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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

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第404話:急変

 

「くそッ……3番隊との連絡は!?」


「……駄目です! 反応ありませんッ!」


「た、隊長! 15番から17番も消失ッ! 東方面は……全滅ですッ!」


「ちぃッ……!」


 守備隊の本部に、続々と悪い報告が上がり続ける。

 それを指揮するガラッドは、複雑な心境で指示を出し続けていた。

 聞かされていた作戦が、上手くいっているのは間違いない。

 それはいい……のだが、現場にいる守備隊員達は、当然ながら全力を持って賊に対処している。

 それにも拘わらず、賊を捕らえるどころか、相手の人数は勿論、彼らはその容姿すら捉えることが出来ずにいた。

 "これが本物の襲撃であったなら"……ガラッドが、そういった感情を抱くのも無理はない。


 また、ガラッドはこの作戦を聞かされた際、守備隊の警備を緩めることも可能であるとバーンに進言している。

 だが、バーンは通常通りでよいと彼に返していた。

 それに加え、"なんならいつもより厳重にしてもらっても構わない。防衛装置さえ解除してくれればな"……と、そう言ったのだ。

 その時、彼の中に微かな憤りが生まれたのは想像に難くないが、無論バーンがそう言ったのは、下手に警備をいじれば、そこから怪しまれる可能性がある為であり、彼自身もそれを理解はしている。

 それでも、彼には自負があったのだ。

 これまでシュメール城を守護し続けてきたという、確固たる自負が。

 しかし――――


「……認めざるを得ないな」


 この惨状を見たガラッドは、誰にも聞こえぬよう……1人そう呟いたのだった。


『こ、こちら10番隊ベアードッ! 現在5階会議室付近……ぐわぁッ!?』


「どうした!? 10番隊応答しろッ! 10番ッ……た、隊長、恐らく5階までは全て……」


「……残っている戦力を、全てこの階に集中させろ。中央階段で賊を迎え撃つ」


「了解……!」


 シュメール城は、全部で12の階層に分かれていた。

 というのも、階によって天上の高さが違う為、あえて"階層"という表現を用いているのである。

 因みに、守備隊の本部があるのは第10階層部分。

 それより先は、王の私室や会食の間など、王族が使用する重要な部屋が割り当てられている。

 第10階層までは東西に階段があり、どちらかのルートを使用して上へと向かえるのだが、それ以降は中央にしか階段がない。

 故にガラッドは、残る全ての戦力を集中させ、賊が現れるであろう中央階段を死守することにしたのだ。

 当然、これも作戦通りの流れである。

 と、その時――――


「隊長! リナリア様より通信が……!」


「……分かった」


 "そろそろだと思っていたよ"……と、心の中で呟いた後、ガラッドは部下から受け取った魔石を口元へと運んだ。


「代わりました……ガラッドです」


『状況は?』


 余計な台詞はなく、リナリアは単刀直入にそう尋ねる。


「……芳しくありません。既に守備隊の半数以上と連絡が取れなくなっており、現在賊は5階会議室付近にいるものと思われます。これより残存戦力を集中させ、10階中央階段で賊を……」


『なんだ? エバンスから聞かされていないのか?』


「は?」


『ちッ……どこで油を売っているのか知らんが……まぁいい。とにかく、もう上部を守る必要はない。既に陛下は私室ではなく、より安全な場所へと向かっている』


「よ、より安全な? あの……リナリア様? それはどういう……」


 これはガラッドの演技。

 事前に"こうなるだろう"ということは聞かされている。

 ただ、まだ本当にエバンスからは何も聞かされていなかったことと、バーンの作戦があまりにも上手く行き過ぎていたこともあり、そのおかげで自然に驚くことが出来ていたのだった。


