありません。だってまだ、私達の旅は……始まったばかりじゃないですか」


「レヴィ……」


「まだ……終わりにはしない……絶対に!」


 レヴィは呼吸を整え、飛び出すタイミングを見計らう。

 もちろん上手くいかない可能性の方が高い。

 だが、2人が生き残るにはそれしかなかった。


「ロード様……私も……あなたが好きです!」


 決意の言葉を発し、彼女は外へと飛び出した。


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