表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第7章:頂から視る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

541/556

第533話:30分

 

 凄まじい爆発とともに噴煙が上がり、両者の身体が激しく吹き飛ばされる。


「ぐッ!」


「ぬおッ……!」


 ほぼ同時に地面へと叩きつけられた2人は、しばらく起き上がらず、そのまま空を見上げていた。

 そして、耳鳴りが終わるころ、レヴィの耳に遠くからの激しい戦闘音が聞こえてくる。


 朧げな視界をそちらへ向けると、ベンディゴの結界に向けて激しい攻撃を行うカサナエル軍と、それに抗うベンディゴ内部からの攻撃の応酬が見えた。

 さらに別の方向へ目を向ければ、ギブライ軍に押されるカルサたちの部隊と、それに加わらんと押し寄せるバーメディ軍が目に入る。


「ぐッ……うッ!」


 彼女が立ち上がり前を向くと、同じように立ち上がったズィグラッドと目が合った。


「じ、自爆技とはのぅ……あたた……無茶をッ……ふー……しよるわいッ」


 腰を叩きながら、ズィグラッドは地面に落ちた武器を拾い上げる。

 それを杖代わりにし、肩を大きく揺らして息を整え始めた。


「現状……あなた様にダメージを与えるには、こうするしかなかったもので。まぁ、やった甲斐はあったようですが」


「まぁ、の……じゃが、今更────」


 その時だった。


「なッ!?」


「えっ!? こ、この魔力は……まさか……!」


 今日3度目となる、東からの凄まじい魔力が、北の大地を大きく震わせた。


「な、なんじゃこれはッ……先程よりも……!」


 報告を受け、南と北を優位に進めていることはズィグラッドも把握していた。

 ただ唯一、東だけはほとんど情報が入っていなかったのである。


 当初こそある程度の連絡は受けていたが、もともと彼の担当は北であり、まだ自軍の兵が使われている南はともかくとして、東に関しては完全に蚊帳の外であった。

 故に、強大な魔力の出現は気になりつつも、明らかな劣勢の報告などがなかったこともあり、自身の持ち場に注力していたのである。


「いったい東に何が……なッ!? か、片方が……消えた!? あの馬鹿でかい魔力が一瞬で……!」


 それはまさに、ティアがバフォメットを討ちとった瞬間であった。

 状況を把握し切れていないズィグラッドに対し、その時レヴィは拳を強く握った。

 そして、ここまで表情を崩さなかった彼女の顔が────


「ティア……!」


 満面の笑みへと、変わっていた。


「はっ!?」


 さらにその時、彼女が持つ、もう1つの通信魔石が何度も点滅を始める。

 それは、"仕込み"がもうすぐ終わるという合図であった。


「……よし」


「随分と嬉しそうじゃのう……レヴィ」


 その声に、レヴィは再び前を向く。

 驚愕もつかの間、ズィグラッドはすでに気持ちを切り替え、彼女に向けてつるぎを構えていた。


「……ええ。まぁ、よい策が浮かんだもので」


「ほっほっほっ……それはこの戦況をひっくり返すものか? それとも、ワシを討つ算段か? どちらも無理じゃよ。東は……よう分からんが、こちらか南はもう持たん。そして、お主にワシを倒すことは出来んよ。お主の底は、もう見えたからのう。まぁ、仮に倒せたとて、そこに意味などありはせん。もしもの備えはしておる。我が軍は……止まらんよ」