『貴様達が知る必要はない。とにかく、陛下は我らが守護している。貴様達は陛下の身を案ずることなく、賊を討つことだけに集中しろ。いいな?』


「は、はっ……承知いたしました」


 通信が切れ、すぐさまガラッドが指示を出そうとしたその時、守備隊本部の扉が開いた。


「隊長!」


「エバンス! お前今までどこに……!」


「言い訳はしません! とにかくお伝えしたいことが!」


「お、おいっ!?」


 エバンスはガラッドの腕を掴み、部屋の隅へと移動した。

 そして、彼の耳元へ手を当てる。


「……兄貴、いまんとこ上手くいってる。転送装置は陛下の私室だ。多分、もうブランス達は移動してる。それから、レヴィさんはロード君とこに向かった。ついでに、親父は既に退避済みだ。陛下は七影と一緒に恐らく地下へ」


「そうか……じゃあ、奴らはもう上の様子に気付けない訳だな?」


 良くも悪くも、七影は孤高の存在であった。

 有事の際、守備隊と連携を取ることになってはいたが、細かな指揮系統が設けられている訳ではない。

 それは、城を守り、結果として王を守るという守備隊の理念と、王の身の安全のみを守護するという、親衛隊の理念の違いによるものである。


「ああ。連絡きたか?」


「さっきな。現状をあるがままに伝えてある。陛下の身を案ずることなく、賊を討つことに集中せよとのことだ」


「予定通りだな……怖いくらいだぜ」


「うむ。とはいえ、ぬるい指示は出せない。微かな疑いすら持たせる訳にはいかないからな。それに、不安に駆られた誰かが、直接リナリア達に指示を求める可能性もゼロではない。やはり作戦通り……眠ってもらうしかないだろう。俺とお前も含めてな」


 それはつまり、バーン達によって倒されるという意味。

 王を討った後も国は続く。

 その時、やはり国を、そして新たな王を守る者が必要となる。

 故に、いかなる理由があろうとも、彼らは反逆者になってはならないのだ。

 バーンはそれを理解しており、そのように作戦を立てていたのだった。


「ああ……俺らがやられんのは最後だろ?」


「先にお前、最後に俺だ。リナリアに虚偽の報告をしてから眠る必要があるからな」


「了解だ。中央階段に向かうぜ」


「俺もすぐに向かう。出来れば衝突前にすれ違えるといいが……まぁ、ブランス達なら上手くやるだろう」


「ああ。俺らの仕事はここまでだ。後はあいつらに任せよう」


「よし……メランド! 残る全隊に通告! 中央階段を最終防衛地点とし、賊をそこで迎え撃つ! 急げ!」


「は……はっ!」


 ブランスの兄達の支えもあり、バーンの立てた作戦は順調に進んでいた。

 シュメール城の兵士達は、その多くが意識を失い、眠るように地に伏せている。

 残る者達も、やがてバーン達の手によりそうなるだろう。

 また、既にこの時、エバンスの読み通り、ブランスを始め、バハムート、バイザー、シェリル、カレンの5人は、王の私室へ転移を完了していた。

 そして、それと時を同じくして――――


「レヴィ」


「ッ! ロード様……ハディス様……!」


 七影に悟られぬよう、ゆっくりと1階へ移動していたレヴィと、ハディスの力を借り、シュメール城へ潜入していたロードが合流する。


「久方ぶりじゃのう。あのダンジョン以来か」


「ええ……あ、ロード様! 実はかなりまずいことが……!」


「……ああ、分かってる」


「あっ……生命の色で既に……!?」


 ロードは個人によって違う生命の色を追い、こうしてレヴィと合流することが出来ていた。

 つまり、彼には今、城の内部にいる全ての生命が見えている。

 当然、一度直接対象を見て、その人物と色を照らし合わせなければ特定は出来ないが、最上階にいるブランス達が転移したことも、城の衛兵に怪我をさせないように進むバーン達のことも……地下へと向かって進むロバート王達のことにも気付いていた。

 そして、その前に現れて"しまった"……よく知る人物の生命の色も。


「あ、あの子は今……!」


「どうやら……ロバート王と一緒みたいだ」


「ッ!? そ、それでは……!」


「多分……ソフィアは奴らに捕まった」


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