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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

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第365話:距離

明けましておめでとうございます(´∀`)

今年も宜しくお願い致しますm(_ _)m

 

『皆さまァッ! 大ッ変ッお待たせ致しましたァァァァアッ! それではこれよりッ……午後の部準決勝を始めさせていただきまァッすッ!!』


「「「「ワァァァァァァァァァアッ!!」」」」


 小休止をとった後《のち》、キャロルの絶叫が会場内に響き渡ると、それに合わせて大歓声がこだまする。

 残った参加者はいずれも強者揃いであり、その期待値が、そのまま歓声へと表れていた。


『さてェッ! 今大会も残すところあと3試合ッ! 果たして初代王者となるのは、突如現れた謎の凄腕冒険者かッ! またはシュメールを支えてきた英雄かッ! それとも黄金世代の嫌われ者かッ! はたまたオリンポスからやってきた最強の刺客かッ! それではッ! まずはこのお2人に登場していただきましょうッ……選手入場ッッ!!』


 鳴り響くファンファーレとともに、2つの扉が同時に開かれる。

 そして、試合場へと向け、2人がゆっくりと歩き出した。


『さぁッ! まずはこの方ッ! 己の前に立ちはだかるのならばッ! そこに一切の慈悲はなしッ! シュメールが誇るSSランク冒険者ァッ……バイザー=アッシェヴェルメェッ!』


「「「「ワァァァァァァァァァアッ!」」」」


 大歓声に一切反応することなく、バイザーは無表情で歩き続ける。

 視線の先にいる……その男を見据えたまま。


『対するはッ! あのモーガン選手を一撃粉砕ッ! 経歴は一切不明だが、やはり実力は本物だったこの男ォッ……アヴァン=ドローウィィィィンッ!』


 ロードもまた、黒いフードとマスクの間から、その鋭い視線を彼へと向けていた。

 因みに、彼らの共通認識として、ソフィアの一件はもう済んだこととなっている。

 バイザーが何も言ってこないということは、つまりそういう意味であったから。

 故に、ロードはもう一つの想いの為に拳を握る。

 そうして、両者は見つめ合ったまま、試合場の中央で対峙した。


「今回は……誰にも止められない」


 まず口を開いたのはバイザー。

 確かに、ソフィアの一件は彼の中でも終わっていた。

 だが、2人の因縁は終わっていない。


「ウルフリックさえ現れなければ、今お前はそこに立てていなかったということを……教えてやる」


 立ちはだかるものに容赦はしない。

 何があろうと。

 それが、1年前に決まってしまった彼のルール。

 自身の命以上のものを奪われた、彼にかけられしある種の呪い。

 深く食い込んだその楔は、愛する者でも抜くことは叶わなかった。

 しかし、解呪の方法はまだ残されていた。

 それは――――


「バイザーさん……お願いがあります」


 彼は強過ぎた。

 それ故に、立ちはだかる全てを駆逐するというルール……己に課した呪い(それ)を守れて"しまった"。

 つまり、それを解く方法はただ一つ。


「俺が勝ったら……ミュンさんと向き合ってください」


 誰かが、彼のルールを破るしかない。


「……似たようなことを言った奴が、どうなったか知ってんだろ? 何やら裏で動いてたみてぇだが、聞かなくても分かる。身体の傷は癒えても……刻まれた恐怖は消えねぇ」


「……」


 1回戦でバイザーと戦い、重傷を負ったフォーメイト。

 アスクレピオスによって、彼の傷は完全に癒えていた。

 だが、バイザーの言う通り、もはや彼の心は……もう元には戻らない。


「お前もそうなる。そして、俺は変わらない」


 "刻まれた恐怖"という言葉。

 恐らくそれは、フォーメイトだけを指しているのではないと、ロードはそう思った。


「ミュンさんは、今でもあなたを待っています。それに、あなたの為にも……」


「もういい」


「ッ!」


 瞬間、バイザーの身体から、強大な魔力が溢れ出した。


「ミュンが話すと決めたなら、それはそれで別にいい。だが、お前のそのッ……何もかもが上手くいくと……そう思い込む甘さに反吐が出るッ!」


 その怒りは、決して過去に触れられたからではない。

 かつての己と重なったのだ。

 全てが順調で、何もかも上手くいっていたあの頃に。

 だからこそ気に入らなかった。

 絶望を知らぬ、その瞳が。

 しかし、バイザーは知らない。


「何もかもが上手くいくなんて……思ってませんよ」


 彼がかつて……"無能"と呼ばれていたことを。


「けど、俺の手が届く限り……まだ間に合うなら俺はッ……!」


「ッ!?」


 両者の魔力の邂逅が、陽炎のように景色を揺らす。

 その光景に、見ている者全てが息を飲んだ。


「最後まで諦めない……それが、俺が選んだ道です」


「ガキがッ……!」


『あ、あのー……く、空気を読んで黙ってましたが……その……も、もう始めても……』


「さっさと始めろッ……!」


『は、はィィィッ! そ、それでは参りますッ! 準決勝第1試合ッ……!』


 直後、両者の身体が、ほんの僅か前に沈んだ。


『始めェッ!』


 1秒にも満たない時。

 両者の間にあった空間が消える。

 10メートルはあった間合いを2歩で詰め、ロードは固く握った左拳を――――


「ッ!」


 瞬間、彼の肌が熱を感じた。


「くぅッ!」


 眼前で上がる爆炎。

 咄嗟に後退し、躱《かわ》すことに成功したのもつかの間、それは彼を追うようにして次々と連鎖する。

 バックステップで下がり続ける中、今度は彼の背後で華が咲いた。


「……ちッ」


 爆発音に混じったのは、バイザーの舌打ちであった。

 前後方からの挟撃。

 捉えたと思ったバイザーだったが、背後で起きた爆発を、華麗な背面跳びで躱す彼の姿がそうさせていた。

 構わず追撃を加えるも、常人とは思えない反応速度と運動神経によって、爆発の合間をするりと抜けられてしまう。

 そうして、遂にロードは試合場の端へと辿り着く。

 その時には既に、"爆蓮"は咲き終えていた。


『ア、アヴァン選手ゥッ! やはり凄ォいッ! あの連続爆破を全てッ……!』


『いやー……見事ですね。しかし、躱しているだけでは勝てません。勿論アヴァン選手もそれを分かっていて、最初の一撃に賭けたようですが……バイザー選手にその上をいかれてしまいました。ここまでの戦いを見る限り、アヴァン選手には遠距離攻撃がありません。ですので、あの爆発地帯をどう乗り越えるのかが鍵になってきます』


『んなるほどッ! バイザー選手は開始から動かず中央にッ! 対するアヴァン選手は試合場の端……両者の距離はおよそ50メートルッ! 果たしてアヴァン選手は、再びバイザー選手へ辿り着くことが出来るのかァッ!?』


「フー……一瞬でも気を抜いたら丸焦げだな……」


 オルグレンが言う通り、確かに初撃で決まればとも思っていたが、まず間違いなく無理だろうと、彼はそう考えていた。

 むしろ、直線的な攻撃はいい的であり、リスクの方が高いくらいであると。

 それ程までにバイザーの魔法は厄介で、無策愚直な突破はまず不可能であった。

 故に、リスクを承知で測りにいったのだ。

 バイザーの魔法に、どれ程の力があるのかを。


「さて……今度はこっちの番だ」


そう呟いた後、ロードはイアリスを引き抜いた。


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