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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第6章:木漏れ日の時

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第271話:勘違い

水曜日は更新出来ず……すいませんでした(´・ω・`)

 

「はーい。じゃ、まずはジュワユーズからね」


 メルが持つ手帳から、かつてヨルムンガンドが纏いし冥界の魔力を引き裂いた青い剣《つるぎ》が現れる。



 ―――――――――――――――――――――



 ジュワユーズ 尊剣


 神が創りし伝説の青き剣《つるぎ》。

 空気や魔力など、普通なら斬れないものを断つ力を持つ。

 神剣デュランダルと同じ材質から創られているが、生み出した神が違う為に能力が変わったらしい。


 ただし、物質は斬ることが出来ない。


 武器ランク:【SS】

 能力ランク:【SS】



 ―――――――――――――――――――――



「効果とか制約は違うけど、結果的に生物を斬れないってとこはデュランダルと同じか」


「どちらも何かを斬れない代わりに別のものを斬ることが出来る……そんな感じですね」


 ロードはジュワユーズに生命を与える。

 すると、青く輝いた尊剣は宙へと浮かび、すぐに人の形となって地面に降り立った。


「へぇ……なかなかいいじゃない」


 まるでデュランダルをそのまま女性にしたかのようなジュワユーズは、満足そうにそう言いながらニヤリと笑う。

 長く伸びた青い髪に黒い肌。

 身につけている黒い鎧はデュランダルのそれとよく似ており、やはり彼女達が近しい存在であることを表していた。


「褒めてあげるわ……ロード」


 ただし、その性格を除いて。


「あ、ありがとう。よろしくなジュワユーズ」


「ええ。さ、早くガラドボルクを呼び出して頂戴。私の相手になってしまった……その哀れな剣《つるぎ》をね」


「はは……凄い自信……メル頼む」


「あ、うん! ガラドボルグー」


 彼女の呼びかけに応え、手帳より金色の柄《つか》が現れる。

 そうして引き抜かれた天剣は、剣《つるぎ》のままでも凄まじい存在感を周囲に放っていた。



 ―――――――――――――――――――――



 ガラドボルグ 天剣


 神が生み出した伝説の剣《つるぎ》。

 握りし者はこの世全ての戦いを統べるという伝承があり、それ故に天を掴む剣《つるぎ》……天剣と、そう呼ばれている。


 ガラドボルグの能力。それは、"斬気の具現化"。

 より簡単に言うならば、"斬る"と念じただけでそこに斬撃を発生させる力である。

 ガラドボルグにはもはや剣《つるぎ》を振るうという動作すら必要なく、倒すべき敵はその思いのままに切り伏せることが可能であった。


 エクスカリバーとは兄妹剣にあたり、形がよく似ている。


 武器ランク:【SSS】

 能力ランク:【SSS】



 ―――――――――――――――――――――



 生命を与えられたガラドボルクは、現れたと同時に鋭い視線をジュワユーズへと向ける。

 研ぎ澄まされた刃のような、その眼差しを。


「エッジキングじゃないけれど……運が悪かったわね」


 それでもジュワユーズは、臆することなくそう言い放つ。

 無論、彼女とて知っていた。

 "天を掴む剣《つるぎ》"と渾名されるガラドボルクの強さを。

 だが、それでも尚彼を超えられるという自信があっての発言である。


「フ……ならばその言葉、我が斬気にて断ち切ろう。主人《あるじ》」


「ん、じゃあ2人ともこっちへ」


 ロードを挟み、闘技場で両雄は向かい合う。

 既に剣を抜き、不敵な笑みを浮かべながら構えをとるジュワユーズに対し、ガラドボルグは腕を組み、目を閉じて静かにその時を待っていた。


「ジュワユーズは凄い自信があるみたいだけど……」


「ええ。ジュワユーズ様の能力は、通常斬れないものを斬る力です。ですので恐らく、ガラドボルク様の具現化された斬撃も……それ故の自信かと」


