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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

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第305話:初撃

 

「さっさと出てこいや!」


「ここにいんのは分かってんだッぞらぁッ!」


「舐めたマネしてんじゃねぇアァンッ!?」


 普段は静かな町の外れに、ガラの悪そうな男達の怒号が飛び交っていた。

 彼らはその寂れた宿屋を包囲したまま、中にいるであろう不届きものへ向けて更に声を張り上げる。


「サマやった奴がどうなるか……今からたっぷり教えてやんよぉ!」


「出てこねぇんなら店ごと焼くぞコラァッ!」


「ちょっ……店は勘弁してくだ……!」


「うるせぇ! つか、別にいいじゃねぇか。謝礼は弾むって言われてんだろ? この際建て直せよこんなオンボロ」


「え、いやぁ……その……」


「あ? なんか文句あんのか?」


「め、めっそうもない! ははは……!」


 ティア達のことをジハードへと密告した宿屋の主人だったが、彼らの関係はあくまで暴力の上に成り立っている。

 この町で生きる以上、誰も彼らには逆らえない。

 ジハードの不都合は、そのまま彼ら住民へと向けられる為である。


「にしてもよぉ……マジであのズィードなんかね?」


 既に彼らは支配人のジジョーや、その手下達からおおよその経緯を聞いていた。

 その中で上がったズィードの名。

 いかにジハードの構成員とはいえ、その名が意味するところは大きい。


「ハッ! おめぇ馬鹿か? んなもんあいつらのでまかせに決まってんだろうが。てめぇのミスの言い訳に適当こいてるだけだっての」


 しかし、ミスがそのまま失脚、ないし処分へと繋がるのが彼らの常。

 故に、それを軽減しようとする嘘や言い訳は日常茶飯事であった。


「だ、だがよぉ、あのビビり方は普通じゃ……」


「だーかーらー! SSSランクが都合よくこんな町にいる訳ねぇだろ! ピュアか!? まぁ、多少できる奴らなのは間違いねぇが、人数がこんだけいりゃ喧嘩にすらならねぇよ」


「いや、まぁ……」


「ごちゃごちゃ考えんな。俺ら下っ端は上のいうこと聞いてりゃいいんだよ。さっさと終わらせて、酒飲みながらポーカーの続きでもやろうぜ?」


「そ、そうだよな……うん……」


「おい……何をくっちゃべってやがる」


「「「「「ピ、ピリオドのアニキ……!」」」」」


 ジハード傘下の暗殺ギルドは数多くあり、今宿を取り囲んでいるのは、その中の一つである"エンドポート"に属する者達であった。

 ピリオドはそのギルドマスターであり、ジハード全体においても名の知られた猛者である。


「こんなもんに時間掛けてる暇はねぇんだよ。出てこねぇんなら……さっさと燻り出せ」


「へ、へいっ!」


「今すぐに……!」


「ちッ! どこのアホだかは知らねぇが、こっちはそれどころじゃねぇんだよ……クソがッ!」


 通常、ピリオドほどの男がこのような場に立つことはまずない。

 しかし、彼には……というよりも、今のジハードには、全てにおいてしくじることの出来ないある事情があった。

 それ故に、ジハードという巨大組織からすれば、ほんの些細な出来事であるこの場に、わざわざピリオドが出向いたのである。


「ア、アニキ……?」


「な、何かあったん……」


「るせぇッ! とにかくさっさと引きずり出して、これ以上ないくらいに痛めつけろ! メスガキでも容赦すんじゃねぇぞ! 俺らを舐めたらどうなるか……この世全てに分からせるようになぁ!」


