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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第7章:頂から視る世界

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第548話:自分を

新作毎日更新しとります!


落ちこぼれの宮廷魔導師、元英雄を飼う~私が拾ったのは、かつて世界を救った最強の人でした~


こちらもお読みいただけたら嬉しいです!

 

「お身体の……」


「うむ。妾の身体は、10歳を境に成長を止めた。それ以降、この身体に変化はない。まぁ、髪や爪は切れば伸びるし、怪我をすれば当然治りもする。ただ、どれもある一定のところでピタリと止まるんじゃ。おそらく、10歳での成長限界が決まっておるんじゃろうな。それと、お主も女だから分かるじゃろうが……まぁ、そういったものも迎えたことがない」


「あっ……そう……なんですね……」


「ふふっ……なんとも奇妙なものであろう? 故に子も成せぬ。ま、その辺りはとうの昔に諦めたがの」


「アディード様……」


「ふっ……そんな顔をするでない。で、魔法の力が弱いのも、身体がその力を使う域に達していないからであろう。確かに15歳の時に神から魔法を授かりはしたが、この身体にはそれにあたう力がなかった。魔力量の最大値は先天性のものであることが多いが、成長とともに増加することもある。だが、妾には成長がない。故に、鍛えることも出来ない。巷では、魔法の力が弱い者も"無能"と呼ばれると聞く。もし妾がニーベルグの王でなければおそらく……そう呼ばれていたことであろう」


 アスナは王の話をただ黙って聞いていた。

 その瞳に、うっすらと涙を溜めながら。


「アスナ、お主の焦りはよく分かる。確かにお主は、他者から見れば恵まれておるやもしれぬ。それは、ニーベルグの王である妾とこうして話が出来たり、さっきお主が言ったように、ニーベルグの傑物たちがお主たちのために時間を割いたり、衣食住の全てが担保されておったりと、何不自由なく生活することが出来ているからじゃな」


「はい……その通りです」


「だが、お主にとっての問題はそこではない。強くならねばならんのじゃ。それは無論、自分のためでもあり、ティアやカレン、シェリルといった仲間のためでもあろうが、お主の場合……一番の理由はロードじゃろう」


 アスナは無言で頷く。

 そう。彼女は強くならなければならない。

 そうならなければ、彼女はここにいる理由を失うと強く感じていた。


「あやつがいる地点は、もはや世界の頂と言っても過言ではない。それだけの力を持っておる。故に、あやつの側にいたいのであれば────」


「強く……強くならなければっ……なりませんっ……」


 アスナの頬を涙が伝う。

 アディードは微笑みながら、そっとそれを指で払った。


「アスナよ。もう自分を許してやれ」


「陛下っ……」


「よいのだ。お主がロードにしたことも、それも全て世界にかけられた呪いによるもの。妾の身体と同じ……抗いようのない呪いよ」


「ですがっ……ティアのお母さんやっ……シェ、シェリルの両親は……ぐすっ……呪いを跳ね除けたんです……!」


「お主……」


 そう。その事実こそが、アスナをさらに苦しめていたのだ。

 ティアの母親もシェリルの両親も、そして彼女たちは知らないが、ティタノマキアのジェイドの両親も、世界にかけられた"無能"の呪いを打ち破り、我が子を最後まで愛し続けた。

 つまり、そうであるならば、もしかしたら自分もそう出来たのではないかと、そう考えて"しまった"彼女はずっと苦しみ続けていたのだ。

 何故自分は、そうなれなかったのかと。


「わ、私はロードがっ……ずっと……ずっと好きでした! 幼馴染で……優しくてかっこよくて……でもっ……私は彼を……彼に酷いことをっ! わ、私が呪いなんかに負けたせいで……!」


「それは逆じゃろう」


「……え?」


「妾なりに、"無能"について調べたことがあっての。当然それも、ロードと出会ってからのことじゃ。要するに、妾も呪いにかかっておったのよ。"無能"という存在のことなど何も思わず……で、調べて分かったことじゃが、共通しておることとして、周りに住む人間は、とにかく"無能"を排除しようとするようなんじゃ」


