↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

331/563

第323話:似

 

 ラムを右腕に装着し、3人を手帳に戻した後、レヴィと2人で屋敷の外へと出る。

 うん……本当にいい天気だ。


「日差しは強いけど、そこまで暑くはないね」


「ですね。絶好の決闘日和といったところでしょうか」


「決闘日和か……言葉だけ聞くとなんか物騒だなぁ」


「ふふっ……確かにそうですね」


 そんなことを話しながら2人で歩くと、すぐにレヴィが鎖で作ってくれた闘技場へと辿り着いた。

 そのまま昨日と同じように設置されたテーブルへ行くと、抽選箱やティーカップ、クッキーなどのお茶請けが既に準備してある。

 さすがはレヴィ。仕事が早い。


「じゃ、まずはメルを……よっと」


 俺は腰にぶら下げてある手帳を手に取り、いつものように魔力を込める。

 手帳から黒い光が溢れ出し、すぐに黒いワンピース姿のメルが現れた。


「ん……あ、おはようロード! レヴィも!」


「おはようございますメル様」


「おはようメル。今日も頼むな」


「うん! あ、そうそう、クラウソラスとトライデントから伝言があるの」


「伝言? 2人から?」


「えっとね、クラウソラスは自分を無理に呼ばなくてもいいって言ってたよ。魔力の消費も大きいし、他に出たい人もいるだろうからって」


 クラウソラスがそんなことを……。


「そっか……なら、そうさせてもらおうかな」


 確かにクラウソラスの言う通り、彼女に生命を与える場合、他の武具達の10倍くらい魔力が必要になる。

 昨日は話を聞く為に呼び出したけど、彼女がそう言っているのなら今日は他の人に……。


「でね、トライデントは棄権するって」


「えっ? なんで?」


 対戦相手だったブリューナクが棄権したから、まだ1回も出てないのに……。


「なんかね、そういう気分じゃなくなったんだってさ」


 き、気分……まぁ、トライデントらしいといえばらしいか。


「そうか……あ、じゃあさ、クラウソラスの代わりにと言ったらアレだけど、トライデントを呼ぼうか」


「あ、それいいかも! 色々知ってる人がいた方があたしも助かるし! じゃあ呼ぶね! トライデントー!」


 メルの呼びかけに応え、彼女が持つ手帳から青い三又の槍が姿を現す。

 俺はメルからそれを受け取り、すぐに生命を与えた。


「……む、久しいな主《ぬし》どの。呼んでもらえて嬉しいよ」


 確かになんだか久しぶりな気がする。

 最後に会ったのはいつ――――


「むあっ!?」


「ふふ……こうするのもいつ以来か……」


 ちょっ!? いきなり抱きっ!?

 顔……柔らかっ……む、胸っ……!


「ト、トライデント様っ!」


「フ……そう喚くなレヴィ。たまにはよいではないか。お主はいつでも抱けるやもしれんが、妾《わらわ》はこういう時でもなければ……なぁ主《ぬし》どの?」


「むぐっ!?」


 い、息がっ!


「うぅー……!」


「クックックッ……そう睨むなレヴィ。ほれ」


「ぶはっ!」


「ロ、ロード様!」


 あ、危なかった……いろんな意味で。


「あまり待たせると後が面倒であるし、少々物足りなくはあるが……まぁこの辺にしておくとしよう」


 ほっ……。


「ねぇねぇ、トライデントはレヴィみたいにロードのことが好きなの?」


「メ、メル様!?」


「ん? ああ……好いておるよ。まぁ、レヴィのそれとはまた違うがな」


「え? どう違うの?」


「ふむ……知りたいのなら教えよう。レヴィのそれは男と女の……」


「ちょっ! トライデント様!」


「ふふ……冗談だ」


 今絶対本気だったろ……。


「えー!? なになにどういうこと!?」


「メルよ。人と関わり続ければ、いずれお主にも分かる時が来る。要するに、お主にはまだ早いということだ」


「むー……一応何千年も生きてるんですけど」


「生きた時が問題なのではない。想いとは育むものだ。そしてそれは、誰かと共に生きることで始めて理解出来る。お主は孤独だった……故に、今から学ぶのだ。主《ぬし》どのとレヴィを通してな」


「うーん……よく分からないけど分かった!」


「フ……今はそれでよい。疑問が消えれば興味が失せるでな。さて、では始めてくれ主《ぬし》どの。妾《わらわ》は観客として見届けることにする」


「あ、ああ……というか、本当によかったのか?棄権して」


「うむ。もとより妾《わらわ》はそう乗り気でもなかったからな。まぁ、せいぜいブリューナクと当たり、慌てふためく奴の顔を見たい……といった程度の興よ」


 ブリューナクにいったいなんの恨みが……。


「それも叶ったことだし、勝ち上がった者が9名で1人余るとなれば……身を引くには十分な理由であろう?」


 なるほど……そういうことか。


「ん、分かった。じゃ、折角だしゆっくりしていってくれ」


「そうさせてもらおう。レヴィ、妾《わらわ》は紅茶を飲みたいのだが……」


「あ、はい。かしこまりました。すぐに」


「感謝する。ではメルよ、今日は妾《わらわ》の膝を貸そう」


「ほんと!? わーい!」


 トライデントが白い椅子に腰掛けると、メルがぴょんとその膝の上に飛び乗る。

 まるで親子のようだ。


「ふかふかだぁ!」


「ふふ……うい奴め。さぁ主《ぬし》どの、引くがよい」


「ん」


 トライデントが傾けてくれた抽選箱に左手を入れる。

 残るは8名。

 さて……最初は誰かな?



 ―――――――――――――――――――――



「1人目は……ゲイボルグだ」


「ほーい!」


 魔槍の名を告げたロードに応え、メルは手にした手帳をめくっていく。

 そうして――――


「おいでゲイボ……うわっ!」


「おっと!」


 開かれたページから勢いよく飛び出した黒い槍を、瞬間的にロードの右手が掴む。


「あ、あぶっ……もー! なんか昨日もこんな感じじゃなかった!?」


「はは……やる気満々なのは変わらずか。もうちょっとだけ待ってろよゲイボルグ。今対戦相手を引くからな。じゃあ、これにしよう……えーっと2人目は……あー……」


「む、どうした主《ぬし》どの」


「あ、いやー……大丈夫かなって」


「大丈夫って……どういう意味ですか?」


「なんか似てる気がするんだよね。ゲイボルグとこの人……」


 ロードはその名が記された紙をじっと見つめる。

 彼は以前からそう思っていた。

 笑い方やその……戦いが好きな性格が似ていると。


「まぁ、引いちゃったんだから仕方ないか……何かあれば……」


 すぐに止めると、そう決めて。


「メル……ミョルニルを頼む」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。