「は、はいッ! おいッ! 早く炎系の奴らを集め……!」


「出てきたぞ!」


 瞬間、ピリオドを含めた全員の視線が、寂れた宿の入り口へと向けられる。

 現れたのは2人の男。

 巨剣を背負った1人は顔を隠し、茶色い服を着たもう1人は、気怠そうな表情で辺りを見回していた。


「あ……やっぱりあの顔……あれ本物じゃ……」


「うるせぇぞ馬鹿! アニキ、情報通りです。奴らに間違いありません」


「他に女が2人いる筈ですが、姿が見えませんね」


「裏口は?」


「既に固めてあります。逃げ場はありません」


「フン……女を庇う為に出てきたか。おいてめぇら!」


「あん?」


 応えたのは茶色い服を着た男。

 彼は腕を組んだまま、その鋭い視線をピリオドへと向けた。


「派手にやってくれたなぁ? もう情状酌量の余地はねぇぞ……庇ってる女もな! 殺してくださいと泣き叫びながら懇願しようが、俺らは絶対にてめぇらを許さねぇ。クックックッ……生きたまま地獄を味あわせてやるよ」


「ハッ……いかにも三下が吐きそうな台詞だな」


「……なんだと?」


「分かりやすく言ってやろうか? "雑魚に用はねぇ"、"さっさと上を連れてこい"、"お前じゃ話にならねぇよ"……これだけ言や分かるか?」


 一瞬生まれた静寂に、プチッ……と、何かが切れる音がした。


「……潰せッ!!」


「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」」」」」


 100を優に超える男達の咆哮が、2人の男へと全て向けられる。

 大気と地面は激しく揺れ、それがそのまま彼らの怒りを表していた。


「じゃ、おっさん左な」


「あいよ」


 魔法を発動させ、剣や斧を振りかざす男達が雪崩のように迫る中、彼ら2人は静かに魔力を滾らせる。

 そして――――


「「「あばッ!?」」」


「「「おどふッ!?」」」


 直後、大量の人間が宙を舞うのだった。


「……は?」


 放たれた魔法はことごとく消失し、振りかざした刃は彼の前でその動きを止める。

 ズィードの無力化魔法の前に彼らの攻撃は意味を持てず、返しの拳が容赦なく複数の鳩尾へと叩きこまれていた。

 また、隣に立つ男へと向けられた魔法は、何かに弾かれ空へと消える。

 直後、彼の拳が虚空を穿つ。

 誰にも触れていない筈のその拳は、屈強な男達を軽々と吹き飛ばしていた。


「な、なんッ!?」


「こ、こいつら……!」


 先程までの勢いはあっさりと2人の拳によってかき消され、一気に不穏な空気が彼らを包む。


「おっさん……やり過ぎんなよ?」


「ハッ! これでも加減してんだよ。剣を抜かないだけありがたく思ってもらいたいもんだぜ」


 2人は同時に足を前へと出す。

 その分だけ、男達は後ずさっていた。

 既に分かってしまったのだ。

 どれだけ人数がいようとも、この2人には勝てないと。


「あ……な、何をびびってやがるッ!」


 そしてそれは、ピリオドも同じであった。

 故に吼える。


「てめぇらはジハードの一員なんだぞッ!? さっさとそのクソどもを……!」


「ア、アニキ……やっぱりあれ……本物っすよぉ! 俺見ましたもん! 情報誌であいつの顔ぉ!」


「隣のやつもやばいっすよ! に、人間をあんな……あんな簡単に……!」


「魔力の桁が違い過ぎる……無理だ……勝てっこねぇ!」


「う、うるせぇ! 本物だろうが偽物だろうが! それがどんだけ強かろうが! ジハードにたてつくやつぁぶっ潰す! 特に今は……!」


「い、今はって……?」


「ッ! いいから早くやれッ! それとも……俺に殺されてぇか……!」


「「「……ッ!」」」


「おーい」


「あぁッ!?」


「やるの? やらないの?」


 再びブチッ……と、何かが切れた。


「こッ……のぉ……殺せぇぇぇぇえッ!!」


夏休み……欲しい……。

という訳で、次回更新は来週の水曜日となります。

ご了承ください……!


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