「クックックッ……ジュワユーズ的には相性がいいと、そう思っている訳か。だが、果たしてあの男相手に通じるかな?」


「あ、やっぱりクラウソラスから見ても、ガラドボルグって凄いの?」


「無論だ。強さにも種類がある。ロードの言葉を借りれば、強さの方向性というやつだな。私がそうであるように、あれもまた……ある方向性においての最強ぞ」


 クラウソラスが言うように、強さとはそう単純なものではない。

 特に伝説の武具達は、それぞれがそれぞれに最強なのである。

 邪悪を完全に断つクラウソラス、肉弾戦を極限まで高めたヘラクレス、海の中ならば誰も敵わないであろうトライデント、速さにおいて他の追随を許さない雷速のブリューナク。

 このように、挙げ始めればきりがない。

 そしてガラドボルグもまた……そんな最強の中の1人なのである。

 だが、もちろんそれは――――


「とはいえ、ジュワユーズとて伝説の剣《つるぎ》。誰にも斬れないものを斬る……あやつにしか成せぬということは、それもまた最強と言えるのかもしれんな」


「どっちが勝つんだろう……レヴィはどう思う?」


「うーん……分かりませんが、一つだけ確かなことがあります。ガラドボルグ様は剣を抜いておられません。それはつまり……」


「あ、最初から能力を使うってこと?」


「だろうな。あえて剣を抜かぬことで、それをジュワユーズに教えているのだろう。自分は最初から能力を使う……さぁ防いでみよ、とな」


「はい。ガラドボルグ様の斬気を、ジュワユーズ様が断ち切れるかどうか……そういう戦いになりました。いえ、ジュワユーズ様が持ち込んだ、と言った方が正しいかもしれません」


「じゃあ、やっぱりあれって挑発だったんだ」


「うむ。まぁ、もともとああいう性格なのやもしれぬがな。ガラドボルグとまともにやり合うとすると、単純な剣戟の最中に飛んでくるであろう……見えない斬撃を防がねばならん。だが、それは至難の業。故にジュワユーズは、暗に"私の能力ならお前の能力を斬れる"と伝えたのだろう。ガラドボルグはそれを受け、能力のみで戦いを制すことにした訳だ」


「はえー……最初から始まってるんだね」


 彼女達の言う通り、ジュワユーズが仕掛け、ガラドボルクはそれに応えた。

 故に、勝負は一瞬。


「斬気を斬る……素敵な響きだと思わない?」


 剣を構えたまま、ジュワユーズはそう言って笑みを浮かべる。


「フ……響きだけはな」


 ガラドボルグはやはり腕を組んだままそう言った後、静かにその瞼を開けた。


「……始めッ!」


 ロードの右腕が振り下ろされた刹那、ガラドボルグの身体から膨大な量の魔力が迸る。


「……ちッ」


 直後、ジュワユーズの笑みが歪む。

 肌を突き刺すような……その魔力によって。


「いくぞジュワユーズ。見事受け切ってみせよ」


「偉そうに……上等よ。お望み通りにしてあげる」


 ジュワユーズがそう答えた瞬間、ガラドボルグの意思が彼女に向けて放たれる。

 三日月型のそれは誰の目にも映らぬまま、2人の間にある空気を引き裂いていく。

 ジュワユーズはそれを感じ取り、腰を落として力を溜め、そこから剣《つるぎ》を一気に振り上げた。

 そうして振り下ろされた青き刃が見えない斬撃と邂逅した瞬間、刃と刃が金属音を響かせる。


「ッ!?」


「……貴公は一つ勘違いをしている。いや、貴公"ら"か」


 斬撃を捉えることには成功した。

 だが、音が鳴ったということは――――


「き、斬れ……ない!?」


「我が能力は"斬気の具現化"。故に、それは既にそこに在る。貴公の剣《つるぎ》では……斬れないのだよ」


「うッ……あぁぁぁぁぁあッ!?」


 斬気は止まらず、ジュワユーズは地面に2本の轍を刻みながら後方へと流されていく。

 そして――――


「のッ!? ぎゃッ!」


 鎖に足を取られ、後頭部から地面に叩きつけられたのだった。


「場外! 勝者、ガラドボルグ!」


「ジュワユーズよ……運が悪かったな」


 天剣は、そう言って瞼を閉じた。


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