第271話:勘違い
水曜日は更新出来ず……すいませんでした(´・ω・`)
「はーい。じゃ、まずはジュワユーズからね」
メルが持つ手帳から、かつてヨルムンガンドが纏いし冥界の魔力を引き裂いた青い剣が現れる。
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ジュワユーズ 尊剣
神が創りし伝説の青き剣。
空気や魔力など、普通なら斬れないものを断つ力を持つ。
神剣デュランダルと同じ材質から創られているが、生み出した神が違う為に能力が変わったらしい。
ただし、物質は斬ることが出来ない。
武器ランク:【SS】
能力ランク:【SS】
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「効果とか制約は違うけど、結果的に生物を斬れないってとこはデュランダルと同じか」
「どちらも何かを斬れない代わりに別のものを斬ることが出来る……そんな感じですね」
ロードはジュワユーズに生命を与える。
すると、青く輝いた尊剣は宙へと浮かび、すぐに人の形となって地面に降り立った。
「へぇ……なかなかいいじゃない」
まるでデュランダルをそのまま女性にしたかのようなジュワユーズは、満足そうにそう言いながらニヤリと笑う。
長く伸びた青い髪に黒い肌。
身につけている黒い鎧はデュランダルのそれとよく似ており、やはり彼女達が近しい存在であることを表していた。
「褒めてあげるわ……ロード」
ただし、その性格を除いて。
「あ、ありがとう。よろしくなジュワユーズ」
「ええ。さ、早くガラドボルクを呼び出して頂戴。私の相手になってしまった……その哀れな剣をね」
「はは……凄い自信……メル頼む」
「あ、うん! ガラドボルグー」
彼女の呼びかけに応え、手帳より金色の柄が現れる。
そうして引き抜かれた天剣は、剣のままでも凄まじい存在感を周囲に放っていた。
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ガラドボルグ 天剣
神が生み出した伝説の剣。
握りし者はこの世全ての戦いを統べるという伝承があり、それ故に天を掴む剣……天剣と、そう呼ばれている。
ガラドボルグの能力。それは、"斬気の具現化"。
より簡単に言うならば、"斬る"と念じただけでそこに斬撃を発生させる力である。
ガラドボルグにはもはや剣を振るうという動作すら必要なく、倒すべき敵はその思いのままに切り伏せることが可能であった。
エクスカリバーとは兄妹剣にあたり、形がよく似ている。
武器ランク:【SSS】
能力ランク:【SSS】
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生命を与えられたガラドボルクは、現れたと同時に鋭い視線をジュワユーズへと向ける。
研ぎ澄まされた刃のような、その眼差しを。
「エッジキングじゃないけれど……運が悪かったわね」
それでもジュワユーズは、臆することなくそう言い放つ。
無論、彼女とて知っていた。
"天を掴む剣"と渾名されるガラドボルクの強さを。
だが、それでも尚彼を超えられるという自信があっての発言である。
「フ……ならばその言葉、我が斬気にて断ち切ろう。主人」
「ん、じゃあ2人ともこっちへ」
ロードを挟み、闘技場で両雄は向かい合う。
既に剣を抜き、不敵な笑みを浮かべながら構えをとるジュワユーズに対し、ガラドボルグは腕を組み、目を閉じて静かにその時を待っていた。
「ジュワユーズは凄い自信があるみたいだけど……」
「ええ。ジュワユーズ様の能力は、通常斬れないものを斬る力です。ですので恐らく、ガラドボルク様の具現化された斬撃も……それ故の自信かと」
「クックックッ……ジュワユーズ的には相性がいいと、そう思っている訳か。だが、果たしてあの男相手に通じるかな?」
「あ、やっぱりクラウソラスから見ても、ガラドボルグって凄いの?」
「無論だ。強さにも種類がある。ロードの言葉を借りれば、強さの方向性というやつだな。私がそうであるように、あれもまた……ある方向性においての最強ぞ」
クラウソラスが言うように、強さとはそう単純なものではない。
特に伝説の武具達は、それぞれがそれぞれに最強なのである。
邪悪を完全に断つクラウソラス、肉弾戦を極限まで高めたヘラクレス、海の中ならば誰も敵わないであろうトライデント、速さにおいて他の追随を許さない雷速のブリューナク。
このように、挙げ始めればきりがない。
そしてガラドボルグもまた……そんな最強の中の1人なのである。
だが、もちろんそれは――――
「とはいえ、ジュワユーズとて伝説の剣。誰にも斬れないものを斬る……あやつにしか成せぬということは、それもまた最強と言えるのかもしれんな」
「どっちが勝つんだろう……レヴィはどう思う?」
「うーん……分かりませんが、一つだけ確かなことがあります。ガラドボルグ様は剣を抜いておられません。それはつまり……」
「あ、最初から能力を使うってこと?」
「だろうな。あえて剣を抜かぬことで、それをジュワユーズに教えているのだろう。自分は最初から能力を使う……さぁ防いでみよ、とな」
「はい。ガラドボルグ様の斬気を、ジュワユーズ様が断ち切れるかどうか……そういう戦いになりました。いえ、ジュワユーズ様が持ち込んだ、と言った方が正しいかもしれません」
「じゃあ、やっぱりあれって挑発だったんだ」
「うむ。まぁ、もともとああいう性格なのやもしれぬがな。ガラドボルグとまともにやり合うとすると、単純な剣戟の最中に飛んでくるであろう……見えない斬撃を防がねばならん。だが、それは至難の業。故にジュワユーズは、暗に"私の能力ならお前の能力を斬れる"と伝えたのだろう。ガラドボルグはそれを受け、能力のみで戦いを制すことにした訳だ」
「はえー……最初から始まってるんだね」
彼女達の言う通り、ジュワユーズが仕掛け、ガラドボルクはそれに応えた。
故に、勝負は一瞬。
「斬気を斬る……素敵な響きだと思わない?」
剣を構えたまま、ジュワユーズはそう言って笑みを浮かべる。
「フ……響きだけはな」
ガラドボルグはやはり腕を組んだままそう言った後、静かにその瞼を開けた。
「……始めッ!」
ロードの右腕が振り下ろされた刹那、ガラドボルグの身体から膨大な量の魔力が迸る。
「……ちッ」
直後、ジュワユーズの笑みが歪む。
肌を突き刺すような……その魔力によって。
「いくぞジュワユーズ。見事受け切ってみせよ」
「偉そうに……上等よ。お望み通りにしてあげる」
ジュワユーズがそう答えた瞬間、ガラドボルグの意思が彼女に向けて放たれる。
三日月型のそれは誰の目にも映らぬまま、2人の間にある空気を引き裂いていく。
ジュワユーズはそれを感じ取り、腰を落として力を溜め、そこから剣を一気に振り上げた。
そうして振り下ろされた青き刃が見えない斬撃と邂逅した瞬間、刃と刃が金属音を響かせる。
「ッ!?」
「……貴公は一つ勘違いをしている。いや、貴公"ら"か」
斬撃を捉えることには成功した。
だが、音が鳴ったということは――――
「き、斬れ……ない!?」
「我が能力は"斬気の具現化"。故に、それは既にそこに在る。貴公の剣では……斬れないのだよ」
「うッ……あぁぁぁぁぁあッ!?」
斬気は止まらず、ジュワユーズは地面に2本の轍を刻みながら後方へと流されていく。
そして――――
「のッ!? ぎゃッ!」
鎖に足を取られ、後頭部から地面に叩きつけられたのだった。
「場外! 勝者、ガラドボルグ!」
「ジュワユーズよ……運が悪かったな」
天剣は、そう言って瞼を閉じた。




