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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

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第301話:音

 

 支配人が部屋から出た瞬間、3人の男の視線が同時に私へと向く。


「さぁて……始めるか」


「ひっひっひっ! たまんねぇなおい!」


「怖がらなくてもいいんだよぉ? おじさん達がやさぁしく……おっとよだれが……」


 うへぇ……気持ち悪い……。


「にしても、人間を操る……か。精神操作系は厄介なんだよなぁ」


「だが、その分制約も多いだろぉ? 条件を満たさないように拘束しちまおうぜ。んで、あとはお楽しみだぁ……」


 あーキモッ!

 っていうか、全然違うんだけどね……。

 でも、そう思ってくれていた方がやりやすいかもしれない。

 相手の魔法は分からないけど……なんとかしてここから脱出しなきゃ。


「よし……俺の魔法でやる。囲め」


「あいよ」


「へいへい……俺らの魔法じゃ下手すると死んじまうからなぁ」


 真ん中の奴が拘束に適した魔法で、左右の2人は単純な攻撃系かな……だったら……。


「それ以上近付いたら……操るよ」


「……!」


「ほぉ……」


 3人の足が止まり、一気に表情が変わる。

 警戒は増したけど、牽制にはなる筈だ。


「いい目してるねお嬢ちゃん……修羅場を潜ってきた目だ」


「効果範囲があるっぽいな。じゃなきゃもう使ってるだろ」


「ああ……あとは触れなくてもいけるかどうかだな。ハッタリの可能性もある」


「やっぱり一発ぶち込んじまうか。急所を外せば……死なねーだろ」


 そう言った右の男から魔力が流れ出し、手から棘のようなものが飛び出した。

 どうやらあれを飛ばして攻撃するっぽいね……もし当たっちゃったら終わりだ。

 でも、逆にチャンスかもしれない。


「その方が確実か……だが、しくじるなよ? てめぇの巻き添いでジジョーさんにぶっ殺されたくはねぇからな」


 よし……作戦は決まった。

 勝負は一瞬……!


「分かってるって。ごめんよお嬢ちゃん。ちょいと痛いかもしれねぇが勘弁……なッ!?」


 右の男の手がこちらに向いた瞬間、私は真ん中の男へ向けて走り出す。

 直後――――


 "キュインキュインキュインキュイーン!"


 右の男へと伸ばした、私の手についている腕輪がけたたましい音を上げていた。


「ほ、本物じゃねぇか!」


「離れろ! 操られるぞッ!」


 本当に魔法を使おうとしただけで鳴った!

 よし、これなら……!


「こんのッ!」


「ば、馬鹿撃つ……がッ!?」


「ああっ!?」


 右の男から放たれた棘が、しゃがんだ私の頭の上を通過して左の男に突き刺さる。

 私は手を前へと伸ばし、再び魔力を練り上げた。


 "キュインキュインキュインキュイーン!"


「うッ!?」


 正面にいた男が動揺した隙を突き、私はその横を通り抜けて扉へ――――


「ッ!?」


 なッ……か、身体が!?


「……ふぅ。念の為に張っといてよかったぜ」


「ぐッ……うぅッ!?」


 だ、駄目……身体が全然動かない!

 何かに縛られ……ッ!?


「こ、これは……!」


 何かがキラキラ光って……い、糸!?

 よく見ないと分からないくらい……透明な糸が身体中に……!


「んぎぎッ!」


「やめときな。そんだけ絡まっちまったらもう抜けられねぇよ。無理すっと、逆に嬢ちゃんの身体が切れちまうぜ?」


「あ、あんたの魔法は……!」


「魔法戦は何があるか分かんねぇからな……保険として、俺の背後に糸の結界を張っといた訳よ」


 やられた……!

 こいつら私なんかよりずっと慣れてる……人間同士の戦いに!


「おい、ブナイ。ベリーズは?」


「わ、わりぃ……刺さった勢いで吹っ飛んで、壁に頭を打ったみてぇだ。完全にのびちまってる」


「やれやれ……ま、拘束出来たからよしとしよう。で、お前は自由に動けるか?」


「え? あ、ああ……大丈夫みたいだ」


「ふむ……俺の方も問題ねぇし、あの距離でなんもないってことは……こりゃ精神操作系じゃなさそうだな」


 や、やばい……。


「仮にそうだとしても、触れられなければ問題ないってとこかね。さっきの動きはフェイク……だろ? お嬢ちゃん?」


 バレた……!


「残念だったなぁ……いい線いってたのに」


「しっかし、やっぱりただの小娘じゃなかったって訳ね。あの一瞬でここまで……危ねぇ危ねぇ……」


 くッ!

 本当に全然動かないぃ……!


「てかよ、こいつの魔法は結局なんなんだろうな?」


「それは分からねぇが……使う振りだけだったってことは、戦闘向きじゃないか、もしくは使えない状態にあったかのどっちかだろう。まぁなんにせよ、このまま吊るし上げて視界を塞いじまえばいい。それだけで大抵の魔法を封じることが出来るからな」


 やばいやばいやばい!

 多分2人が助けに来てくれるとは思うけど、私を人質にされたら手が出せなくな――――


「んんッ!?」


 目と口に……あっ!?

 か、身体が勝手に動いて……!


「ついでに口も塞がせてもらうぜ? そういう魔法もあるんでな」


「ひょー! いい格好だぁ! 最高にエロスだよッ! 手は天井に……足は床に繋がれてよぉ! あー! たまらねぇぜッ!」


「うるせぇなぁ……ほれ、さっさと剥いちまえ。ある程度弱ったところで尋問を始めよう。元気なうちに聞いても……無駄だからな」


「オッケー! 役得役得ってなぁ!」


 や、やだやだやだ!


「ぐむー!!」


「無駄無駄……防音だって言っただろ? 誰も助けにきちゃくれねぇよ」


「心配すんなぁ……この棘でスパッと服を掻っ捌いて、ズバッとやっちまうからよぉ! 痛くない痛くない……ひっひっひっ!」


「う……」


 嫌な記憶が蘇ってくる。

 あいつの顔と声も。

 思い出したくないのに。

 やだ……やだよ……。

 助けて……ロードさん!


「んじゃスパッと……」


「……ぁぁぁぁぁあッ! んッ!?」


 えっ!?


「おわぁッ!?」


「なッ……なんッ!?」


 私の服に棘が触れた瞬間、凄まじい音とともに誰かの雄叫びが聞こえてきた。

 それは、どこかで聞いたことのある――――


「…………事情は分からねぇが、やることは分かった」


 あ……。


「て、てめぇは!」


「なんでここにいやがる!? 向こうの連中をどうし……!」


「うるせぇぞ外道ども。まったく……やっぱこの町は好きになれねぇ」


 ……なんでここにいるのかは分からない。

 けど、この人は間違いなく……!


「うぃーぶばん!」


「ぷっ……おいおい、ちょいと会わないうちに忘れちまったか? 俺はそんな名前じゃねぇよ」


 こ、このぉ……!


「ばぁふぁー!」


「ハッ……馬鹿でもねぇよ。俺の名前はなぁ……ズィードってんだ」


「は、はぁ!? ズィおばッ!?」


 ひっ!?

 な、何かが砕けるような凄い音が……!


「み、見えなぼすッ!?」


 ま、また……!

 まさか……もう倒しちゃったの!?

 こ、こいつらはそんなに弱く……やっぱりこの人――――


「今度は相手をよく見てから喧嘩するんだな。まぁ……次はねぇがよ」


 強過ぎる……!


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