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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

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第380話:失踪者

 

「シュメールに……裏……?」


 ……待てよ。

 奴らが関わっているということは、それってつまり――――


「……気付いたかロード」


「ええ……奴らが関わっている以上、その先には……"無能"と呼ばれる人がいる筈です」


「……おいおい、嘘だろ?」


「そう……そして、奴はシュメールという国の名を出した。特定の個人ではなくな」


「つ、つまり、"無能"と呼ばれる人を……国ぐるみで利用――――ッ!?」


 俺を止めるかのように、ブランスさんの拳が机を強く叩いた。


「お、俺の国が"無能"を……アルメニアのようにか!? 冗談じゃねぇぞッ!」


「……落ち着けブランス。まだ完全にそうと決まった訳じゃない」


「ハッ! 聞いてた限り、お前がレアを離れてから大分時間が空いてるよなぁ!? んで、ロードや俺に協力しろってことはだ……ある程度根拠があるってことだろうが! 長い付き合いだから分かってんだよッ! そうなんだろ!?」


「……まぁ、な」


「クソッ!」


「ブランスさん……」


 そうだよな……。

 自分の国が裏で非道を働いていたとしたら、やっぱり悲しいだろうし、きっと同じくらい……悔しいだろう。

 俺だってニーベルグがそうだったら……裏切られたと……。


「聞かせろよ……それ」


「ああ……だが、本当に"無能"が関わっているかについては分かってないんだ。それだけは最初に言っとくぜ」


 ……つまり、"無能"が関わってるかどうかは別として、何かがあるのは間違いないってことか。

 ケルト王であるオーランド様は、確かシュメールのことを"悪い噂のない国だ"って言っていた。

 シュメール王のことも褒めていたし、いったいこの国で何が……。


「気ぃ使わなくていいからよ……さっさと話せや」


「分かった。まぁ、手がかりと呼べるものが何もなかったから、小さな異常を見つける為に、とにかく色々調べてみた。人口の推移から犯罪率、あとは冒険者の出入りや、近年改正された法律なんかをな。で、引っかかったのは二つ。一つは、この国の成長率だ」


「成長率……国がでっかくなったことか?」


「そうだ。5年前、先代シュメール王の死とともに、長男で王位継承者だった現国王のロバートが後を継いだ訳だが……シュメールはそこから急成長を遂げている。首都であるこの町の敷地面積は、5年前に比べて約1.5倍。しかも、そのほとんどがここ1、2年で増設されている。はっきり言って異常だ」


「確かに……あまりにも早過ぎますね」


「ああ。とはいえ、こっちにはまだある程度の説明がつく。例えば有事の際……まぁ、有り体に言えば、どっかの国と戦争になった場合とかだな。その時に使用する予定にあった蓄えを回したとか、冒険者誘致の政策が思いのほか上手くいき、そのおかげで資金に余裕が出来たとか……あとは、これはあくまでも俺の推測に過ぎないが、ロバート王はオリンポス王であるザディアックと仲が良い。だから、表には出ない形での資金援助を受けていた可能性もある」


 なるほど。

 確かにあり得そうな話だ。


「まぁ、それにしたって莫大な金が動いてるのは事実だ。その出どころが不明瞭な以上、怪しいと言わざるを得ない」


「そう言われると……確かにな。で、二つ目は? お前的にはそっちのが引っかかってんだろ?」


「ああ。二つ目は、この国に関連する……失踪者の数だ」


 失踪者……その言葉に、俺はすぐさまソフィアのことを連想していた。

 彼女の両親も、半年ほど前に忽然と姿を消して……まさか、何か関係があるのか?