「は、排除……」


 彼女は思い出す。

 勇者ロイに誘われ、イストを離れる前夜のことを。


「うむ。そやつが何もしていなくとも、いるだけで不快に感じ、自身から遠ざけようとする……だが、そうなるとおかしいのう?」


「え、でも、私……は……」


「ロードから聞いておるぞ。"無能"とバレて、周りが全員自分を攻撃し始めた時も……アスナだけは違ったと」


「あっ……うっ……うぅっ……」


「アスナだけは3年間、少なくとも自分の前では……ずっと自分のことを気遣ってくれたと。アスナがいなければ死んでいたかもしれないともな。だから、最後のことは関係なく、アスナには今も感謝しておると、ロードは言っておったわ」


「うっうっ……ロードっ……!」


「お主はなアスナ……隣に住みながら、呪いとずっと戦っておったんじゃよ。そして、ロードを想い続けた。だからもう……自分を許せ」


「うっ……ううぅ……ロードっ……うっうっ……」


 アディードはアスナを抱きしめる。

 背中をさすり、頭を撫でながら。


「お主はもう十分に苦しんだ。だから、もういいんじゃ。自分の心に……素直になっても」



 ──────────────────



「落ち着いたかの?」


「は、はい……すみません……」


 大声で泣いてしまった……恥ずかしい……。

 でも、おかげでスッキリした。

 泣いたこともそうだけど────


「陛下のおかげで……その、心が楽になりました。本当にありがとうございます」


「よい。民を導くが我が使命……特に、お主のような未来ある若者をな」


「陛下……」


「さて、これで問題は1つ片付いたの」


「あっ……」


 そうだった。

 ロードに対する気持ちは前向きになれたけど────


「よいかアスナ。強さとは、己の武力が全てではない。実際、妾がそうであったようにな」


「……あっ!」


 そうだ。

 アディード様のあだ名は────


「明日からお主に、妾の兵法を授ける」


「へ、陛下直々にですか!?」


「ふふっ……不満か?」


「と、とんでもありません! "戦神"と謳われた陛下の……この上なく光栄です。ですが、果たして私にそれが……」


「出来る。お主は頭がよく、物事を俯瞰で捉えられる。空気も読めるし、判断力もある。それにな……」


「そ、それに?」


「クセのある部下を従えられる者は、歴史上もれなく名将と呼ばれる。お主はあの3人を見事に従えておる……それだけで見込みありじゃ」


「そ、そうなんですか……?」


「うむ。なんせ、お嬢様風真面目バカに、なんちゃって不良バカ……極めつけはあのウルトラスーパーバカまでしっかり手懐けておる。あやつら座学に関しては本当に全然途轍もなくダメじゃからな!? お主1人対やつらでも釣りが来るんじゃぞ!? まったく、アレらを御せるとは……見事という他ない」


「あ、あはは……」


 お嬢様風真面目バカ……シェリル。

 なんちゃって不良バカ……カレン。

 ウルトラスーパーバカ……ティア……。


「それとな、武力の方も色々考えてはおる。まぁ、妾に任せておけ」


「陛下……何から何までありがとうございます。私、全力で頑張ります!」


「うむ。というわけで、お主は妾の弟子という自覚を持って生活せねばならなくなった。故に……」


「ゆ、故に……?」


「二度と、夜中に、訓練をするな。さっさと寝ろ」


「……はい」


 こうして、私はアディード様のおかげで、気持ちを新たにすることが出来た。

 もちろん、焦る気持ちはまだあるけれど、それは暗いものじゃない。

 すごく、前向きなものだ。


「……よし、寝てるね」


 部屋へと戻り、私は静かにベッドへ潜り込んだ。

 向かいのベッドをちらっと見ると、ティアがこちらを向いて寝息を立てている。

 ……かわいい寝顔だ。何故あの顔からあのいびきが。


「ふごっ……んー……ふにゃらすらか……」


……何語?


「いやっ…………オムライスでは殺せない……」


……何を?


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◆新作を書きました◆ 読んでいただけたら泣いて喜びます。 よろしくお願いします。 落ちこぼれの宮廷魔導師、元英雄を飼う~私が拾ったのは、かつて世界を救った最強の人でした~
― 新着の感想 ―
実は闇落ちしてたとかじゃあ無くて良かったぁ( *´艸`)
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