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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

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第335話:足枷

 

 ア、アヴァン?

 それって――――


「おい……今アヴァンって……」


「あ、ああ……じゃあこいつが……」


「たった1週間で、ギルドの月間ランキング2位になった……あの?」


 ギルド内が急に騒がしくなる。

 みんなの意識は既にボクから離れ、黒いフードを被ったその人へと向けられていた。


「つ、つか……バイザーさんの攻撃を片手で……」


「おいバカ……! バイザーさんがあのクズに本気出す訳ねぇだろ!」


「あ、そ、そりゃそうか……」


 た、確かに……よかった……。

 もしバイザーさんが本気だったら、この人だってただじゃ済まなかった筈だ。

 それにしても……なんでボクを……。


「なるほど……お前がそうか」


 低く響いたその声に、再びギルドが静まり返る。

 それは、明らかに怒気をはらんでいた。


「……俺のことを知ってるんですか?」


「ハッ……お前、割と有名人だぜ? いきなり現れた……腕利きのSランク冒険者ってな」


「……そうですか」


「で? その有名人様が……なんでそいつを庇うんだ?」


「ひっ!?」


 バ、バイザーさんの魔力が、さっきより更に強くなって……!

 やっぱりさっきは本気じゃなかったんだ!

 ど、どうしよう……ボクの所為でアヴァンさんが……!


「失礼いたします」


「えっ……あっ!?」


 後ろから女の人の声が聞こえた直後、ボクは抱き上げられ、そのままギルドの受付まで一瞬で連れていかれていた。


「ソフィアちゃん! 大丈夫!?」


「え、あ、ミュ……ミュンさんっ……?」


「ごめんね……私がいなかった所為でこんなことに……」


「そ、そんな……ミュンさんの所為じゃないですっ! ボクが弱いから……そ、それであの……この人は?」


「あ、うん……私、ちょっと配達に出てたの。そしたら、受付を任せていたシドニーちゃんから連絡があったのよ。ソフィアちゃんが……バイザーに酷いことされてるって」


「ソ、ソフィアちゃんごめんね……わ、私じゃどうすることも出来なくて……だからミュンさんを呼んだの。本当にごめんね……」


 シドニーさん……泣いて……。


「ありがとうございます……シドニーさん」


「で、急いでギルドに戻ってきたんだけど、そしたらアヴァンさん達がちょうど戻ってきたところで……」


「まぁ、そういうことです。私の名はアルム。ロー……んんっ! ア、アヴァン様にお仕えしている者です。以後、お見知り置きを」


「え、あ、はい……よろしくお願い……じゃなくって! このままじゃアヴァンさんが……!」


 バイザーさんに殺され――――


「大丈夫ですよ」


 ……え?

 い、いやっ!


「だ、大丈夫って……アヴァンさんがいくら強くても、バイザーさんはSSランクですよ!? あの人は本当に……!」


「ええ、確かに。バイザー様の実力は、間違いなく本物だと思います。ですが、恐らくアヴァン様の方が……上ですから」


「……え?」


 アヴァンさんの方が……上?

 な、何を言って……。


「いつまで黙ってるつもりだてめぇ!」


「これはシュメールの問題だ! よそ者は引っ込んでろ!」


 怒号が飛び交い、ギルドが異様な雰囲気に包まれていく。

 それでもアヴァンさんは微動だにせず、ただ黙ってその場に立ち続けていた。


「おい! さっさとそのガキをこっちに渡せ!」


「そうよ! あんたがいなくなればいいだけなんだから!」


 そんなアヴァンさんに業を煮やしたのか、その矛先がボクらへと向けられる。

 そうだ……ボクがいなくなれば……。


「い、いい加減にしなさいよあんた達! ソフィアちゃんが何したっていうのよ!? この子がどんなに大変だったか知りもしないで……!」


 ミュンさん……。


「そ、それとこれとは話が別なんだよ!」


「ミュンさんには悪いが、今回ばかりは引き下がれねぇ! そのガキは……"無能"なんだぞ!?」


「……"無能"?」


「ッ!?」


 その時、ボクは確かに感じた。

 ほんの一瞬だけ……アヴァンさんの魔力を。

 そして、それは多分ボクだけじゃない。

 だって、アヴァンさんの声が聞こえた瞬間……みんな黙ってしまったから。

 それは……それ程までに……。


「……そういうことだ」


 そんな中で、バイザーさんだけが口を開く。

 そして、アヴァンさんへと一歩近付いた。


「お前が庇ったそのガキは、魔法を使えない"無能"なんだよ。さっき試しに魔法を使わせてみたが……クックックッ……ひでぇもんだったぜ? 操作魔法だっていうからよ、お前の足元に転がってる剣《つるぎ》を渡したんだが、浮かせるだけで精一杯って感じの……」


「浮いたんですね? 少しでも」


「……だったらなんだ」


「なら、あの子は"無能"じゃありません」


 ……え?


「なんだと……?」


「もし本物の"無能"だったら、剣を浮かせるどころか、まともに動かすことすら出来ません。何故なら、自分が授かった本当の魔法を知らないから。そもそも、本物の"無能"なんて……この世界にはいないんです」


 ど、どういう……。


「お前……何を言ってやがる?」


「……とにかく、あの子が"無能"でない以上、あなたが手をあげる理由はない筈です。違いますか?」


 静まり返ったギルド内に、アヴァンさんの凛とした声だけが響く。

 みんな、ただただ驚いていた。

 話の内容がよく分からなかったってこともあったと思う。

 けど、それよりも……あのバイザーさんに意見する人なんて、あの人以外にはいなかったから。


「うぜぇな……お前」


 ……空気が重い。

 そして息苦しかった。

 まるで、喉が焼けてしまったように。


「仮にお前の言う通り、そいつが"無能"じゃなかったとしよう。だがな、関係ねぇんだよ。そいつがクズであることに……変わりはねぇんだからな」


「……どういう意味ですか?」


「足枷がついてりゃ歩きにくい。だから、ぶち壊して外す。ただ……それだけのことだ」


「足枷……」


 そのアヴァンさんの声が、ボクにはひどく悲しげな感じに聞こえた。

 何故だかは……分からないけど。


「ギルドにとって、そいつは寄生虫みたいなもんだ。潜み、喰らい、成長を阻害する……そして、決して表に出ることはない。見込みのないクズはいらねぇんだよ。そいつのように……なんの成長もない奴を排除するだけだ。分かったらそこをどけ。じゃなきゃ……お前も潰す」


 バイザーさんの手が赤く……!

 本気だ……本気でアヴァンさんを……!


「すいませんが……」


「……ッ!」


「どく訳にはいきません」


 ……空気が……震えていた。


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今こそ放て!怒りのアヴァンストラッ○ュ
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