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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第7章:頂から視る世界

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第545話:二重

 

「見つけ出すことは至難かと……それこそ、新たな"無能"を探すことと同じか、それ以上に。ご存知の通り、私の力はここ数年でかなり弱体化しておりますし、何故かムムの予知夢もほとんど……」


 これまで、ティタノマキアのメンバーになり得る者を順調に発見してこれたのは、このアナの力によるものが大きかった。

 彼女が"神のお導き"と呼ぶそれは、自身が望む展望を叶えるために有用な情報を得られるというもの。

 しかし、ここ数年でその力は急激に失われ、そして何故か同じような力であるムムのスキル、予知夢もまた、ほとんど何も見えなくなっていたのであった。


「……そうだな。実際、新たな仲間を得たのも数年ぶりのことだった。ああ……シェリルを除いて、な」


「アレは確かに惜しい存在でした……が、仕方ありません。彼女は心が弱かった。小事に囚われ、大事を知ることを恐れてしまった……しかし、新たに仲間に加わった彼女はむしろ、私やクロス様に近い考えを持っていますし、今回の作戦も、彼女がいなければ実現不可能でした。まぁ、まだ子供ではありますので、我々がより良い方向へと導いていかなければなりませんが……」


 ────そう。

 ここ数年、世界を陰から操りつつ、ティタノマキアは新たな仲間集めも並行して行っていた。

 結果、1人の"無能"を探し出し、新たなメンバーを得ることに成功していたのである。


 その人物は現在、このベンディゴ殲滅戦で全ての力を使い果たしたため、すでに戦場から離れ、ある国に存在するティタノマキアの隠れ家で休息をとっていた。


「そうだな……彼女には、ジェイドの分まで働いてもらわなければならん。だが────」


「分かっております。ジェイドを治せるような使い手、あるいはそれに準ずる何かがないかを探してはみます」


 そう言って微笑むアナに、クロスもまた微かに笑みを浮かべた。


「……すまない。俺の魔法も結局のところ……何かを生み出すものではない。フッ……随分と矛盾しているがな」


「ふふっ……確かに。ところで、リセルとチャムリットはどうなさいましたか?」


「今はジェイドの側にいる。責任を感じているようだが……決して彼女たちのせいではない。ましてや、ドラグニスのせいでもな」


「ええ。全ては世界の歪み……ジェイドはその犠牲になろうとしています」


「……急がねばなるまい。お前たちの力が失われつつあるのも、おそらくその前兆なのだろう。全てが溢れるその前に、この世界をなんとしても……作戦に戻ろう。戦況は?」


「はっ……現在、東はご覧の通り、あの少女によって完全に制圧されております」


「うむ……次から次へと邪魔な……」


 映像魔石の1つに、宙に浮かんだまま、腕を組んで戦場を見つめるティアの姿が映っていた。

 その足元には、彼女が作った巨大な土の壁が10キロにわたって聳え立ち、50万人の民は完全にその足を止められていた。

 クロスはじっとその画面を見つめていたが────


「しかし、これほどまでに凄まじい力を……ん? あれは確か……」


「はい。あれは一時、ロード=アーヴァインと行動をともにしていた元"無能"です。まぁ、随分と前の話ではありますが……そんなことよりも私が驚いたのは、彼女と一緒に……シェリルとカレンが現れたことです」


「……なんだと? あの2人が?」


「ええ。そして、あの少女と行動をともにしているということは、必然的にあの2人は今、ロード=アーヴァインとも繋がりがあるということになります」


「なるほどな……やはりそうなっていたか。まぁ、予想はついていたが、オトリスの件はこれで合点がいったというところか」


 北の大地、最果ての国オトリス。

 今はもう消えたその国にはかつて、ティタノマキアの本拠地が存在していた。

 アルメニアでティタノマキアに救出されたシェリルは、少しの間そこで暮らし、しばらく得られなかった心の安寧を手に入れる。


 しかし、"無能"であったカレンを攫うようにそこへと連れて行った挙句、勧誘を拒否した彼女に対し、牢屋に入れて監禁するという処遇に納得がいかず、さらにもともと抱いていたティタノマキアに対する疑念から、シェリルはカレンとともにオトリスから脱出することを決意する。

 仲良くなったリセルとの別れだけが心残りであったが、彼女を追ってオトリスまでやって来たティアとアスナ、ニーベルグの騎士団長ディンとズィードの協力のもと、見事脱出に成功したのだった。


 クロスはこれらの裏に、ロードの存在があると踏んでいた。

 その時点ではロードは無関係であったが、シュメールからは行動をともにしていることもあり、あながち間違いでもなかったと言える。


「まぁ、今はいい……南はどうだ?」


「こちらは6万、あちらは2千と、まさにあと一歩というところでしたが……そのシェリルとカレンが邪魔を」


「フッ……逃した魚はなんとやら、か」


「ええ。2人ともかなりの使い手に成長しています。ですが、さすがに全体は抑えられていないようで、南でも一部は結界への攻撃に成功しています。こちらは特に問題ないかと」


「うむ……で、北は?」


「ズィグラッドはさすがですね。優位に事を進め、大きな損害なく結界の攻撃に成功。それにより、ベンディゴ自体の結界はすでに破壊され、現在は計画通り……ティーターンの結界が展開されています」


「二重結界……哀れだな。策を弄した結果、それが墓穴を掘ることになるとも知らずに」


 クロスはそう言ってニヤリと笑う。

 彼がベンディゴへの大侵攻を決断した決め手こそが、この二重結界の存在であった。

 彼らはベンディゴ内部を探るため、フェイクの複製魔法を使い、それなりの地位を持ち、かつ1人住まいであった兵士を1人、複製体と入れ替えた。

 それは誰にも気づかれることなく、入れ替わった兵士の代わりに働きながら、様々な情報を彼らにもたらしていた。


 その中の1つが、ティーターンとの結界のリンクである。

 それはベンディゴ攻略を難しくする負の要素であったが、それがむしろ逆に、いくつかある目的の1つを達成する手助けとなっていた。

 これによりクロスの、そしてティタノマキアのある目的までの道程が、かなり短縮されることとなったのである。


「現在、フェイクの複製である翼爪竜種(ワイバーン)や、南と北からの攻撃により、ティーターンの結界もかなり削れてきております」


「仕込みは?」


「すでに。ですので、タイミング的にはそろそろ……」


「分かった。だが、やはり────」


 クロス最大の懸念。

 それは当然、ロードの存在であった。


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◆新作を書きました◆ 読んでいただけたら泣いて喜びます。 よろしくお願いします。 落ちこぼれの宮廷魔導師、元英雄を飼う~私が拾ったのは、かつて世界を救った最強の人でした~
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