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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

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第379話:裏

 

「…………マジ?」


 俺とバーンさんからここまでの経緯を聞き終え、しばらく呆然とした後、ブランスさんはやっぱりそう言った。

 因みに、今いるのはブランスさんの家で、既にアスクレピオスによるアプルさんの治療は始まっている。


「マジだ」


「あー……いや、なんか凄いことになってんだろうなーとは思ってたよ? でも……あー……」


 ブランスさんにはまだちゃんと話してなかったからな……こうなるのも無理はない。


「ん……で……その銀髪の……蒼い目をしたねーちゃんが……?」


「バハムートだ。宜しく頼む」


「マジかよ……クソ可愛いんだが」


「フ……その言葉、有り難く受け取っておこう」


 そう……バハムートさんの提案とは、"分身体を一緒に行動させて欲しい"というもの。

 当然断る理由もなく、むしろバハムートさんという強い味方が増えることは大歓迎だった俺達は、その提案を二つ返事で了承し、空間転移が出来る杖であるティエレンの力を使い、みんなでこのシュメールへと戻っていたのだった。


「んじゃ、ここまではいいな?」


「え? あ、いや……まだ全部は飲み込めて……」


「まずは、今回俺がレアに潜入して掴んだ情報から話そう」


「聞く気がないなら聞くんじゃねーよ……」


 ブランスさん……。


「結論から言おう。既にレアは……ティタノマキアの手に落ちている」


「なッ……!?」


「ほ、本当ですか!?」


「ああ、間違いない。アリスの目で"視た"からな。恐らく今いる王族……というか、主な要職についてるほとんどの人間達は、フェイクって奴が作った偽物だろう」


 フェイク……イストに現れたあいつか。

 それにしても、アルメニアに続いて国を二つも……なんて奴らだ……。


「因みにバーン様……レアは今どんな状況なんですか?」


「……酷い有様だよ。財産は没収、男は強制的に徴兵され、女子供は食料と武器の生産……で、それに逆らった奴は公開処刑。かつて平和を謳った国の面影は微塵もない。今はただの戦争国家になっちまってる」


「……恐ろしい連中だな。僅か数人で国を意のままに……」


「ああ……恐らく相当慎重に、そして用意周到に、それなりの時間をかけてゆっくりと乗っ取っていったんだろう。そう考えると、奴らが一旦姿を消したのも頷ける」


 あ……そうか。

 バーンさんと最初に話した時、そこで俺はティタノマキアの存在を知った。

 で、バーンさんはその時、"数ヶ月は大人しかった"って言ってたっけ。

 多分、その間に国を……。


「まぁ、とにかくだ。北の戦乱を招いたのはティタノマキア……それは間違いない」


「いったいなんの目的で……」


「そこまではまだ分からねぇ。チャンスはあったんだがな……」


「チャンス?」


「ああ。ある程度情報を集め終わった段階で、ザワンの奴が公開処刑を止める為に暴れちまったんだ。で、そろそろ潮時と判断し、レアを脱出しようとした矢先……奴らと戦闘になった」


 バーンさん達がティタノマキアと……!


「ザ、ザワン様はご無事で?」


「フッ……あいつは殺したって死なねぇよ。今はアリスと一緒にニーベルグ城にいる。ニーベルグ王には、あいつらから話が伝わっている筈だ。じゃ、話を戻すぞ。俺達が交戦したのは4人。さっき言ったコピー使いのフェイク、名前は分からねぇが、でかい獣の姿をした奴、平面を移動する力を持つジェイドって男、それから……驚異的な再生能力を持つ、チャムリットって女だ。で、ロードに伝えなきゃなんねぇことがある」


「俺に?」


「ああ。そのチャムリットが持ってた剣《つるぎ》についてな」


「剣《つるぎ》……ですか?」


「奴はそれを"リーダーから貰った"と言っていた。そして、禍々しい魔力を放つそいつを……魔剣フルンティングと、そう呼んだ」


 えっ……ま、まさか!?


「メル……!」


 俺はすぐさま黒い手帳へと魔力を込める。

 やがて現れたメルは、真剣な表情を浮かべて俺に頷いた。


「魔剣フルンティング……ここから出て行った内の一つだよ」


「や、やっぱり……ってことは、ティタノマキアとフェンリルは繋がって……!」


「前にそう聞いてたから、チャムリットに"フェンリルって知ってるか?"って聞いてみたんだ。だが、あの様子から察するに、マジで知らない感じだった」


「え……」


 ど、どういうことだ?

 あの時奪われたものだというのは間違いない……ということは、リーダーであるクロスだけがフェンリルと?


「とにかく言えることは、神の使いであるフェンリルと、ティタノマキアにはなんらかの関係があるってことだな。あと気になるのは、奪われた魔剣の内、奴らが俺に対して1本しか使わなかったってとこだ。出し渋ってる感じもなかったし、チャムリットにしか与えられてなかったっぽいが……」


「フルンティングは持ち主の身体に破滅をもたらす代わりに、絶大な力を与える諸刃の剣……確かに再生能力持ちなら、これ以上ないってくらいにもってこいの武器かも。他の魔剣にも結構キツいデメリットがあるから、そこらへんが上手く噛み合わなかったのかもしれないね」


「なるほど……つか、あの手帳にも魂があったんだな」


「あ、紹介が遅れました。この子は手帳の魂で、名前は"納める者"……通称メルです」


「ほー……メルちゃんか。つか、君可愛いね」


「か、かわっ……!」


「俺ブランス。よろしく」


「あ、えっと……中からいつも見てるから、みんなのことは知ってるよ。よろしくね!」


「じゃ、自己紹介はいらないな。で、メル。他の魔剣もあれくらい厄介なのか?」


「う、うん……使い過ぎれば危ないけど、上手く使えばとんでもないことになると思う。対抗出来るのは、伝説の武具を持ってるロードくらい……だと思ってたんだけど、バーンさんってやっぱり強いんだね」


「まぁ、お前が無事ってことは、そういうことだもんな」


「まぁな……フェイクには逃げられたが、獣の姿をした奴の両腕は落としたし、ジェイドって男は顔面に拳をぶち込んで倒した。で、チャムリットは心をへし折って、捕らえる寸前までいったんだが……そこにクロスが現れてな」


「ク、クロスが!?」


「敵の大将が直々にか……で、やったんだろ?」


「……そのつもりだったんだがな。引かざるを得ない事情が出来ちまった」


 引かざるを得ない事情……あっ……。


「ひょっとして……それがバーンさんが闘技大会にいた理由ですか?」


「そうだ。奴は俺に"手を引け"と言った。当然従うつもりはなかったが、クロスは続けてこう言ったんだ。"シュメールに仲間がいる"……とな」


「マジかよ!?」


「ロ、ロード様……!」


「……うん」


 奴らの仲間がこの町に……まずいな。

 顔を隠していたとはいえ、やっぱり闘技大会に出たのは間違いだったかもしれない。


「なるほどな……それでお前は手を引いた訳だ。シュメールの民が犠牲とならぬように」


「そういうことだ。まぁ、今もいるかは分からないがな。それともう一つ……奴がその後に言った言葉も重要だった」


「ク、クロスはなんて言ったんですか?


「……"シュメールには裏がある"。奴はそう言った」


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