「はたして……そうでしょうか」


「……ほう」


 この時、戦局は最終盤を迎え始めていた。

 北はレヴィとズィグラッドの一騎打ちに始まり、カサナエル軍約2万による、ベンディゴへの直接攻撃の開始。

 死に物狂いで奮戦する、カルサ率いるベンディゴ防衛軍残り約8千と、ギブライ、バーメディ軍約3万の戦い。

 さらには、レア本軍約3万の側面に、レア側諸国連合軍約1万ずつが合流。

 合計5万の大軍となってベンディゴへの侵攻を開始していた。


 また、南ではヘラクレス、リサナウトと、アマド率いる残り約2千のベンディゴ側と、未だ暴れ回るレア側約6万の操作された兵士たちによる戦闘。

 アスナ率いるアーヴァイン遊撃隊と、操られた50万の民がいる東。

 そして、動きの見えないティタノマキア。


 全ての戦いが、今まさに収束しようとしていた。

 そして、その思惑も。

 この時、ロードの指定した時間まで、残り30分を切っていた。



 ──────────────────



「一歩も引くなッ!! ここが正念場だッ!!!」


 カルサの檄が飛ぶ。

 ギブライ軍との最前線は、まさに地獄と化していた。

 カサナエル軍による防御結界攻撃開始との報せを受けたカルサは、これ以上の侵攻を防ぐため、不退転の覚悟で前へ前へと突き進んでいた。


「カ、カルサ様! お下がりをッ……」


「ふざけるなぁッ! 誰が引くかあッ!! オラァッ!」


 カルサの放つ火球が敵部隊に着弾した刹那、激しい爆発が起こる。

 彼女の魔法は"爆発魔法"。

 文字通り、放った魔力が凄まじい爆発を引き起こす強力な魔法である。


「撃って撃って撃ちまくれぇッ! ここで引けば全てが終わるぞッ!! 男を見せろお前らッ!!」


「「「「「お、おうッ!!!!」」」」」


 "北の猛将"と呼ばれるカルサは、その爆発魔法の破壊力と、味方を上手く"のせる"檄の飛ばし方や、卓越した兵法などにより、北では知らぬ者のいない存在であった。

 ティーターン第1騎士団団長の名は伊達ではなく、ズィグラッドの策により騎馬隊約2千を失ったベンディゴ軍であったが、合流した彼女はすぐさま部隊を再編。

 なんとか部隊を立て直し、ギブライ軍2万と正面から激突していた。


「ここで引いたら奴らの思う壺だぞッ! 絶対引くなぁッ!! ……ミディルクどう?」


 矢はもちろんのこと、炎に水、雷や土、さらには浮遊した剣や槍もあれば、泡や煙など、あらゆる魔法が飛び交う戦場の中で、カルサは兵士たちを激しく鼓舞しながら、実のところ冷静に状況を見極めていた。

 彼女は間一髪難を逃れたミディルクに指示を出し、ギブライ軍後方から迫るバーメディ軍約1万の動向を探らせていた。


『こちらミディルク。カルサ様の予想通りです』


 手にした通信魔石から聞こえたその声に、カルサはニヤリと笑みを浮かべる。


「なーんかバーメディがもたついてるなと思ったけど、やっぱりさすがだよ……伝説の武具ってやつは!」


 開戦当初、バーメディ軍はギブライ、カサナエル両軍の背後をカバーするように、横に長く展開していた。

 しかし、ケニシュヴェルトの力により、カサナエル軍が行動不能に陥った際、ズィグラッドの指示でギブライ軍の後方へと全軍を集約。

 そのまま両軍の力をもって敵防衛軍を突破し、ベンディゴを攻撃するという作戦へ移行していた。


 カルサは自身が敵軍の将であれば、バーメディ軍をベンディゴ軍の左側面から当て、前と横から一気に押し潰す作戦を取るだろうと考え、あえて左を手薄にし、誘い込んで叩くことを計画していた。

 しかし、ギブライ軍のすぐ後方まで進軍していたはずのバーメディ軍は、何故かそれ以上前に進んでは来ず、カルサはそこで彼女の存在を思い出したのである。

 そう、ズィグラッドの放った手練れたちに、囲まれていた彼女は今────


「あーはっはっはっはー!!」


 ギブライ軍のすぐ後方。

 彼らが避けて通ったその場所で、黒き魔槍が猛威を振るっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆新作を書きました◆ 読んでいただけたら泣いて喜びます。 よろしくお願いします。 落ちこぼれの宮廷魔導師、元英雄を飼う~私が拾ったのは、かつて世界を救った最強の人でした~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