 まだ本調子じゃないから、家で休むように言って出てきたが……。


「さっきも言ったように、俺はこの国に関することをかなり細かく調べた。これはよろしくない常識になっちまってるが、国がでかくなると人口が増え、それに比例するように犯罪率も上がる。罪を犯すような連中は、人が多く集まる場所に金の匂いを感じるんだろう。で、この町も御多分に洩れず、人口の増加ともに犯罪率が爆発的に増えた。だが、それを見事に抑え込んだ奴がいる」


「あ、バイザーさん……ですね」


「そうだ。シュメール3本指の1人……"爆蓮"のバイザー。後の2人は言うまでもないな」


 シュメール冒険者ギルドマスター、"王翼"のウルフリックさんと、今ここにいるブランスさん。

 3人とも、シュメールでは最高のSSランク冒険者だ。


「バイザーの力は絶大だった。犯罪者に対する一切の慈悲を持たない姿勢……やり方はともかくとして、結果的に犯罪は激減し、町には平穏が戻った。だが、国が変わり始めた時から今に至るまで、全く変わらなかったものがある」


「それが、失踪者の数……ですか」


「そうだ。現在、シュメールの人口は約100万人。で、ニーベルグ領にフォッケンって町があるんだが、こっちは大体300万人ってとこかな。そのフォッケンで出された失踪者の捜索依頼は、1年間でおよそ200件。表に出ていないものもあるだろうから、実際にはその倍以上とみていいだろう。だが、そのフォッケンより人口が少ない筈のシュメールで出された捜索依頼は……年間で400件を超えている」


「よんひゃっ!?」


「分かってるだけで倍かよ!?」


 バーンさんはこくりと頷く。

 これは……確かに異常だ。


「とはいえ、さっきも言ったように、人口が爆発的に増えれば様々な問題が溢れ出す。だからこの数字は、まだまだ落ち着いていないからだとも考えられる。だが、今言った数字はあくまで一般から出されたものだ。つまり、冒険者の数は含まれていない」


「え? あ、それって……」


「フォッケンの冒険者ギルドが把握している未帰還依頼……冒険者が依頼に出たまま、ギルドへ戻らなかった数な。それが年間で約100件。それに対しシュメールは……約500件だ」


「えぇっ!?」


 そんなに……!


「ただ、そもそもシュメールとフォッケンでは冒険者の数も違うし、依頼のレベルも違う。越境合同依頼案が成立している今、ここにはオリンポスやケルトから、それなりに難易度の高い依頼が舞い込んでくるからな」


「それにしたって多過ぎ……す、少なくとも500人が……ってことですよね?」


「いや、こっちの場合はまた別だ。未帰還ってだけで、実際には逃げ出している場合もある。"未帰還イコール死"って訳じゃない。それに、パーティを組んでる場合もあるから、正確な人数は分からない」


「あ、なるほど……」


「因みに、ケルトでの未帰還依頼は年間で約150件程度。オリンポスも似たようなもんだ。シュメールより依頼の数も難易度も上でこの数字だから、どちらもかなり優秀だと言えるな」


「そりゃ……その2国には各地で名を上げた奴らが集まってっからな。今この国に来てんのは、そこら辺からあぶれた連中だ。多少質が悪いのは当然だし、逃げ出す奴が多くても不思議じゃ――――」


「そう……それだ」


「あ?」


「そ、それだって……どういう意味ですか?」


「冒険者ギルド本部は、毎月各支部から報告を受けている。シュメールの数字は、本来なら監査が入っていてもおかしくないものだ。しかし、それにも拘わらず、未だになんの調査も行われていない」


「そ、そりゃ……まさか……」


「ああ……理由の一つとして考えられるのが、さっきブランスが言ったことを、そのまま本部にいる連中も考えてるってことだ。失踪者が多いのは、"人が爆発的に増えたから"であり、未帰還依頼が増えたのは、"依頼に冒険者の質が追いついていない"からだと」


 ……あり得る話だ。

 事実、俺もそう思った。

 バーンさんは俺達がそう考えるように、意図的に話していたんだ。

 そして、それはそのまま……未だに調査が入っていない理由になる。


「……みんな理解したようだな」


 沈黙が、そのまま答えとなっていた。

 そして、バーンさんは静かに言葉を続けた。


「俺は……シュメールが今の状況を意図的に作り出したと、そう考えている。そして、失踪者の中には……シュメールに攫われた人間がいるとな」


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